SBC#14 【自由闊達にして愉快なる研究機関の建設】~ 「科学者の楽園」をつくった男:大河内正敏と理化学研究所

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課題図書

今回は2016年12月17日に開催されたSendee Book Club #14の図書の中から 「科学者の楽園」をつくった男:大河内正敏理化学研究所をご紹介致します。

理化学研究所。この日本を代表する研究所は名前こそ有名ですが、その設立のきっかけ、辿ってきた軌跡はあまり知られていません。

そこで今回はこの自由闊達にして愉快なる研究機関の足跡をご紹介致します。

要旨

  • 理研渋沢栄一と、米国で科学者として活躍していた高峰譲吉が主導して設立された。彼らが理研を作った背景には、日本が真に欧米と伍す発展を為すには、基礎科学の発展、独創的な科学的成果を生み出す環境作りが不可欠という危機感があった。

  • 理研は第三代所長の大河内正敏の下で大きな発展を遂げた。彼は派閥や官僚性を排除し、自由闊達な研究環境を作るため、主任研究員を独立させ、その者に一切の裁量を委ねる制度を確立した。これが後に多くの優れた研究成果を生む要因となる。

  • 理研は自身で研究費を確保するため、理研発の技術を産業化するための企業を多く設立した。またそれらを束ねる形で財閥を形成した。これが理研コンチェルンである。この理研コンチェルンは日本が敗戦するまで、理研に潤沢な研究費を提供し続けた。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

理研はSBC#13で取り上げたベル研究所と似ている。これは、外部機関に頼らない資金繰りと自由闊達な研究風土に依るのだろう。

似た意見でこんなモノも。

ベル研究所の場合もそうであるが、俊才が集まり革新を起こす組織を作るには、その文化をどう作るかが肝となる。理研では大河内所長主導のもと、研究者への自由裁量の付与、官僚性を配すための部の廃止が行われた。それが多くの自由な研究を志す優秀な研究者を集め、優れた成果を生み出すのに貢献したのだろう。

前回までのピクサーベル研究所と同じように、理研からも組織作りで学ぶところは多いですね。結論は好きにやらせる、ヒエラルキーを作らない、交流させる、という3つに集約されるでしょう。

本書では何の役に立つか最初は分からないが、好奇心の赴くままに研究した結果、大きな成果を生み出した事例が紹介されている。ビジネスの世界にいると、事業を考える際は常に「これが何の役に立つか」「市場規模はどれくらいあるか」という思考をしているが、これによりイノベーションを生み出す機会を逸しているのかもしれない。

昨年ノーベル章を受賞された大隅良典教授も「役に立つということばが社会をダメにしている」という言葉を残しています。行う前から短期的な成果を求める姿勢は、実は何か大きなモノを失っているのではと思いしらされます。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は「科学者の楽園」をつくった男:大河内正敏理化学研究所を取り上げました。

次回はSBC#15で発表された科学革命の構造をご紹介します。

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