SBC#26 [民主主義とグローバリゼーションは両立出来ない?] - グローバリゼーション・パラドクス

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課題図書

今回は2017年3月19日に開催されたSendee Book Club #26の図書の中からグローバリゼーション・パラドクスをご紹介致します。

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

「グローバリゼーション」

急速に世界が均質化する現代、この言葉をメディアで目にしない日はありません。

またこの現象は、少しの軋轢を引き起こすにせよ、総和では世界経済を良くすると語られることが多いです。

しかしこのような風潮に対して、本書の著者であるダニ・ロドリック教授は、安易なグローバリゼーションは世界経済に対し悪影響を与えると断じます。

その真意とは何なのでしょうか?

また、では世界経済はこのグローバリゼーションに対し、どう折り合いをつければ良いのでしょうか?

要旨を見ていきましょう

要旨

  • 国民国家、民主主義、スーパーグローバリゼーションは同時に成立し得ない。2つを選べば、1つは犠牲にする必要がある。これを、世界経済の政治的トリレンマと呼ぶ。

  • 著者は、民主主義と国家主権をスーパーグローバリゼーションよりも優先すべきだと主張する。健全で持続可能な世界経済を作るには、先ず人々が自ら判断する民主主義の余地を残す必要がある。かつ、世界各地の人々の価値観、必要性は多様なので、国家という枠組みも以前必要だと考えるからだ。

  • 世界経済は、国によって異なる資本主義制度(市場)を設置し、その間に交通ルールとしての貿易制度を設置する形で実現されるべきだ。理由は二つある。一つは、より良く機能する資本主義制度には、それを上手く機能させるための規制を持つ政府が必要であること。もう一つは、資本主義のモデルは画一的ではなく、価値観や必要性に応じて大きく異なることである。

  • グローバリゼーションの成功例の1つは、ブレトン・ウッズ体制である。これは、完全な自由貿易を実現するものではなく、各国に経済政策の点で大きな裁量を付していた。この制度の下で世界経済は、産業革命時をも凌ぐ、急激な経済成長を達成した。またブレトン・ウッズ体制終了後に世界で大きく成長した国は、この方針に則った国であった。例えば、中国やインドがそれに当たる。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

著者の主張は、世界の多様な価値観を残すために国家主権という枠組みを残すべき、というものだ。しかしこれは必ずしも、国家である必要はないだろう。価値観を共有する集団であれば良い。その場合、どのような集団が適切だろうか。私は都市だと考える。現在の国民国家は価値観を共有するには広すぎる。地縁を維持できる都市単位が、最適な集団だろう。


本書では、国家の成熟度合いに応じて、参加すべきルールは異なるべき、という議論がなされる。新興国にまで先進国と同様のルールを課せば、彼らの資源、労働力、成長機会が搾取されるだけだ、というのが論拠だ。この意見には同意する。組織にはステージに応じたルールが課せられるべきだ。これは即ち、平等よりも公正が優先されるべき、ということだ。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は理想的なグローバリゼーションの形を説いたグローバリゼーション・パラドックスを取り上げました。

次回はSBC#27で発表された人体600万年史をご紹介します。

Sendee Book Club #26:その他の発表図書、関連図書

グローバル経済を学ぶ (ちくま新書)

グローバル経済を学ぶ (ちくま新書)

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SBC#25 [コンピューターは心を持ちうるか?] -皇帝の新しい心

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課題図書

今回は2017年3月11日に開催されたSendee Book Club #25の図書の中から皇帝の新しい心をご紹介致します。

皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則

皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則

「コンピュータと心」

人工知能ブームに湧く昨今、コンピュータが知能において人間を凌駕する日も近いと言われています。

そして同時に、コンピュータがいずれというモノを持ちうるのか、というテーマにも注目が集まっています。

本書の著者であり、宇宙物理学の世界的権威であるロジャー・ペンローズ教授は、この問いに対し、現状ではコンピュータは心を持ちえないと断言します。

その真意とは何なのでしょうか?

そして、心を作り出すには何が必要なのでしょうか?

要旨を見ていきましょう

要旨

  • 本書のテーマは「コンピュータは心を持ちうるか」である。このテーマに対して著者は、心というものは、現在知られている物理法則のみでは説明できず、説明するには量子論一般相対性理論の双方を成立させる量子重力論の完成が必要だと主張する。

  • 著者は元来強いAI論の人間の全ての心的活動はアルゴリズムで実装できるという主張に相反し、人間の心は単一のアルゴリズムで解けるものではない、非アルゴリズム的なものだと主張する。

  • 心を理解するために必要な量子重力論、その理解は統一理論をもたらすものだ。即ち、人が心というモノを解き明かすときは、世界の真理を解き明かすときでもあるのだ。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

コンピューターが心を持つことに需要はあるのだろうか? コンピューターはインプットに対して、しっかりとアウトプットしてくれれば良いわけで、心を持つことに対する需要は無いと私は思う。


量子物理学者は心、生命というものに洞察を発展させる傾向がある。シュレディンガーもその1人だ。彼は著書「生命とは何か」にて、生命は物理学で語れるか、という考察を行った。量子論を理解し、そして世界がそれによって成り立っていることを知った者は、物理学(量子論)と生命の共存に訝しさを覚え、両者を内包する原理を突き止めたく成るのだろう。


人間は、いつでも理解しやすいストーリーを求める傾向にある。しかし本書は、真理はいつも私達が理解しやすいように、手を差し伸べてはくれないことを示している。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は心の深遠さを説いた皇帝の新しい心を取り上げました。

次回はSBC#26で発表されたグローバリゼーション・パラドックスをご紹介します。

Sendee Book Club #25:その他の発表図書、関連図書

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

動画


Roger Penrose: The Emperor’s New Mind, Quantum Mind, Quantum Consciousness, The Laws of Physics

内容が難解なことで知られている本書を著者が英語で優しく説明している動画です。

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SBC#24 【言葉が国家を生み出した?】~ 想像の共同体

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課題図書

今回は2017年3月4日に開催されたSendee Book Club #24の図書の中から 想像の共同体をご紹介致します。

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

ナショナリズム

この言葉を聞いたとき、読者の皆さんの心にはどんな思いが去来するでしょうか?

郷愁、誇り、帰属意識、このような思いが湧いているかもしれません。

そして思うことでしょう。これは遥か昔から、確かにそこに存在するものだと。

しかし、このナショナリズム(国民意識)、更にはその拠り所である国民国家なるものは、ただの想像の産物だと筆者は述べます。

そしてその歴史は300年程度でしかなく、まだ生まれて間もないモノだとも。

これは本当なのでしょうか?

本当だとすれば、なぜこの国民国家なるモノは生まれたのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 国民とは「イメージとして心に描かれた想像の共同体」である。この国民、または国民主義(ナショナリズム)という思想は、18世紀頃に生まれたものであり、まだ300年程度の歴史しか有していない。

  • 国民を生んだきっかけは、俗語(フランス語、英語、ドイツ語)の普及であった。これによって、「同じ言語を共有する者」=「国民」という概念が生まれた。

  • 俗語の普及を後押ししたのは、印刷出版技術の発達であった。俗語は、地域において多様な方言があったため、口語としては普及力を持たなかった。しかし文語として統一され、それが印刷・出版の力により広まったことで、人々の間に共通の言語として普及したのだ。

  • 民共同体が生まれる前に存在した共同体の一つが宗教共同体である。これらは同じ宗教を共有するものとして存在した。宗教は一つの権威ある言語(ラテン語アラビア語)が真理を伝えるという前提によって成立していた。しかし俗語の普及により、使われる言語が多様化した結果、この共同体は衰退した。

  • 民共同体の前に存在したもう一つの共同体は帝国である。これは王朝の権威の下に臣民を置くという形で成りたっていた。しかし、国民の出現は帝国の凋落を招いた。王朝の権威が国民意識によって変わられたからである。この危機に対応するめ、いくつかの帝国は王朝帝国と国民の統合(公定ナショナリズム)によって、自らの存在意義を主張した。ロシア帝国大英帝国大日本帝国などがそれに当たる。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

国民国家を統一する上で、日本は特殊な環境にあったことがわかる。なぜなら、言語、民族、王朝がほぼ一対一の対応をしていたからだ。これは日本が国民国家となる際の障壁を低くし、素早く欧米諸国に伍する近代国家を築けたことの要因だと考えられる。

面白い見解です。他にはこんな意見も。

今日、各言語は自動翻訳の力によって、その唯一無二性を失いつつある。本書の見解に従えば、これは国民国家の衰退を引き起こす可能性がある。これまで人々は、想像を形作る言語によって繋がっていたが、今後は純粋な想像によって繋がっていくのだろう。

言語の次が何になるのかは、皆さんも是非とも考えてみてください。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回はナショナリズムの本質を説いた想像の共同体を取り上げました。

次回はSBC#25で発表された皇帝の新しい心をご紹介します。

Sendee Book Club #24:その他の発表図書、関連図書

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

職業としての政治 (岩波文庫)

職業としての政治 (岩波文庫)

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SBC#23 【グローバル化はコロンブス交換で始まった?】~ 1493

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課題図書

今回は2017年2月25日に開催されたSendee Book Club #23の図書の中から 1493をご紹介致します。

1493――世界を変えた大陸間の「交換」

1493――世界を変えた大陸間の「交換」

グローバル化

現代では、この言葉を聞かない日はありません。

では、その始まりはいつと定義されるべきでしょうか?

それは1493年、即ちコロンブスが新大陸に到達した翌年である、というのが本書の見解です。

その意味においては、1493年はコロンブス歴1年と呼ぶことが出来るでしょう。

ではコロンブス歴1年以降の世界はどう変わっていったのか?

その様子を覗いて見ましょう。

要旨

  • 1492年のコロンブスの新大陸到達以降に起こった大陸間の交わり(コロンブス交換)によって、世界の姿は一変した。食物、資源、病原菌、人間の大陸間の移動によって、2億年前の超大陸パンゲアの分裂以降隔絶されていた世界は、驚くほどに均質化していったのである。著者はこの1493年以降の時代を均質新世(Homogenocene)と呼ぶ。

  • 食物の移動は、飢餓の減少、食習慣の大きな変化に影響を与えた。新大陸から欧州に伝わったじゃがいもは、欧州、特に北欧で発生していた飢饉の減少に大きく貢献した。また新大陸から中国に伝わったさつまいも、とうもろこし、唐辛子は中国の食習慣を大きく変化させた。また中国の人口を大幅に増加させた。

  • 資源の移動もコロンブス交換の無視できない要因である。その中でも特に注目すべきは銀と天然ゴムだ。新大陸で取れた銀は、貨幣の鋳造が出来ず混乱をきたしていた明王朝によって大量に輸入された。それと引き換えに、中国の絹や陶磁器が世界に広まっていった。また新大陸の天然ゴムは西洋で産業革命が起こるのに多大なる貢献を果たした。

  • 一方、コロンブス交換は悲劇も引き起こした。それは病原菌の移動によるものだ。旧大陸から新大陸へ運ばれた黄熱病、天然痘マラリアは新大陸の人口を大幅に減少させた。人口が激減した新大陸の統治者は、奴隷として、大量のアフリカ人を連れてきた。このようにコロンブス交換は人間の移動も引き起こしたのだ。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

大陸間の物質移動によって世界の飢餓が激減し、産業革命も花開いた。これは、昨今世界で蔓延している保護貿易への強烈なアンチテーゼと言えるだろう。

昨今、世界は保護主義に揺れていますが、今だからこそ貿易とはどうあるべきか、考える必要があるのかもしれません。

情報革命の最中にある現代は、1493年周辺以降の大コロンブス交換時代と言える。これにより世界は更に均質化していく。今後、総和としては世界は更に豊かな方向に向かうのだろう。しかし一方で、世界各地の特色が失われる悲しさも感じる。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回はコロンブス交換が世界に及ぼした影響を説いた1493を取り上げました。

次回はSBC#24で発表された想像の共同体をご紹介します。

Sendee Book Club #23:その他の発表図書、関連図書

1491―先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見

1491―先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る (光文社新書)

ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る (光文社新書)

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SBC#22 【パクス・アメリカーナの終焉?】~ 米中もし戦わば

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課題図書

今回は2017年2月18日に開催されたSendee Book Club #22の図書の中から 米中もし戦わばをご紹介致します。

米中もし戦わば

米中もし戦わば

「中国との間に戦争は起きるのか?」

昨今勢いを増す中国の軍事力を目の当たりにすると、これは否が応でも考えなければいけないテーマです。

70年以上戦争から遠ざかった我々は、戦争など起こるはずないと思いこんでいますが、そんな楽観的な思考に対して、著者は米中が戦争に至る可能性は70%だという驚くべき見解を提示します。

その根拠とは何なのでしょうか?そしてそれを防ぐ手立ては無いのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 本書は二つの問いに焦点を当てる。一つは米中戦争はありうるか、もう一つはそれはどのように防げるのかである。本書の両者に対する答えは、戦争は70%以上の可能性でありうる、それを防ぐには総合国力による均衡を作るしかないとなる。

  • 著者は米中戦争の可能性は70%以上という結論を、世界史と、現在の中国の軍備拡張の実態から説明する。歴史上既存の超大国に、新興の大国は高い確率で覇権を奪取するために挑んで来たという事実と、現在の中国の動きはそれに類似しているという事実から、著者は今後米中が戦争に至る可能性は高いと断ずる。

  • 著者が戦争を防ぐものとして挙げた総合国力とは、国家が有するハードパワーとソフトパワーの総計である。ハードパワーが軍事力、核を意味するのに対し、ソフトパワーは経済力、政治体制の安定度、教育制度の質などを意味する。両者がどちらとも多国を抑止するに十分なだけ発達していることが、戦争を防ぐために必要なのである。

  • この状況に対し日本はどうすれば良いか。それに対する解は、中国にソフトパワー(特に経済)で依存し過ぎず、独立を保つことである。また、ハードパワーの観点でも、同盟国と協力する形で中国とパワーバランスを保つことが必要となる。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

本書を読むと、平和とは力と力の均衡によって成り立っていることがわかる。この点はキッシンジャーの国際秩序においても語られていたことだ。平和を享受している私たちは、話し合い、武力の放棄といった気持ちの良い方法で平和を実現しようと望む。しかし歴史上、そのような形で達成された平和はなく、平和はいつも軍事力を含む力の均衡に寄って実現していることを忘れてはならない。

平和の大いなる矛盾ですが、平和は常に武力の均衡で保たれていることを私たちは肝に命じておくべきでしょう。

トランプ政権は本書に多大な影響を受けている。トランプ政権が工場を中国から米国に戻すよう動いているのも、雇用創出、技術流出によって中国の経済力を挙げないようにしているためだと考えられる。軍事、地政学という視点から読むと、今の政治情勢がまた異なる形で浮かび上がってくる。

昨今のトランプ政権の動きも、軍事・地政学というフィルターを通すと、その意図が見えてきます。国際情勢を読む際は、この視点も準備しておくとより深い洞察が得られるでしょう。

中国の戦略には、「戦わずして勝つ」という孫子の考えが随所に垣間見られる。メディア、エンタメ会社にロビー活動をすることで、自国に有利な国際世論を作り出したり、相手国に気づかれぬ間に既成事実を作り、勝利を得るなどと言ったことを中国は行っているのだ。これらの行動の是非はともかく、このしたたかさは尊敬に値する。

中国政府の動きには、随所に孫子の思想が垣間見えます。歴史に現れた先人の智慧を実際に行動に移す部分は、素直に尊敬してしまいます。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は米中戦争が起きる可能性、それを防ぐ対応策を説いた米中もし戦わば 戦争の地政学を取り上げました。

次回はSBC#23で発表された1493をご紹介します。

Sendee Book Club #22:その他の発表図書、関連図書

地政学入門―外交戦略の政治学 (中公新書 (721))

地政学入門―外交戦略の政治学 (中公新書 (721))

国際秩序

国際秩序

マッキンダーの地政学ーデモクラシーの理想と現実

マッキンダーの地政学ーデモクラシーの理想と現実

マハン海上権力史論 (新装版)

マハン海上権力史論 (新装版)

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SBC#21 【鬱が危機のリーダーを育てる?】~ 一流の狂気

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課題図書

今回は2017年2月11日に開催されたSendee Book Club #21の図書の中から 一流の狂気をご紹介致します。

一流の狂気 : 心の病がリーダーを強くする

一流の狂気 : 心の病がリーダーを強くする

狂気こそが危機のリーダーに求められる。

著者はこの仮説を、シャーマン、チャーチルなどの歴史上の偉大なリーダーの事例をもとに証明します。

彼らが有していた狂気をどんなものだったのでしょうか?

そしてその狂気は、彼らが危機に立ち向かう際にどのような影響を与えたのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 危機の時代には正気ではなく、狂気(躁うつ病うつ病)のリーダーが求められる。危機に際しては、クリエイティヴィティ(創造力)、リアリズム(正しい現実認識)、エンパシー(共感力)、レジリエンス(精神的反発力)、の4つの特質が必要とされ、狂気にはこれらの特質を高める効果があるからだ。

  • 著者はこの仮説を補佐する事例をいくつか紹介する。南北戦争北軍を勝利に導いた将軍シャーマン、CNN創設者のターナーの事例は、双極性障害が創造力を強化することを例証する。リンカーンチャーチルの事例は、うつ病と正しい現実認識の強い関連を示す。ガンジーキング牧師の事例は、うつ病と共感能力に強い結びつきがあることを示す。またフランクリン・ルーズベルトジョン・F・ケネディの事例は、躁と精神的反発力の緊密な関係を示している。

  • 危機の時代に正気のリーダーは誤った決断をする傾向がある。なぜなら、彼らには危機時に必要な前述の4つの能力が欠けているからだ。著者はこの仮説を、チェンバレンチャーチル、マクラレンとシャーマンなどといった、同じ危機に対応した正気と狂気のリーダーの対比で説明する。

  • 本書は精神面においてこれまで不利だと思われていた人たちに光をあてるものだ。これまで精神的に不安定であることマイナスであると考えられていた。しかし本書はそのような者がむしろ、より活躍出来る機会があることを明らかにした。その意味では本書は、昨今の社会的弱者の価値を認める動きを精神性にまで拡げたものと捉えられるだろう。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

精神的な疾患(狂気)を抱えた者でも、正気の者より活躍できる機会が存在するという事実は、狂気の者に大きな勇気を与えるだろう。

たとえ精神的な疾患を抱えていようとも、市場を選べば他より優位に活躍できる。この事実は、市場の選び方の重要性を示しています。

本書の主張は耳を貸す価値のある独創的なものだが、自説に都合の良いサンプルだけを持ってきて論を展開しているように思われる。科学的根拠には乏しいものだと認識すべきだろう。

確かに本書の主張は科学的な証明とは言えません。反証可能性に乏しいのが本書の難点です。

狂気が高める4つの特質、これらは狂気でしか高められないのだろうか。狂気を持って生まれなかった者でも、危機に役立つこれらの特質を手に入れられる方法があれば知りたい。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は狂気こそが危機のリーダーに求められることを説いた一流の狂気を取り上げました。

次回はSBC#22で発表された米中もし戦わばをご紹介します。

Sendee Book Club #21:その他の発表図書、関連図書

昆虫はすごい (光文社新書)

昆虫はすごい (光文社新書)

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SBC#20 【現代人の深刻な暴力離れ?】~ 暴力の人類史

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課題図書

今回は2017年2月4日に開催されたSendee Book Club #20の図書の中から 暴力の人類史をご紹介致します。

暴力の人類史 上

暴力の人類史 上

暴力の人類史 下

暴力の人類史 下

「人類史において暴力は減っているのか」

昨今のISの台頭、中東諸国の混乱、ナショナリズムの拡大を見ると、この質問にYesと答えるのは、いささか楽観的と取られかねません。

しかし本書の著者であるハーバード大学教授のスティーブン・ピンカー博士は、この質問にはっきりYesと答えます。

これが本当なら、なぜ暴力は減ってきているのでしょうか?そして、そもそもなぜ暴力は起こるのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 昨今のテロ、中東・アフリカで起こる内戦の話を聞くと、現代は歴史上でも極めて暴力に満ちた社会であると錯覚してしまう。しかしながら、人類史において暴力は減少し続けており、現代は最も暴力から開放された時代なのだ。

  • 暴力が衰退した過程は6つの傾向、平和化のプロセス、文明化のプロセス、人道主義革命、長い平和、新しい平和、権利革命に分けられる。

    1. 平和化のプロセス:紀元前5,000年から数千年単位で起きた変化。狩猟・採集を基盤とする統治機構の無い社会から、農耕を基盤とする統治機構のある社会へと変化した。これによって日常的な襲撃や争いが減少し、暴力的な死を遂げる人の数が1/5に減少した。

    2. 文明化のプロセス:中世後半から500年程度かけて起きた変化。寄せ集めとして存在した封建領土が大きな国に統合され、中央集権的な統治と商業的な基盤が出来上がった。これはヨーロッパで顕著に見られた変化であり、殺人発生率は1/10~1/50に減少した。

    3. 人道主義革命:17世紀から数百年かけて起きた変化。奴隷制、拷問、残虐な刑罰など、それまで社会的に認められていた暴力形態を廃止するための組織的運動が起こり平和主義の動きが見らるようになった。

    4. 長い平和:第二次世界大戦後に起きた変化。超大国・先進国の大部分が互いに戦争することをやめた。

    5. 新しい平和:冷戦後に起きた変化。あらゆる酒類の組織的な紛争、内戦、テロ行為は世界中で減っていった。

    6. 権利革命:1948年の世界人権宣言後に起きた変化。女性、子供、同性愛などの社会的弱者の権利を保護しようと動きが広まっている。

  • 人間が行う暴力は次の5つの種類に分けられる。

    1. 道具的暴力:目的のための手段として用いられる暴力

    2. ドミナンス:権力や名声を求める衝動により起こる暴力

    3. リベンジ:仕返しや正義のための道徳的衝動により起こる暴力

    4. サディズム:他人の苦しみから快楽を得ること

    5. イデオロギー:思想の追求のために使われる暴力

  • 一方で人間には暴力を抑える4つの動機がある。

    1. 共感:他人の痛みを感じ取り自他の利害を一致させようとする動き

    2. セルフコントロール:衝動に基づいて行動した結果を予測しその行動を抑えようとする動き

    3. 道徳感覚:ある文化における規範

    4. 理性の機能:偏狭な視点から抜け出しより良い状態になろうする動き

  • 暴力が時間が経つに連れて減ってきているという事実は、数多くの先人の犠牲の上に成り立っている。その犠牲によって、私たちは今の平和だけでなく文化的な生活を享受できている。私達が今すべきは、美化された過去に思いを馳せることではなく、未来を今よりもっと暴力の無い世界にする方法を考えることなのだ。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

本書は論の展開方法が素晴らしい。常に文献とデータを示し、反証可能な形で仮説を提示している。今後の持論の展開の参考にしたい。ちなみに以前取り上げた生命、エネルギー、進化も同様の方法を用いている。

SBC#16で取り上げた生命、エネルギー、進化と同じように、本書でも反証可能性を準備すべく、数多モノ参考文献を用意しています。このような姿勢は意見を呈するものとして、参考にしたいものです。

私達は常に定性的ではなく定量的に見てを把握すべきだ。本書の命題の一つに暴力に対する認識と実態の乖離があるが、この要因の一つはメディアだろう。 メディアは珍しいこと(定量的に少ない)を印象深く(定性的に大きく)報道する傾向にある。しかしその印象深さゆえ、私達はそれが定量的に多いと誤解してしまう。 メディアも営利主体ゆえ、今後この傾向が変わることは考えにくい。そのため、認識と実態の乖離を防ぐためには、私達自身が常に定量的に自体を把握することが求められるだろう。

所謂メディアリテラシーが求められるという意見です。その情報が常に定量的にどう判断されるのかを考えたいものです。

昨今の過剰なゼロリスク信仰、コンプライアンスも非暴力化の一端だと考えられないだろうか。例えば、公園から撤去される遊具、テレビから排除される暴力的なシーンなどは、少し前の時代を知る私たちは、過去と比較し”過剰”だと思ってしまうが、これも非暴力化のプロセスの一つかもしれない。だとすれば私達はこの動きを推進する必要があるだろう。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は人類史において暴力が減少していることを論じた暴力の人類史を取り上げました。

次回はSBC#21で発表された一流の狂気をご紹介します。

Sendee Book Club #20:その他の発表図書、関連図書

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