SBC#16 【生物学の中心にあるブラックホール】~ 生命、エネルギー、進化

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課題図書

今回は2016年12月29日に開催されたSendee Book Club #16の図書の中から 生命、エネルギー、進化をご紹介致します。

生命、エネルギー、進化

生命、エネルギー、進化

生物学の中心には、ブラックホールがある。

本書はこのような示唆に富む言葉で幕をあけます。 この言葉は即ち、生物がなぜこのような形態をしているのかは、未だ分かっていないということを意味します。

この生物学の真ん中にぽっかりと空いた暗闇に対し、本書の著者ニック・レーンは斬新な仮説で光を照らします。

では、その仮説とは一体どのようなものなのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 地球上の生物は大きく3種に分類される。細菌、古細菌(異常2つを原核生物と総称する)、そして真核生物だ。これらは2つの興味深い問題を我々に投げかける。1つはなぜこれら生物の細胞の形は同じ構造をしているのか、そしてもう1つはなぜ真核生物だけ巨大、かつ多様な構造を持つに至ったかである。筆者はこの2つの問題に「エネルギー」の観点から回答する。 ※普段我々が目にする生物は全て真核生物である。

  • 1つ目の問題を筆者は、エネルギー保存の同一性の観点から回答する。生命が生きるには内部にエネルギーを保存する必要がある。これは多種多様であってもよさそうだが、実のところ地球上の生命のエネルギーの保存方法は全て同じ「化学浸透共役」なのだ。筆者はこの事実から、この化学浸透共役が生命の形状に制約を与えている、即ち細胞を決められた一定の構造にしているのだと論ずる。

  • 続いて、2つ目の問題を筆者はエネルギー消費の観点から回答する。原核生物はエネルギー生成を最膜状で行っている。それゆえある大きさで、エネルギー消費(体積、即ち体長の3乗に比例)がエネルギー生成(表面積、即ち体長の2乗に比例)とバランスしてしまい、それ以上大きくなれない。一方、真核生物は細胞内にミトコンドリアを内包しており、これがエネルギー生産機関として働いている。それゆえ先の制約を逃れて、巨大化・多様化できたのである。

  • 真核生物がミトコンドリアを獲得したきっかけは「内部共生」である。細菌が古細菌の中に入り込む内部共生によってミトコンドリアとそれを有する真核生物は誕生したのだ。ちなみにこの内部共生は40億年の歴史上でただ一度しか生じていないほどの稀な現象である。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

本書はシュレディンガーが提示した「生命とは何か」という問いに対し、問われるべきはむしろ「生とは何か」であると断ずる。この「解」ではなく「問い」に対して疑問を呈する姿勢には大きく賛同する。世に大きな成果を残すため深く突き詰めるべきは、実は解ではなく問いなのである。

私達は与えられた問に解を見出すことのみに執着しがちです。しかし本当に目を向けるべきなのは、どの問いを解くべきなのかという、一段階上の視点なのです。

本書では、提示する仮説について常に反証可能性を用意している。仮設に対してその根拠を参考文献などの形で常に示しているのだ。この姿勢には大変尊敬する。この世界はテーゼ(仮説)とアンチテーゼ(反証)によってジンテーゼを生み出すという生産的な議論によって進歩するからだ。それを思うと、常に反証不可能な陰謀論を展開し、世を混乱させるだけの者は著者を見習うべきである。また、私もこの著者のようにあらねばならいなと深く自省する。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は科学革命の定義、並びに発生方法について論じた生命、エネルギー、進化を取り上げました。

次回はSBC#17で発表された眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎をご紹介します。

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