ZBC#57 [終わりなき闘いの歴史] - がん 4000年の歴史

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課題図書

今回は2017年8月19日に開催されたZenport Book Club #57の図書の中からがん 4000年の歴史をご紹介致します。

がん‐4000年の歴史‐ 上 (ハヤカワ文庫NF)

がん‐4000年の歴史‐ 上 (ハヤカワ文庫NF)

数千年に及ぶ人類の文明の歴史。その過程で、私達は多くの病気を克服してきました。

ペスト、コレラ結核

かつて多くの人々を死に至らしめたこれらの病も、ついぞ医学の前に白旗を挙げたのです。

しかし今尚、人類を苦しめ続けるある怪物が、私達の前に鎮座しています。

その名はがん

古代エジプトの時代から存在が確認されていたこの病は、未だに解決の糸口を見せていません。

このがんに対して、人類はどう対峙してきたのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • がんは古代エジプトの時代からその存在は知られていたが、初めてそれに名前が与えられたのは古代ギリシャ時代、医聖ヒポクラテスによってであった。

  • がんは長らく体液の異常により起こるものだと考えられていた。がんの正体が明らかになったのは20世紀という実に最近のことである。その正体は、遺伝子の突然変異の蓄積であった。

  • 医学の歴史の中で、がんに対する多くの治療法が開発された。ウィリアム・ハルステッドはメスを用いた施術を生み出した。また、シドニー・ファーバーは化学療法を生み出した。

  • がんに対する予防方法も考えられた。その第一が禁煙であった。喫煙とガン発生の間に有意な相関が見られていたからだ。しかし、禁煙の動きを広めるには、タバコ業界という既得権益との戦いが待ち受けていた。

  • がんの歴史とは、それに立ち向かった医師の歴史だけではない。この叙事詩の本当の主役は、がんとの戦いの最前線に望んだ患者たちだった。彼らの勇気によって、人類はがんに対する武器を手に入れることができた。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

がんに挑む人類の歴史は、科学革命の構造で説かれた進化の形そのものだ。進歩派と守旧派の間で起こる混乱、それを経たパラダイム変換。がんの歴史とは、科学の歴史、ひいては人類の歴史の写し絵であることがよく分かる。


なぜがんというモノは生まれたのか。生命というものは、互いに系内では対立しながらも、系としては平衡を保ってきた。しかしがんの存在はその原則から逸脱する。そのような存在を、なぜ生命は生み出したのか。数の暴走をとめるための自己保存機構なのだろうか。この辺については折を見て研究してみたい

まとめ

今回は、がんの歴史を描いたがん 4000年の歴史を取り上げました。

次回はZBC#58で発表された紙の世界史をご紹介します。

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