SBC#15 【パラダイムシフトとしての革命】~ 科学革命の構造
課題図書
今回は2016年12月24日に開催されたSendee Book Club #15の図書の中から 科学革命の構造をご紹介致します。
- 作者: トーマス・クーン,中山茂
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1971/03/05
- メディア: 単行本
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科学革命とは何か?
この問に対し、本著の著者であり、かつ科学哲学の権威でもあるトーマス・クーンはある解を与えます。すなわちそれは「既存のパラダイムから新規のパラダイムへの変化」であると。
ここでいうパラダイムとは何のことを指すのでしょうか?また、この科学革命はどのようにして起こるのでしょうか?
要旨を見ていきましょう。
要旨
パラダイムとは、広く人々に受け入れられている概念で、科学者に一定の期間、自然に対する見方を与えるものである。例えば、ニュートンの「プリンキア」、ラボアジェの「化学」などがそれに当たる。
著者は科学には2つの進歩の形があると唱える。1つは通常科学、もう一つは科学革命である。前者が既存のパラダイムに従って起こる進歩であるのに対し、後者は既存のパラダイムを破壊し、自然に対する新しい見方を獲得することで起こる進歩である。後者の例としてはコペルニクスの地動説、アインシュタインの相対性理論が挙げられる。
科学革命は、既存のパラダイムが自然の研究において上手く機能しなくなったときに、一部の科学者が新しいパラダイムを築きあげることで起きる。しかしそのプロセスは常に混乱を伴う。なぜなら既存のパラダイムの勢力がその遷移を阻もうとするからだ。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。
著者は科学革命の2つの特徴、「既存のシステムが時代に合わなくなったことで起こる」「遷移時にパラダイム間での争いが起きる」をして、科学革命は政治革命と似ていると論ずる。その点には大いに同意する。かつ、この考えは「社会」にも拡張できると思う。では現代社会における革命前夜のパラダイムとは何か?1つは「一夫一妻の婚姻制度」であろう。この制度は明治以降に作られたものだ。本制度が作られた理由は、国を発展させる過程で農業に働き手が必要であり、かつ彼らの家庭に跡取りを残す必要があったためである。だとすれば、多くの人間が第三次産業に従事する現代に、本制度は適していないことは明らかであろう。そうなれば、このパラダイムは近いうち革命によって打倒されてもおかしくない。
面白い視点ですね。一夫一妻制以外にも時代に合わなくなったパラダイムは社会に溢れています。それらがなぜまだ残っているのかを考察することにも、大きな学びがありそうです。
バブル 日本迷走の原点の著者は、バブルとは既存のシステムが時代に合わなくなったときに起こる歪であると説いた。本書と科学革命の構造から考察するに、バブルと、それ以降現代まで続く停滞は、革命を起こせなかったパラダイム間での争いであることが分かる。となれば、現在は言わば革命前夜ということになる。それはいつ起こるのか、いや、いつ起こすのか、それを私達は考えるべきなのであろう。
確かに今はパラダイムの間にあるのかもしれません。だとしたら夜明けはいつに成るのか?そのきっかけいは私達の手にあるのかもしれません。
科学、政治、社会で起きたパラダイムと、それらが革命を通して生まれた過程を見れば、なぜ現代はこのような仕組みになっているのかが深く理解できるはずだ。その洞察は、次の革命を起こすための役に立つはずだ。時間があるときに調査してみたい。
参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?
まとめ
今回は科学革命の定義、並びに発生方法について論じた科学革命の構造を取り上げました。
次回はSBC#16で発表された生命・エネルギー・進化をご紹介します。
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