ZBC#49 [間接的アプローチ] - リデルハート戦略論
課題図書
今回は2017年7月8日に開催されたZenport Book Club #49の図書の中からリデルハート戦略論をご紹介致します。
- 作者: B・H・リデルハート,市川良一
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2010/04/23
- メディア: 単行本
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アレクサンダー大王の時代からヒトラーの没落まで、期間にして凡そ25世紀、実に280件近くにも上る戦争を読み解いたリデルハートは、ある戦略の本質を突き止めます。
即ち、戦略には間接的アプローチこそが求められると。
またその理由を、戦略と大戦略の関係に見出します。
彼の説く、間接的アプローチ、そして大戦略とは一体どのようなものなのでしょうか。
要旨を見ていきましょう。
要旨
古代ギリシャ時代から、第二次世界大戦に至るまでに行われた、計280件にも及ぶ戦闘。そこから導かれた帰結は、軍事戦略においては間接的アプローチが求められるというものだ。ここで言う間接的アプローチとは、正面衝突を避け、間接的に相手を無力化させる戦略の事を指す。
軍事戦略とは、大戦略(国家戦略)の下に位置づけられるべきである。大戦略とは、国家をどう発展させるかという、主に政治家に帰属するものである。その前提を忘れ、軍事戦略が暴走すると、勝利しても国家の土壌が毀損され、発展が妨げられる事態になりかねない。間接的アプローチが求められる理由もそこにある。
戦略の本質を記した古典として、クラウゼヴィッツの戦争論がある。これは確かにモルトケ等の手によって、プロイセン、並びにドイツの隆盛を促した。しかしこの戦争論には大戦略の観点が欠落していた。これが第一次世界大戦、第二次世界大戦後の混乱を引き起こした。
間接的アプローチの観点に立つ場合、以下の8つ側面に注意する必要がある。
1.目的を手段に適合させる 2.常に目的を銘記する 3.最小予備線を選ぶ 4.最小抵抗線を利用する 5.代替目標を併せ持った作戦線をとる 6.状況に適合するように、計画と配備の柔軟性を確保する 7.敵が警戒している間は、我が兵力を打撃に投入しない 8.一度失敗した後に、同じような方向に沿って再び攻撃を行わない
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
リデルハートの戦略は、孫氏のそれと驚くほど似通っている。リデルハートは自説を導いた後に孫氏を知ったようなので、これが時を超えた普遍の理論だということが分かる。時は流れても、主体が人間であるかぎり、戦略の本質は変わらないのだろう。
私たちは得てして、戦いとはゴングと共に始まるものだと思っている。しかし実のところは、戦いとはゴングが鳴らずに始まり、そればかりか、ゴングが鳴らぬ間に、既に終わっているものなのだろう。
マハン海上権力史論や、米中もし戦わばを読んだときにも思ったが、昨今の中国の動きはこの間接的アプローチに忠実に沿っている。その意図の是非はともかく、中国首脳部の優秀さは認めざるを得ない。
まとめ
今回は、間接アプローチの重要性を説いたリデルハート戦略論を取り上げました。
次回はZBC#50で発表された戦略家ニクソンをご紹介します。
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