ZBC#42 [シーパワーと国家] - マハン海上権力史論

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課題図書

今回は2017年6月3日に開催されたZenport Book Club #42の図書の中からマハン海上権力史論をご紹介致します。

マハン海上権力史論 (新装版)

マハン海上権力史論 (新装版)

シーパワー

19世紀末期、アメリカ海軍の父「マハン」が提唱したこの概念は、世界各国に大きな影響を与えました。

日露戦争の英雄である秋山真之もマハンに師事し、この考えを日本海軍の戦略に大いに活かしたと言われています。

このシーパワーは、マッキンダーが唱えたランドパワーと対をなし、今でも地政学の核を為す教えてとして広く学ばれています。

ではこのシーパワーとは具体的にどういう概念なのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • シーパワーとは武力、経済力によって海洋を支配する能力である。18世紀以降、多大なるシーパワーを持つ海洋国家は大きく繁栄した。イギリス、オランダ、フランス、スペインなどがその例である。

  • シーパワーの具体的な因子として、a)海軍、b)商船隊、c)根拠地が挙げられる。これらは、1)生産、2)海運、3)植民地という、海洋国を形作る3つの循環する要素を支える役割を持つ。※根拠地とは、戦略的要地、軍事的な優越地点を指す。

  • シーパワーに影響を及ぼす一般条件として、1)地理的位置、2)自然的形態、3)領土の範囲、4)人口、5)国民性、6)政府の性格の6点が挙げられる。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

シーパワー理論は現在のサプライチェーン構築にも大きく活用できるだろう。海軍、商船隊はそのままとして、根拠地はロジスティクスにおけるFCと言ったところだろうか。


まだインターネットが無かった時代に、ハンニバルの時勢にまで遡り、戦略論を紐解いたマハンの調査力、洞察力には尊敬の念を禁じ得ない。


冷戦時のソ連海軍、現代の中国海軍は、このマハンの教えに忠実に従っているなと感じる。特に中国海軍は「米中もし戦わば」にて、孫氏の教えも積極的に取り入れる姿が描かれていた。行動の是非はともかく、その先人の教えを忠実に実行する能力は流石である。

まとめ

今回は、国家が戦争を始めるきっかけについて説いたマハン海上権力史論を取り上げました。

次回はZBC#43で発表されたイラク建国をご紹介します。

Zenport Book Club #42:その他の発表図書、関連図書

リデルハート戦略論 間接的アプローチ 上

リデルハート戦略論 間接的アプローチ 上

マッキンダーの地政学ーデモクラシーの理想と現実

マッキンダーの地政学ーデモクラシーの理想と現実

スパイクマン地政学 『世界政治と米国の戦略』

スパイクマン地政学 『世界政治と米国の戦略』

  • 作者: ニコラス・スパイクマン,渡邉公太
  • 出版社/メーカー: 芙蓉書房出版
  • 発売日: 2017/01/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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米中もし戦わば

米中もし戦わば

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SBC#41 [屈せざる者] - なぜ国々は戦争をするのか

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課題図書

今回は2017年5月27日に開催されたSendee Book Club #41の図書の中からなぜ国々は戦争をするのかをご紹介致します。

なぜ国々は戦争をするのか 上

なぜ国々は戦争をするのか 上

戦争はなぜ起こるのか

人類の歴史とは、即ち戦争の歴史だと言っても過言ではありません。

誰もが忌避するにも関わらず、なぜ人類は戦争から逃れられないのか?

この問いに対し、第一次世界大戦コソボ紛争パレスチナ紛争、インド・パキスタン紛争といった20世紀の戦争を詳細に分析した著者は、1つの解を提供します。

その解とは?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 先行研究はこれまで、戦争とは人間が制御できない要因によって起こると主張してきた。しかしそれは違う。戦争とは人間性が現れた現象でしかない。そのため人間は必ずこれは制御、克服できる。

  • 戦争が起こる原因は、決定的な場所にいる意思決定者の共感力の欠如に尽きる。ここで言う共感力とは、相手の立場に立って想像する能力である。

  • 戦争が起こるかを判断するには、次の5つの認識を精査する必要がある。これらの認識に誤りが生じるとき、人間は戦争に突入する。第一次世界大戦時が勃発したのも、ヒトラースターリンの認識に誤りが生じていたためである。

    • 指導者の自国に対する認識
    • 指導者の敵国の性質に対する認識
    • 指導者の敵国の意図に対する認識
    • 指導者の敵国の国力と能力に対する認識
    • 指導者の敵国への想像力の水準

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

人間の根本にある性質は「万人の万人に対する闘争」である。この闘争状態を止める1つの要因はパワーバランスだ。しかし人類は、それ以外に「empaty(共感力)」という抑制手段も生み出した。これは人類が誇るべき無上の産物だと思う。このempatyなるモノが生まれた経緯については、もう少し研究を続けたい。


戦争を無くすにはどうすればいいか。私は十分な食料と電気を、全ての人に提供出来れば無くなると思っている。私はこの仮説を、人生を通して検証したいと思っている。

まとめ

今回は、国家が戦争を始めるきっかけについて説いたなぜ国々は戦争をするのかを取り上げました。

次回はSBC#42で発表されたマハン海上権力史論をご紹介します。

Sendee Book Club #41:その他の発表図書、関連図書

戦争の世界史(上) (中公文庫)

戦争の世界史(上) (中公文庫)

暴力の人類史 上

暴力の人類史 上

戦争論〈上〉 (中公文庫)

戦争論〈上〉 (中公文庫)

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SBC#40 [三分の天災、七分の人災] - 毛沢東の大飢饉

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課題図書

今回は2017年5月24日に開催されたSendee Book Club #40の図書の中から毛沢東の大飢饉をご紹介致します。

毛沢東の大飢饉  史上最も悲惨で破壊的な人災 1958?1962

毛沢東の大飢饉 史上最も悲惨で破壊的な人災 1958?1962

大躍進政策

1958年、毛沢東の号令によって始まったこの農業・工業の大増産政策は、想定とは裏腹に、多くな餓死者を出す結果に終わりました。

そして、このとき生じた混乱は、数年後、文化大革命という形で、更なる混乱を中国大陸に引き起こします。

この大躍進政策は、なぜ始まり、どうしてこのような惨憺たる結果に終わったのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 毛沢東は1958年に大躍進政策という、農業・工業の大増産政策を開始した。そのきっかけはソ連への対抗心であった。ソ連のフルシチョフが掲げた農業生産計画に対抗するために、毛沢東大躍進政策を始めたのだ。その目標は、農工業の生産指標において3年以内に、当時世界第二位の経済大国の英国を抜くという、到底実現不可能なものだった。

  • 毛沢東が推し進めた大躍進政策は、実現可能性から乖離した過大なノルマ、ずさんな管理によって、農業・工業の生産性を大幅に低下させた。結果、中国全土に大飢饉を引き起こした。1958年~1962年の間に、少なくとも4,500万人が避けられたはずの死を遂げたと言われている。

  • 1962年の党大会にて、毛沢東大躍進政策の失敗を認め国家主席を辞任する。その後、毛沢東の側近であり、かつ大躍進政策を終始批判していた劉少奇が党主席となり、中国を率いることになる。しかしこのとき生じた党内の亀裂が、後に文化大革命を引き起こすことになる。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

大躍進政策の失敗は、昨今の日本の大企業の不祥事と根は同じだ。トップの顔色だけ見て、顧客(国民)を見ない姿勢。実態とは乖離した数字を作りだし、それに安堵する非誠実さ。失敗する組織の特徴は、国家であれ企業であれ変わらない。組織づくりの他山の石としたい。


大躍進政策&文革から改革開放への国民性の変化は、同じ国とは思えないほどの変わりようである。私が知っている中国人の性質は、本書で描かれる全体主義服従するそれとは大きく異る。中国人も朱に交われば赤くなるのだろう。とかく、私は1年滞在しただけで知った気になっていたが、実のところ中国という国を、まだ全然知らないのだと思わされた。

まとめ

今回は、大躍進政策の惨状について説いた毛沢東の大飢饉を取り上げました。

次回はSBC#41で発表されたなぜ国々は戦争をするのかをご紹介します。

Sendee Book Club #40:その他の発表図書、関連図書

毛沢東大躍進秘録

毛沢東大躍進秘録

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源

現代中国の父 トウ小平(上)

現代中国の父 トウ小平(上)

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SBC#39 [コレラの子] - 感染源

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課題図書

今回は2017年5月20日に開催されたSendee Book Club #39の図書の中から感染源をご紹介致します。

感染源 防御不能のパンデミックを追う

感染源 防御不能のパンデミックを追う

コレラ

この感染症は19世紀以降、世界各地を絶望の底に陥れました。

朝には元気だった人が、夜には身体から水分が失くなり死んでいる、文字通り悪夢のような現象が、世界各地で発生したのです。

しかし、この感染症の世界的流行、言わばパンデミックは、実は人間の手によって生まれ、世界に拡がったと言っても過言ではありません。

しかし一体どうやって?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • コレラは19世紀以降、世界で猛威を奮った。その原因は過密である。人々が都市に住むことによって、コレラは指数関数的に拡がることが可能になった。

  • 近年、多くの感染症が、パンデミックを起こした後、世界に急送に広まる原因となったのは。その原因は移動手段の発達だ。蒸気船、飛行機、これらの移動手段の発達によって、これがパンデミックの発生割合を著しく上昇させた。

  • 昨今、SARSなどの新しい感染症が誕生している。その理由は生物同士の邂逅だ。本来であれば出会う可能性が無かった生物同士(コウモリとハクビシン等)の出会い、それが感染症の進化を後押ししている。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

人間と細菌は互いに補完関係にある。本書ではその負の側面が取り上げられているが、人間は細菌のおかげで整体活動を維持できている。その観点からすると、人間と細菌も結局はパワーバランスが大切だと感じる。外交と同じだ。


コレラの拡大戦略、人間の体内に侵入し下痢となって排出され、それをきっかけとしてまた他の人間の体内に入る、 というものには、知性を感じざるを得ない。単純な構成をした生物にすぎない彼らが、なぜこのような戦略を生み出せるのか、時間があるときに研究したい。

まとめ

今回は、パンデミックが起こるメカニズムについて説いた感染源を取り上げました。

次回はSBC#40で発表された毛沢東の大飢饉をご紹介します。

Sendee Book Club #39:その他の発表図書、関連図書

あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた

あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた

人類五〇万年の闘い マラリア全史 (ヒストリカル・スタディーズ)

人類五〇万年の闘い マラリア全史 (ヒストリカル・スタディーズ)

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SBC#38 [歴史に翻弄された優しきスパイ] - ロレンスがいたアラビア

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課題図書

今回は2017年5月17日に開催されたSendee Book Club #38の図書の中からロレンスがいたアラビアをご紹介致します。

ロレンスがいたアラビア(上)

ロレンスがいたアラビア(上)

アラビアのロレンス

第一次世界大戦時、アラビアで暗躍したこの者の名は、同題の映画を通して広く知られています。

しかし、彼が実際どんな人物かを知っている人は、あまり多くないでしょう。

オックスフォード大学の考古学者であった彼は、なぜ英国軍の一員としてアラビアに趣き、アラブのために戦ったのでしょうか?

そして彼はなぜ、勝利という果実を手に入れたにも関わらず、悲痛の中で死んでいったのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 第一次世界大戦中、アラビアは、英国、ドイツ、ロシア、オスマン帝国、アラブ、ユダヤなどの思惑が入り乱れる混沌とした世界だった。その時代、一人の若者が、祖国とアラブ世界の対立の間で苦悩に揺れながらも、自身の正義のためにアラビアを駆け抜けた。その者の名はトーマス・エドワード・ロレンス、通称「アラビアのロレンス」である。

  • ロレンスは、英国の情報将校としてアラビアに派遣された。その地で、アラブ国家設立を志すフサイン家の三男ファイサルと共に、対オスマン帝国の闘いを進めていく。その過程で、彼はアラブ人の大義に心動かされ、アラブ国家の実現に邁進する。しかしその夢は、英国とアラブの勝利によって実現するかと思われたが、英国の背信と共に潰えた。

  • アラビアは第一次対戦後、大国間のエゴによって直線で仕切られた。その区切りは民族、宗教を考慮しない無機的なものであった。この負の遺産は今尚、沈静化を見せない中東混乱に、大きく影を落としている。

  • 当時のアラビアにはロレンスだけではなく、各陣営の思惑を肩に載せ、暗躍する若者達がいた。一人はスタンダードオイルの情報員であったアメリカ人のイエール、一人はドイツのスパイであったブリューファー、そしてもう一人はユダヤ国家設立を目論むシオニストのスパイだったアーロンソンである。彼らは、自身が信じる正義のために、混沌するアラビアを駆け抜けた。彼らの残した足跡は今も、今のこの世界のあり方に大きな影響を与えている。

補足

1915年に英国が、オスマン帝国の支配下にあったアラブ地域の独立と、アラブ人のパレスチナでの居住を認めた協定。 戦後、サイクス・ピコ協定バルフォア宣言と矛盾していると糾弾され、大きな波紋を読んだ。またこの矛盾が現代まで続く中東混乱の一因となっている。

1916年に英国、フランス、ロシアの間で結ばれたオスマン帝国の分割を約束した密約。

1917年に英国の外務大臣であるアーサー・バルフォアが、ユダヤ貴族院議員のライオネル・フォルター・ロスチャイルドに対して送った、シオニズム支持を表明する所感。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

国家とは何か、この書籍を読むとそう問わざるを得ない。現代世界の基本は国民国家だ。またその素となるのは言語である。人々は話す言語で国家を形成している。そうであれば、中東は1つか2つの国にまとまってもおかしくない。しかしこの地では、今尚混乱が続いている。これは即ち、国民国家の否定である。となると国家とは何なのか?何を持って構築すべきなのだろうか?


中東問題を見るにつけ、人類最古の文明が生まれたこの肥沃な三日月地帯が、なぜ現代ではこのような姿になってしまったのか、悲しまずにはいられない。改めて共同体を作るのは難しいと感じる。共同体が成功/失敗する理由については、再度考察してみたい。


物語の本筋とは関係ないが、本書はロレンスが英国国王からのナイトの称号を辞退シーンから始まる。この導入は秀逸と言わざるを得ない。今後読み物を書く際の、導入執筆のお手本にしたい。

まとめ

今回は、アラビア世界を駆け抜けた若いスパイについて説いたロレンスがいたアラビアを取り上げました。

次回はSBC#39で発表された感染源をご紹介します。

Sendee Book Club #38:その他の発表図書、関連図書

完全版 知恵の七柱〈1〉 (東洋文庫)

完全版 知恵の七柱〈1〉 (東洋文庫)

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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SBC#37 [国防総省のヨーダ?] - 帝国の参謀

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課題図書

今回は2017年5月13日に開催されたSendee Book Club #37の図書の中から帝国の参謀をご紹介致します。

帝国の参謀 アンドリュー・マーシャルと米国の軍事戦 略

帝国の参謀 アンドリュー・マーシャルと米国の軍事戦 略

国防総省ヨーダ

国防総省で40年以上要職を勤めてきたアンドリュー・マーシャル氏は、敬意を込めて周囲からこう呼ばれています。

メディアへの露出を極端に嫌うため、彼の存在は日本だけでなく、アメリカでもそれほど知られていません。

しかしながら、彼の存在は戦後の国際政治に大きな影響を与えました。

実際、東西冷戦はマーシャル氏がいなければ、あのような帰結は得なかったと言われています。

その裏にあったのは、彼が生み出した革新的な戦力分析手法、ネットアセスメントでした。

そのネットアセスメントとは、一体どんなモノなのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • アンドリュー・マーシャルは、ニクソン政権以降の全ての国防長官に仕えた人物である。彼は、ソ連に対するアメリカの戦略策定能力を改善する方法として、ネットアセスメント(総合戦略評価)という分析手法を作り出した。

  • ネットアセスメントの目的は、彼我の軍事力を正確に計算し、評価することである。以前、軍事力は戦車の台数、ミサイルの基数を、ただ足すだけのビーン・カウンツという方法で評価されていた。しかしこれでは、当然ながら正確な軍事力は評価できなかった。部品の供給体制、背後の産業の、兵の士気など、目に見えない要素を考慮出来てなかったからだ。これらの要素を加味して、正確な軍事力を評価するために、ネットアセスメントは生み出された。

  • ネットアセスメントの大きな功績の一つが、ソ連の軍事支出の算出だ。CIAは70年代初期のソ連の軍事支出をGNPの6~7%と推定していた。しかしマーシャルは独自の評価で、実際の支出はその2倍以上あり、ソ連の軍事力の持続可能性は低いことを突き止めた。この評価は米軍の戦略に影響を与え、結果、冷戦の早期終結に繋がった。

  • マーシャルのもう1つの功績は、「軍事における革命」の議論を促したことだ。1980年代当時既に、WW2以来の遺産である戦車や空母だけでは、未来の戦争では不十分であること、情報通信技術の駆使が必須であることを示唆していた。この示唆は、米国が軍事戦略を変革する大きな契機となった。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

マーシャルの、無知の知に対する姿勢からは学ぶことが多い。彼は、自分は全てを知らぬことを素直に受入れ、その前提で自分が何を知らず、また何を知るべきかを判断していた。この無知の知は、ビジネスの意思決定でも大変重要なものだろう。自分が何を知らず、どこまで知った上で決断を下すという線引が出来ていないと、無闇に情報を追い求め、気づいたらチャンスを逸している可能性が高いからだ。


マーシャルの、人間の可能性についての言及も含蓄に飛んでいる。彼は「1人の人間が防げる愚行には限りがある」と人間の限界を示唆しながら、一方で、「手柄を気にしなければ、人間はいくらでも優れたことを成し遂げられる」という、人間の底知れぬ可能性をも示唆している。これは彼が、国防という人間性が剥き出しになる最前線で、40年間以上も戦ってきた経験からたどり着いた、人間の可能性の二面性なのだろう。ちなみに二つめの示唆は、西郷南洲が残した言葉と通じるものがある。

「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困るものなり。この始末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得られぬなり。」

まとめ

今回は、国防総省ヨーダことマーシャルについて説いた帝国の参謀を取り上げました。

次回はSBC#38で発表されたロレンスがいたアラビアをご紹介します。

Sendee Book Club #37:その他の発表図書、関連図書

歴史の研究 1

歴史の研究 1

決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析 第2版 1 (日経BPクラシックス)

決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析 第2版 1 (日経BPクラシックス)

キューバ危機 - ミラー・イメージングの罠

キューバ危機 - ミラー・イメージングの罠

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SBC#36 [微生物無くして人類無し?] - マイクロバイオームの世界

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課題図書

今回は2017年5月6日に開催されたSendee Book Club #36の図書の中からマイクロバイオームの世界をご紹介致します。

マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち

マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち

微生物

この言葉を聞くと、思わず拒否反応を示す人も多いかもしれません。

しかし実は、私達人間はこの微生物と既に何万年も、互いに支え合いながら生きているのです。

ですが、最近私達の関係には、大きな亀裂が生じています。そしてそれは、目に見える影響として私達の身体に出ています。

しかし、いったいどのような形で?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • マイクロバイオームとは、私達の体の内部や表面の他、家庭や学校などの生活の場のそれぞれに存在する微生物の集まりである。

  • 私たちはマイクロバイオームと生態系を共有している。即ち、互いの存在が無ければ、生きていけいない関係を結んでいるのだ。

  • 現代、急速な住環境の変化によって、人間とマイクロバイオームの生態的均衡は大きく乱れている。それによって、多くの病気が発症している。例えば肥満やうつがそれに当たる。

  • 生命は古細菌、細菌、真核生物の3種に分類される。生命は誕生後、まず細菌と、古細菌と真核生物の祖先へと分岐し、その後、古細菌と真核生物に分岐したと考えられている。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

本書では、微生物の種類、その検出方法について詳しく書かれている。その詳細については、本記事では言及していないため、興味のある方は本書を確認して欲しい。


正直、本書に書かれていることは、あなたの体は9割が細菌と大きく重複する。こちらを読んだ方は、本書は読む必要は無いだろう。

まとめ

今回は、私達と微生物の関係性について説いたマイクロバイオームの世界を取り上げました。

次回はSBC#37で発表された帝国の参謀をご紹介します。

Sendee Book Club #36:その他の発表図書、関連図書

あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた

あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた

土と内臓 (微生物がつくる世界)

土と内臓 (微生物がつくる世界)

生命、エネルギー、進化

生命、エネルギー、進化

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