SBC#17 【ヒトがヒトを食べていた痕跡?】~ 眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎
課題図書
今回は2017年1月14日に開催されたSendee Book Club #17の図書の中から 眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎をご紹介致します。
- 作者: ダニエル T.マックス,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2007/12/12
- メディア: 単行本
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18世紀、ヴェネチアのある地域に不眠症に苦しむ一族が現れました。この一族の人々は高い確率で不眠症を発生し、その後死に至りました。
当時これは祟りの一種と思われていましたが、後にこの現象には人類史に関わるある事実が関係していることが分かりました。
その事実とは何なのでしょうか?要旨を見ていきましょう。
要旨
18世紀後半からヴェネチアに不眠症に悩む一族が出現する。この一族では、重度の不眠症を発症しやがて死に至る者が数多く発生してきた。この現象の原因は長い間不明であったが、現在これはプリオン病の一種であることがわかっている。
プリオン病とは異常タンパク質の増加によって起こる病気であり、同時に感染症でもある。代表的な疾患としてウシの牛海綿状脳症(狂牛病)、ヒツジのスクレイピー、ヒトのヤコブ病が挙げられる。
ヒトにプリオン病が起こる原因の一つが食人である。パプアニューギニアの風土病として知られるクールー病は、死体を食すことで発症していたことがわかっている。
プリオン病は太古に食人文化が存在していたことを強く裏付けた。プリオン病に罹患しているヒトはプリオン遺伝子がホモ接合型の人が多い、しかしながら現在ほぼ全てのヒトはヘテロ接合型を有する。この事実はヒトがある時点でプリオン遺伝子をヘテロ接合型にする強いインセンティブが働いていたことを意味する。これはプリオン病が感染症として蔓延したことが原因だと考えられており、そのきっかけは食人文化だと考えられている。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。
本書のテーマの1つに食人、我々ヒトから見れば共食いがある。本書ではこの共食いによって不治の病が発症することとが述べられている。思いつきの仮説に過ぎないが、これは生物が種の破滅を防ぐために設計した自己保存機能だとは考えられないだろうか。
不治の病が、主としての防衛反応とする意見です。面白い意見ですね。
共食いを防ぐ方法として、ヒトにとってはヒトの肉が美味しく感じられなくする遺伝子上での設計が考えられる。近親相姦を避けるために、娘は父親に近い遺伝子の匂いを不快に感じる設計になっているように。しかし本書を読むと、遺伝子はそのような設計にはなっていないことがわかる。ではなぜ、人体にこのような設計が施されなかったのだろうか? 今は解は無いが、今後の考察の対象としたい。
参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?
まとめ
今回は食人とプリオン病に関係について論じた眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎を取り上げました。
次回はSBC#18で発表された国際秩序をご紹介します。
Sendee Book Club #17:その他の発表図書、関連図書
- 作者: ニーチェ,Friedrich Nietzsche,木場深定
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1964/10
- メディア: 文庫
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