SBC#24 【言葉が国家を生み出した?】~ 想像の共同体
課題図書
今回は2017年3月4日に開催されたSendee Book Club #24の図書の中から 想像の共同体をご紹介致します。
定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)
- 作者: ベネディクト・アンダーソン,白石隆白石さや
- 出版社/メーカー: 書籍工房早山
- 発売日: 2007/07/31
- メディア: 単行本
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「ナショナリズム」
この言葉を聞いたとき、読者の皆さんの心にはどんな思いが去来するでしょうか?
郷愁、誇り、帰属意識、このような思いが湧いているかもしれません。
そして思うことでしょう。これは遥か昔から、確かにそこに存在するものだと。
しかし、このナショナリズム(国民意識)、更にはその拠り所である国民国家なるものは、ただの想像の産物だと筆者は述べます。
そしてその歴史は300年程度でしかなく、まだ生まれて間もないモノだとも。
これは本当なのでしょうか?
本当だとすれば、なぜこの国民国家なるモノは生まれたのでしょうか?
要旨を見ていきましょう。
要旨
国民とは「イメージとして心に描かれた想像の共同体」である。この国民、または国民主義(ナショナリズム)という思想は、18世紀頃に生まれたものであり、まだ300年程度の歴史しか有していない。
国民を生んだきっかけは、俗語(フランス語、英語、ドイツ語)の普及であった。これによって、「同じ言語を共有する者」=「国民」という概念が生まれた。
俗語の普及を後押ししたのは、印刷出版技術の発達であった。俗語は、地域において多様な方言があったため、口語としては普及力を持たなかった。しかし文語として統一され、それが印刷・出版の力により広まったことで、人々の間に共通の言語として普及したのだ。
国民共同体が生まれる前に存在した共同体の一つが宗教共同体である。これらは同じ宗教を共有するものとして存在した。宗教は一つの権威ある言語(ラテン語、アラビア語)が真理を伝えるという前提によって成立していた。しかし俗語の普及により、使われる言語が多様化した結果、この共同体は衰退した。
国民共同体の前に存在したもう一つの共同体は帝国である。これは王朝の権威の下に臣民を置くという形で成りたっていた。しかし、国民の出現は帝国の凋落を招いた。王朝の権威が国民意識によって変わられたからである。この危機に対応するめ、いくつかの帝国は王朝帝国と国民の統合(公定ナショナリズム)によって、自らの存在意義を主張した。ロシア帝国、大英帝国、大日本帝国などがそれに当たる。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。
国民国家を統一する上で、日本は特殊な環境にあったことがわかる。なぜなら、言語、民族、王朝がほぼ一対一の対応をしていたからだ。これは日本が国民国家となる際の障壁を低くし、素早く欧米諸国に伍する近代国家を築けたことの要因だと考えられる。
面白い見解です。他にはこんな意見も。
今日、各言語は自動翻訳の力によって、その唯一無二性を失いつつある。本書の見解に従えば、これは国民国家の衰退を引き起こす可能性がある。これまで人々は、想像を形作る言語によって繋がっていたが、今後は純粋な想像によって繋がっていくのだろう。
言語の次が何になるのかは、皆さんも是非とも考えてみてください。
参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?
まとめ
今回はナショナリズムの本質を説いた想像の共同体を取り上げました。
次回はSBC#25で発表された皇帝の新しい心をご紹介します。
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