ZBC#63 [マルサス後の世界] - 10万年の世界経済史

f:id:kaseda_toshihiro:20170910091447j:plain

課題図書

今回は2017年9月16日に開催されたZenport Book Club #63の図書の中から10万年の世界経済史をご紹介致します。

10万年の世界経済史 上

10万年の世界経済史 上

著者:グレゴリー・クラーク
カリフォルニア大学デービス校経済学部教授。ハーバード大学PhD。英国とインドの経済史、長期にわたる経済成長を研究している。


今の世界はなぜ、西洋社会を頂点とした格差社会となっているのか。

著者であるクラーク教授はそのきっかけを1800年代の産業革命に見出します。

すなわち、産業革命をきっかけに一部の国がマルサスの罠を抜け出し、大いなる分岐が生まれたのだと。

その過程とはどのようなものだったのでしょうか。

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 1800年代以前、世界はマルサスの罠の下にあった。これは、技術革新によって生産性が増加すると短期的に所得が増加するが、後に人口が増加することで生産性上昇が吸収される現象である。人類は実に石器時代から1800年代に至るまで、このマルサス的社会に生きていた。

  • 世界がマルサスの罠を逃れた理由は産業革命である。これによって、人類は人口増加と関係なく個人の労働生産性を上昇させることに成功する。この事象をきっかけに、世界は富める国と貧しい国という大いなる分岐に直面した。

  • 産業革命が中国、インド、日本などの他の国ではなく、イギリス等の西洋社会で初めて起こったのか。その理由は識字率の高い勤勉な中産階級の割合が高かったからである。

  • 経済発展とは、結局個人の生産性に依存する。そのため、貧困国に対する、教育に結びつかない只の援助は無意味である。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

世界の帰結を考察するために、一人あたりの生産性に目を向けたのは面白い。経済発展をモデル化し、いくつのパラメータから導出される一人あたり生産性という値が閾値を超えると、経済発展度合いは次の極地に移動するということだろう。頭の中でもイメージし易い。ただ問題は、生産性を導出するパラメータが何かということだ。


本書の主張には幾分断定が見られる。自説に都合の良いリソースのみを引用しているきらいがある。(例えば産業革命以前の日本は、石器時代と同じ経済水準であったなど)。反証可能性が高い仮説であるだけに、本主張は話半分で聞いた方が良いだろう。

まとめ

今回は、経済発展の歴史について説いた10万年の世界経済史を取り上げました。

次回はZBC#64で発表されたルネサンスの歴史をご紹介します。

Zenport Book Club #63:その他の発表図書、関連図書

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

大分岐―中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成―

大分岐―中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成―

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)

Zenport採用情報

株式会社Zenportでは、知的好奇心が旺盛な人を探しています。 弊社に興味がある方は以下のページからご応募ください。

www.wantedly.com