SBC#30 [遺伝子も社会を作る?] - 遺伝子の社会
課題図書
今回は2017年4月15日に開催されたSendee Book Club #30の図書の中から遺伝子の社会をご紹介致します。
- 作者: イタイ・ヤナイ,マルティン・レルヒャー,野中香方子
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2016/10/17
- メディア: 単行本
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リチャード・ドーキンス博士が提唱したこの概念は、私達の生命に対する見方を大きく変えました。
「とかく、遺伝子とは利己的なものであり、自分の生存確率を高めるために行動するのである。」
この一文を見ると、遺伝子とは孤立した存在の集合のように思われるかもしれません。
しかし本書の著者は、そうではないと断じます。
なんと遺伝子は、我々人間と同じように、社会を形成していると言うのです。
しかもそれは、人間社会よりも著しく優れた、大変調和のとれた社会だと。
では、彼らはどうやって社会を形成しているのでしょうか。
また、その結果生命には何が起きているのでしょうか。
要旨を見ていきましょう。
要旨
遺伝子は、自分の生存を最優先する、利己的な存在である。しかし、遺伝子は孤立しては生きられない。それゆえ、彼らは社会を形成し、協力や競争という形で、互いに相互作用している。
相互作用の例として、ガン、免疫システム、両性生殖(セックス)が挙げられる。1つ、両性生殖について説明しちあ。これは、遺伝子社会が自らの生存確率を高めるために選んだ手法だ。たえず変化する世界では、遺伝子にとっては、世代毎に変異を含む新たな組合せを試みる方が、単純なコピーを作るより生存確率が高い。だから遺伝子社会は、有性生殖という方法を選んだ。ちなみに、父親の精子は何度も細胞分裂を繰り返す。これは変異の発生を増やすことに大きく貢献している。
遺伝子社会を深く突き詰めることで、私たちは生命の歴史を辿ることが出来る。生命の起こり、真核細胞の誕生、動物の形成、その後の絶え間ない進化。遺伝子社会を除くことで、私たち生命は、自らの来し方を振り返ることができるのだ。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
遺伝子の行動原理、マクロスケールの生物と大変似通っている。自らの生存のために、他の遺伝子と協力・競争する様は、私達人間ともそっくりである。彼らの行動原理については納得できる。しかし彼らがなぜそうやって行動できるのかについては、大いに疑問が残る。脳を持たない遺伝子が、どうやって自分に有利な意思決定を行っているのか、その辺について今後研究を進めていきたい。
遺伝子の社会の調和には驚かされる。人間が社会を形成したときに、これほどの調和を形成することは先ず不可能だろう。その観点から、遺伝子がなぜこれほどの調和を維持出来ているかに大変関心がある。そのメカニズムを知ることは、私達がよりより社会を形成するために役に立つだろう。
まとめ
今回は、遺伝子が形作る社会について説いた遺伝子の社会を取り上げました。
次回はSBC#31で発表された砂糖の世界史をご紹介します。
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