ZBC#69 [軍事と民間の交差点] - ペンタゴンの頭脳

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課題図書

今回は2017年10月18日に開催されたZenport Book Club #69の図書の中からペンタゴンの頭脳をご紹介致します。

ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA (ヒストリカル・スタディーズ)

ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA (ヒストリカル・スタディーズ)

著者

アニー・ジェイコブセン:調査報道ジャーナリスト。ロサンゼルス・タイムズ・マガジンの編集に携わるほか、多くの雑誌に寄稿。著書に「エリア51」などがある。


インターネット、GPS,ドローン。

これらの革新的な技術が、実は元々軍事技術として生まれ、後に民間に転用されたことを知っている方も少ないないでしょう。

しかしこれらが、どこで生まれたかを知る人は多くないかもしれません。

その名はDARPA

ペンタゴンの研究機関として存在するこの組織の実態は、未だ謎に包まれています。

今回はそんなDARPAの実態と、彼らが現在注力している分野についてご紹介致します。

要旨

  • DARPA(その前進であるARPA)は米国国防総省の機関として1958年に生まれた。その組織形態は普通の研究機関とは異なる。DARPAには長官の下に150名程度のプロジェクトマネージャーが在籍し、彼らが企業や大学で独立して研究を行っている。DARPAの研究機関というものは存在しない。

  • DARPAが誕生したきっかけはスプートニク・ショックである。当時、ソ連の宇宙技術の発展、並びにその技術の軍事への転用に危機感を覚えた米国は、アイゼンハワー大統領のもと、最先端科学技術を米国軍に転用することを目的としてDARPAを設立した。

  • DARPAで生まれた軍事技術はその後民間に転用され、社会を大きく変容させてきた。インターネット(ARPANET)、GPS、ドローン、これら革新的な技術は全てDARPAが開発し、その後民間に広がったものである。

  • 現在DARPAが力を入れている分野は、ロボット、並びに人間と機会を融合するニューロテクノロジーである。戦場で戦う戦争ロボットの開発は言わずもがな、人間の脳にチップを入れて操作する脳インプラント技術などの開発も進められている。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

本著を読み、私は緊張/弛緩と革新の関係性について考えが及んだ。DARPAでこれだけの革新的な技術が生まれたきたのは、米国が戦争という常に緊張を伴う環境に置かれていたことが大きい。その文脈で言うと、緊張が革新を促したと言える。一方で弛緩が革新的なものごとを生み出す事例も歴史上散見される。企業内のサイドプロジェクトとして生まれ、後に本流になったサービスなどがそれにあたる。革新的なモノゴトを生み出す場合、緊張/弛緩はどのように使い分ければ良いのか。ここは一概に答えは出せず、場合分けが必要となるだろう。機を見て掘り下げてみたい。


ニューロンテクノロジーは大変興味深い技術だ。しかし、そもそも脳、特に意識の仕組みというものは未だに解明されてないはずだ。その状況で、どうやって人間を制御しようとしているのか。どの部位にどれほどの電位をかければ、どのような行動を起こすというメカニズムが解明されているのだろうか。この辺については時間をみつけて研究してみたい。

まとめ

今回は、秘密に覆われた研究機関DARPAについて説いたペンタゴンの頭脳を取り上げました。

次回はZBC#70で発表されたヒトは病気とともに進化したをご紹介します。

その他の発表図書、関連図書

サイボーグ化する動物たち-ペットのクローンから昆虫のドローンまで

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帝国の参謀 アンドリュー・マーシャルと米国の軍事戦 略

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紙の世界史: PAPER 歴史に突き動かされた技術

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ZBC#68 [政府の裁量] - 資本主義と自由

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課題図書

今回は2017年10月14日に開催されたZenport Book Club #68の図書の中から資本主義と自由をご紹介致します。

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

ミルトン・フリードマンシカゴ学派の経済学者。ノーベル経済学賞受賞者。


新自由主義

フリードマンが1960年代に唱えた、この限りなく小さな政府を志向する考えは、後の指導者に大きな影響を与えました。

例えば英国のサッチャー首相、米国のレーガン大統領は、この思想に影響される形で、国営企業の民営化、規制緩和の徹底を行いました。

日本においても、郵政民営化に代表される小泉政権の政策は、新自由主義の影響を大きく受けていたと言われています。

政府のあり方を根本から問いただし、今なお統治のあり方に対して影響を与えるこの思想のあらましは一体どんなものなのでしょうか。

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 経済では市場に任せられることは全て市場に任せるべきである。政府の役割は最低限に止めなければならない。このような考えを新自由主義という。新自由主義における原則は次の2つである。第一に、政府の役割は制限を設けるべきだということ。次に、政府の権力は分散されるべきだということである。

  • 新自由主義によって広まった相対的格差を保障するためには、負の所得税、すなわちベーシックインカムを導入すべきである。

  • 政府は以下の項目を行うべきではない。

    1. 農産物の買取保証価格制度
    2. 輸入関税または輸出制限
    3. 商品やサービスの算出規制
    4. 物価や賃金に対する規制・統制
    5. 法定の最低賃金や上限価格の設定
    6. 産業や銀行に対する詳細な規制
    7. 通信や放送に対する規制
    8. 現行の社会保障制度や福祉
    9. 事業・職業に対する免許制度
    10. 公営住宅及び住宅建設の補助金制度
    11. 平時の徴兵制
    12. 国立公園
    13. 営利目的の郵便事業
    14. 国や自治体が保有する有料道路

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

フリードマン新自由主義には概ね同意するが、一部賛成しかねる。特に輸入関税の撤廃には反対だ。平等(equality)よりも公平(fairness)の方が必要だと考えるからだ。元の体力が違う国家同士で自由貿易を行えば、体力のある国が勝つことになる。それを防ぐのが輸入関税だ。そのおかげで、西欧諸国が覇権を握る世界において、日本、中国、インドなどの国々は発展出来た。もちろん行き過ぎた保護貿易は忌避されるべきだが、強国の論理で途上国を蹂躙することもまた避けられるべきである。


政治の難点は、統計的有意性と再現性の確保が難しいため、一般解を導けないことだと思う。例えば、日本に新自由主義を完全導入したとして、その成果を論じるには10年単位の時間が必要となる。また仮に成果が出たとしても、その事例を他国に導入、または後の時代の同国に導入したところで、同じ結果が得られるとは限らない。サンプルの同質性を担保されておらず、また外部環境も時間が経つことで変わっているからだ。また、政策の非可逆性も大きな問題である。例えば、一度ケインズ主義をとった国家は、既得権益の発生を許すため、自由主義には戻りにくくなる。

すなわち政治とは、科学的検証が出来ない試行の蓄積でしかない。

このような現状で良いのか。私はそうは思わない。国家も今後、科学的な仮説検証を素早く行える集合体に変容すべきだ。そのためにはどうすれば良いのか。それについては長くなるので、また別の機会に個人ブログで論じたい。

まとめ

今回は、新自由主義について説いた資本主義と自由を取り上げました。

次回はZBC#69で発表されたペンタゴンの頭脳をご紹介します。

その他の発表図書、関連図書

日経BPクラシックス 隷従への道

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自由論 (岩波文庫)

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グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

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雇用、利子および貨幣の一般理論〈上〉 (岩波文庫)

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ZBC#67 [心理と真理の交差点] - マネーの進化史

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課題図書

今回は2017年10月7日に開催されたZenport Book Club #67の図書の中からマネーの進化史をご紹介致します。

著者

ニーアル・ファーガソンハーヴァード大学歴史学教授

マネー

この捉え所のない概念は、人類史を通じて、多くの変化を遂げてきました。

信用創造、債権、株式、保険、不動産。

またマネーの変化に呼応する形で、社会も大きく変化してきました。

人類とマネーが紡いだ歴史、その一部を覗いてみましょう。

要旨

  • 当所、マネーとは貴金属を意味していた。大航海時代、南米を植民地化し大量の銀を手に入れたスペインは隆盛を極める。しかしその後、銀の価格は暴落し、スペイン自体も没落することになる。その原因は、スペイン政府が、価値とは相対的なものだと理解できなかったからである。

  • マネーは銀行と信用創造の誕生によって大きく発展した。14世紀、フィレンチェのメディチ家によって銀行という概念が生まれる。その後、ストックホルム銀行が信用創造という仕組みを作りだした。その結果、実際に存在する貴金属以上のマネーが市場に循環するようになった。

  • マネーは債権の誕生によって更に強化された。また、債権は権力や戦争とも結びついた。債権により多大な権力を手に入れたのがロスチャイルド家である。彼らはヨーロッパ中に張り巡らしたネットワークを用いて債権市場を長きに渡り支配した。また債権の力を使い、ナポレオン戦争南北戦争の趨勢を決めた。

  • 次にマネーは株式という概念を手に入れた。イギリス出身のジョン・ローはフランス王家と協力して、ミシシッピ会社の株式と、関連して中央銀行と紙幣を作った。フランス王家はこのスキームを用いて財政危機を回避しようとした。しかしその運営は、市場操作、粉飾決算を孕んだものだった。後にこの試みは失敗し株式は暴落。王家の財政は更に逼迫した。これが後のフランス革命に遠因となった。

  • 不動産もマネーの一部として重要な役割果たしてきた。歴史上、不動産とは主に貴族、権力者の所有であった。アメリカにおいては、ニューディール政策におけるS&Lによって始めて、個人が住宅を取れる仕組みが整えられた。これは後にサブプライムローンという形で進化する。しかしこれが後の金融危機を引き起こす要因となった。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

マネーはエネルギーに似ている。エネルギーには有効エネルギー(仕事として取り出せるエネルギー)という概念がある。マネーにも同様に有効マネーという概念があるように思う。エネルギーにおいては、有効エネルギー率の低いものはヒートポンプを使って再利用されるが、マネーにおいても同じことが行われている。そのポンプの役割を担うのが企業である(行政も)。企業は主要事業によって市場に薄く広がったマネーを引き上げ、他の必要としている場所、例えば基礎研究、新規事業開発、寄付などにマネーを流す。その文脈で言うと、一見すると社会的意義を感じられないような事業も、マネーを回すポンプとしての重要な役割を担っていることが分かる。


マネーとは心理と真理の交差点である。信用という心理的なモノが、揺らぎを許さない真理(数学)によって表現される。マネーとはそれ自体が、アートとサイエンスを内包した存在なのだろう。

まとめ

今回は、マネーの進化について説いたマネーの進化史を取り上げました。

次回はZBC#68で発表された資本主義と自由をご紹介します。

Zenport Book Club #67:その他の発表図書、関連図書

帳簿の世界史

帳簿の世界史

不道徳な見えざる手

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ZBC#66 [意識の外側] - あなたの知らない脳

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課題図書

今回は2017年9月30日に開催されたZenport Book Club #66の図書の中からあなたの知らない脳をご紹介致します。

あなたの知らない脳──意識は傍観者である (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

あなたの知らない脳──意識は傍観者である (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

脳と意識

日常生活の中で、私たちは自分の思考や行動が自分の制御下にあると思い込んでいます。

しかし神経科学者であるデイヴィッド・イーグルマン教授は、「私たちの思考や行動の大半は、私たちの意識の支配下に無い」と説きます。

では私たちの行動を司るものは何なのでしょうか。

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 私たちの思考や行動の大半は、私たちの意識の支配下に無い。それらは脳が勝手に反応し、行っている活動である。すなわち、私たちの意識は脳の活動を傍観しているにすぎない。

  • 人間の意識は単一的に存在するものではない。私たちの脳内には常の複数の考えが存在し、状況によってある考えが選ばれ表面に出てくる。政党政治に似た意思決定構造が脳の中で行われているのだ。

  • 人間の活動の多くは意識外で行われるため、脳の状態によって犯罪をおかしてしまうこともある。その場合、その責任は問われるべきなのだろうか。結論を言うと犯罪の有責性を問うことは無意味だ。むしろ、犯罪者の厚生に重点を置く刑罰精度について議論することが必要である。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

私たちの思考や行動が意識外にあるのだとすれば、私が今行うべきは、意識下の制御能力を強化することではなく、無意識を意識を使って如何に把握し制御することなのだろう。これは無知の知の精度を上げるプロセスにも似ている。


改めて、脳の構造は社会と似ていると感じた。以前のコネクトームにかかれていたように、何十億という単位から構成されており、その繋がりによって事象が発露する点。また複数の考えを内包し、場面に応じて考えが選ばれる点など類似点が多い。社会を知りたければ、脳を知ることは1つの手段になるかもしれない。もちろん逆もしかりである。

まとめ

今回は、脳の知られざる営みについて説いたあなたの知らない脳を取り上げました。

次回はZBC#67で発表されたマネーの進化史をご紹介します。

Zenport Book Club #66:その他の発表図書、関連図書

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

意識をめぐる冒険

意識をめぐる冒険

コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか

コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか

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ZBC#65 [心の配線図] - コネクトーム

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課題図書

今回は2017年9月23日に開催されたZenport Book Club #65の図書の中からコネクトームをご紹介致します。

コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか

コネクトーム:脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのか

わたしの心はなぜ他人と違うか。

人類が生まれながらに背負ったこの問いに対し、本書の著者であるスン教授はある答えを示します。

それはコネクトーム

すなわち、私を私たらしめているのはコネクトームだと、彼は説いているのです。

ではこのコネクトームとは具体的にどう私たちの心を形作っているのでしょうか?

そして、私たち人類はその深淵にどれほど近づいているのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • コネクトームとは脳の全神経細胞ネットワーク地図のことである。私たちの脳には1,000億のニューロンが存在し、それが各々100~1,000個のニューロンと紐付いている。私たちの意識や心を形作るのは、このコネクトームの様相であると考えられている。

  • これまで人類はヒトのコネクトームの解明に取り組んできた。しかし残念ながら、まだその姿は明らかになっていない。コネクトームの構造は複雑すぎるため、現代の技術を持ってしても解読できない。しかし今世紀末には、ヒトコネクトームは解読できると考えられている。

  • コネクトームは日々変化している。その変化の方法は4つのRで表現できる。再荷重(Reweighting)、再接続(Reconnecting)、再配線(Rewiring)、再生(Regenerating)である。これはコネクトームが経験により変改することを意味している。すなわち私とは、遺伝だけではなく、経験の産物でもあるのだ。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

世界が70億のヒトから構成され、そのネットワークで出来ていることを考えると、世界と脳は似ているは言えないか。そう思うと、ヒトの意識を探るのは、世界の構造を探ることに似ている。


人はなぜあるのか。私たちとは何なのか。デカルトパスカルという哲学の巨人が思索した問いは、生物学の手によって解明されつつある。人類がその時代の認識で区別した分類を、科学と技術の進歩が溶かす。この人類の営みに私は強く惹かれるし、私もその営みの一部になりたいと強く願う。日々取り組んでいることが、その一助に成るはずだと信じ、これからも日々精進したい。

まとめ

今回は、心を司る脳神経ネットワークについて説いたコネクトームを取り上げました。

次回はZBC#66で発表されたあなたの知らない脳をご紹介します。

Zenport Book Club #65:その他の発表図書、関連図書

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

意識と脳――思考はいかにコード化されるか

意識と脳――思考はいかにコード化されるか

意識をめぐる冒険

意識をめぐる冒険

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ZBC#64 [人間賛歌] - ルネサンスの歴史

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課題図書

今回は2017年9月20日に開催されたZenport Book Club #64の図書の中からルネサンスの歴史をご紹介致します。

ルネサンスの歴史(上) - 黄金世紀のイタリア (中公文庫)

ルネサンスの歴史(上) - 黄金世紀のイタリア (中公文庫)

ルネサンス

14世紀にイタリアで起こったこの人文主義への回帰は、多くの変化を西欧にもたらしました。

芸術観の変化、マキャベリズムの誕生、そして宗教の再定義。

このルネサンスはなぜ起こり、そしてなぜ衰退したのでしょうか。

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • ルネサンスとは、キリスト教的社会から開放されて、古代ギリシャ、ローマのような自分主義を復活させようとする動きである。これは14世紀のイタリアで起こり、西欧各国へと広がっていた。

  • ルネサンスの繁栄を後押ししたのはメディチ家であった。フィレンチェにて銀行業を営み、莫大な資産を手に入れたこの一族は、ルネサンス文化の庇護者となった。

  • ルネサンス期を彩ったのは、多くの芸術会の巨人である。ルネサンス初期にはダンテ、ボッカチオ、ペトラルカなどの詩人が活躍した。またルネサンス後期には、レオナルド・ダ・ビンチ、ラファエロミケランジェロなどの画家、彫刻家が多くの著名な作品を著した。

  • ルネサンス末期に起きた事象として外せないのが宗教改革である。これはメディチ家出身のレオ10世が教皇庁の資産を浪費し、補填のために免罪符を発行したことに端を発する。これに反発したルターが聖書への復帰を促し、カトリックからプロテスタントが分離することになる。

  • ルネサンス衰退のきっかけはコロンブスによる新大陸発見であった。これにより、地中海に向けられていた意識が、新世界へと向けられるようになった。またこの動きはスペイン、ポルトガル、オランダなどの国によって行われた。これをきっかけとして、イタリアはヨーロッパ史の主役から転落することになる。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

ルネサンス宗教改革の起こりが、言葉の取得(ラテン語から国民語へ)と関連があるのは大変興味深い。人は言葉を手に入れ、集団内で考えを共有する術を得た。それによって権威から解放された。人が本来あるべき姿への遷移。それを後押しする技術の発達。人類史はこの言葉に集約できる。


世界の流れを見る上で、地政学の観点は欠かせない。ルネサンスがイタリアで起こったのは、中東のイスラム社会と近く、彼らとの貿易で栄えたからであるし、また植民地時代に遅れをとったのは、外洋に出づらかったからだ。人類史、時代を左右する事項として地政学の観点は欠かすことは出来ない。

まとめ

今回は、ルネサンスのあらましについて説いたルネサンスの歴史を取り上げました。

次回はZBC#65で発表されたコネクトームをご紹介します。

Zenport Book Club #64:その他の発表図書、関連図書

イタリア・ルネサンスの文化 (上) (中公文庫)

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帳簿の世界史

帳簿の世界史

1493――世界を変えた大陸間の「交換」

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プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)

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定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

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ZBC#63 [マルサス後の世界] - 10万年の世界経済史

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課題図書

今回は2017年9月16日に開催されたZenport Book Club #63の図書の中から10万年の世界経済史をご紹介致します。

10万年の世界経済史 上

10万年の世界経済史 上

著者:グレゴリー・クラーク
カリフォルニア大学デービス校経済学部教授。ハーバード大学PhD。英国とインドの経済史、長期にわたる経済成長を研究している。


今の世界はなぜ、西洋社会を頂点とした格差社会となっているのか。

著者であるクラーク教授はそのきっかけを1800年代の産業革命に見出します。

すなわち、産業革命をきっかけに一部の国がマルサスの罠を抜け出し、大いなる分岐が生まれたのだと。

その過程とはどのようなものだったのでしょうか。

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 1800年代以前、世界はマルサスの罠の下にあった。これは、技術革新によって生産性が増加すると短期的に所得が増加するが、後に人口が増加することで生産性上昇が吸収される現象である。人類は実に石器時代から1800年代に至るまで、このマルサス的社会に生きていた。

  • 世界がマルサスの罠を逃れた理由は産業革命である。これによって、人類は人口増加と関係なく個人の労働生産性を上昇させることに成功する。この事象をきっかけに、世界は富める国と貧しい国という大いなる分岐に直面した。

  • 産業革命が中国、インド、日本などの他の国ではなく、イギリス等の西洋社会で初めて起こったのか。その理由は識字率の高い勤勉な中産階級の割合が高かったからである。

  • 経済発展とは、結局個人の生産性に依存する。そのため、貧困国に対する、教育に結びつかない只の援助は無意味である。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

世界の帰結を考察するために、一人あたりの生産性に目を向けたのは面白い。経済発展をモデル化し、いくつのパラメータから導出される一人あたり生産性という値が閾値を超えると、経済発展度合いは次の極地に移動するということだろう。頭の中でもイメージし易い。ただ問題は、生産性を導出するパラメータが何かということだ。


本書の主張には幾分断定が見られる。自説に都合の良いリソースのみを引用しているきらいがある。(例えば産業革命以前の日本は、石器時代と同じ経済水準であったなど)。反証可能性が高い仮説であるだけに、本主張は話半分で聞いた方が良いだろう。

まとめ

今回は、経済発展の歴史について説いた10万年の世界経済史を取り上げました。

次回はZBC#64で発表されたルネサンスの歴史をご紹介します。

Zenport Book Club #63:その他の発表図書、関連図書

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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大分岐―中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成―

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プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)

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