SBC#26 [民主主義とグローバリゼーションは両立出来ない?] - グローバリゼーション・パラドクス
課題図書
今回は2017年3月19日に開催されたSendee Book Club #26の図書の中からグローバリゼーション・パラドクスをご紹介致します。
グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道
- 作者: ダニロドリック,柴山桂太,大川良文
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2013/12/20
- メディア: 単行本
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「グローバリゼーション」
急速に世界が均質化する現代、この言葉をメディアで目にしない日はありません。
またこの現象は、少しの軋轢を引き起こすにせよ、総和では世界経済を良くすると語られることが多いです。
しかしこのような風潮に対して、本書の著者であるダニ・ロドリック教授は、安易なグローバリゼーションは世界経済に対し悪影響を与えると断じます。
その真意とは何なのでしょうか?
また、では世界経済はこのグローバリゼーションに対し、どう折り合いをつければ良いのでしょうか?
要旨を見ていきましょう
要旨
国民国家、民主主義、スーパーグローバリゼーションは同時に成立し得ない。2つを選べば、1つは犠牲にする必要がある。これを、世界経済の政治的トリレンマと呼ぶ。
著者は、民主主義と国家主権をスーパーグローバリゼーションよりも優先すべきだと主張する。健全で持続可能な世界経済を作るには、先ず人々が自ら判断する民主主義の余地を残す必要がある。かつ、世界各地の人々の価値観、必要性は多様なので、国家という枠組みも以前必要だと考えるからだ。
世界経済は、国によって異なる資本主義制度(市場)を設置し、その間に交通ルールとしての貿易制度を設置する形で実現されるべきだ。理由は二つある。一つは、より良く機能する資本主義制度には、それを上手く機能させるための規制を持つ政府が必要であること。もう一つは、資本主義のモデルは画一的ではなく、価値観や必要性に応じて大きく異なることである。
グローバリゼーションの成功例の1つは、ブレトン・ウッズ体制である。これは、完全な自由貿易を実現するものではなく、各国に経済政策の点で大きな裁量を付していた。この制度の下で世界経済は、産業革命時をも凌ぐ、急激な経済成長を達成した。またブレトン・ウッズ体制終了後に世界で大きく成長した国は、この方針に則った国であった。例えば、中国やインドがそれに当たる。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
著者の主張は、世界の多様な価値観を残すために国家主権という枠組みを残すべき、というものだ。しかしこれは必ずしも、国家である必要はないだろう。価値観を共有する集団であれば良い。その場合、どのような集団が適切だろうか。私は都市だと考える。現在の国民国家は価値観を共有するには広すぎる。地縁を維持できる都市単位が、最適な集団だろう。
本書では、国家の成熟度合いに応じて、参加すべきルールは異なるべき、という議論がなされる。新興国にまで先進国と同様のルールを課せば、彼らの資源、労働力、成長機会が搾取されるだけだ、というのが論拠だ。この意見には同意する。組織にはステージに応じたルールが課せられるべきだ。これは即ち、平等よりも公正が優先されるべき、ということだ。
参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?
まとめ
今回は理想的なグローバリゼーションの形を説いたグローバリゼーション・パラドックスを取り上げました。
次回はSBC#27で発表された人体600万年史をご紹介します。
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