ZBC#60 [フランス革命のきっかけ] - 帳簿の世界史
課題図書
今回は2017年9月6日に開催されたZenport Book Club #60の図書の中から帳簿の世界史をご紹介致します。
- 作者: ジェイコブソール,Jacob Soll,村井章子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/04/08
- メディア: 単行本
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帳簿
古くから商業で使われていたこの手法は、14世紀のイタリアにおいて非連続的な変化を起こします。
すなわち、複式簿記の誕生です。
かの有名なブルボン朝も、この複式簿記によって隆盛を極めた一方、その杜撰な扱いによって、フランス革命によって打倒されたと言われています。
帳簿、そして複式簿記が作りだした人類史。その一端を覗いてみましょう。
要旨
帳簿の歴史は、そのまま人類の文明の歴史である。メソポタミア文明の遺産には、既に帳簿の記録を垣間見ることが出来る。その後、古代ギリシャ、古代ローマでも帳簿は広く用いられた。しかしそれらは往々にして不正に満ちていた。しかし、この状況を打破するあるイノベーションが、中世イタリアで生まれた。それは複式簿記である。これは当時、イタリア商人が共同出資方式を用いて貿易を行っていたことに端を発する。
フィレンツェのコジモ・デ・メディチは、会計技術を駆使し自身の銀行の支店を欧州の主要都市へ発展させることで、欧州一の富豪となった。しかしメディチ家はルネサンス期に没落する。その原因は思想と商業の対立であった。当時流行していたプラトン思想は、芸術や文化を重視し、商業を忌避した。彼の後継者も同様に芸術に傾倒し監査を疎かにした。その結果、メディチ家は没落することになった。
帳簿は王国の発展と衰退を招いた原因である。ルイ14世統治下のフランスはコルベールという宰相のもと、会計技術を国家運営に取り入れ、国家を発展させた。しかしコルベールの死後以降、会計技術を不正を明らかにするものと気づいたルイ14世は、それを遠ざけることになる。これが後のフランス革命の要因となる。
帳簿は商業国家の栄枯盛衰を招いた。オランダ、イギリス、アメリカなどのヘゲモニー国家が覇権を握れたのは、会計技術を政権運営に上手く取り入れたからである。一方で皮肉なことに、彼らの衰退を招いた原因は、不適切に会計を行ったことであった。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
紙が生まれ、アラビア数字が生まれ、数学が生まれ、複式簿記が生まれ、銀行が生まれ、株式会社が生まれた。後に、ビットコインが生まれた。人の渇望と技術の進歩。それが推し進める時代の流れと文明の発展。私達が今立つこの場所は、点では無く線であることがよく分かる。人・技術・地政学が織りなす時代。人類史という線の有り様が、朧気ながら浮かび上がってきた気がする。
帳簿の裏に潜む栄枯盛衰の歴史は、テクノロジーを活かすも殺すも扱うもの次第であることを表している。火、ダイナマイト、核分裂と同じだ。人の性は巡るが、技術は進歩する。結果的に、変わっていないように見えて、実は人類史は前に進んでいる。
まとめ
今回は、帳簿の歴史について説いた帳簿の世界史を取り上げました。
次回はZBC#61で発表されたTEAM OF TEAMSをご紹介します。
Zenport Book Club #60:その他の発表図書、関連図書
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- 出版社/メーカー: 徳間書店
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ルネサンスの歴史(上) - 黄金世紀のイタリア (中公文庫)
- 作者: I・モンタネッリ,R・ジェルヴァーゾ,藤沢道郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/11/18
- メディア: 文庫
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