ZBC#70 [ダーウィンの先] - ヒトは病気とともに進化した

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課題図書

今回は2017年10月21日に開催されたZenport Book Club #70の図書の中からヒトは病気とともに進化したをご紹介致します。

著者

太田 博樹:北里大学医学部准教授。東京大学大学院理学系研究科博士課程終了。

長谷川 眞理子 :総合研究大学院大学先導科学研究所教授。東京大学大学院理学系研究科博士課程終了。


私たち人類の歴史のそばにはいつも、病気の存在がありました。

統合失調症結核、ガン。

これらの存在を前にすると、私たちは皆一様に次のような疑問を感じるのではないでしょうか?

なぜ、病気はあるのか?

この問いに対し、本書の著者等は次の答を示します。

すなわち、生物学から見れば健康も病気もそれぞれ1つの状態であり、良し悪しはないと。

ではこの病気という状態はどのような経緯によって起こるのでしょうか?

その一端を覗いてみましょう。

要旨

  • 病気がある理由の1つは進化的時間と社会的時間のミスマッチだ。ヒトの体が社会の変化のスピードに適応できないため、そのズレが病気となって発露している。

  • 一方、病気は適応だけで論じることは出来ない。昨今の研究から、一部の遺伝子が疾患と関連があることがわかってきた。遺伝要因がかかる疾患は,単一遺伝子が非常に大きな効果を持つメンデル遺伝性疾患と、多くの遺伝子が少しずつ効果を持つ多因子遺伝性疾患に分類できる.

  • 2010年前後から、ゲノムワイド関連分析(GWAS)というゲノム情報と疾患の関連を統計的に調べる手法が容易に行えるようになった。GWASの注目すべき成果として、ヒトは肥満しにくく方向に進化するに至った事実の解明がある。これはFTOタンパク質の発見によって明らかになった。

  • 精神疾患である統合失調症は他の病気とは一線を画する。多くの病は、年齢、地域によって発症率が異なるが、統合失調症は弱年齢、地域、また時代に関わらずほぼ1%の確立で発症する。この統合失調症の特徴は、平衡淘汰仮説によって説明できる。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

病気とは人類が定義した境界線の向こう側でしかない。昨今、人間の様々な特徴に名前を付け、病気とみなし、それを過剰に保護する動きが時々見られるが、私はこの兆候には反対だ。これらの行為は、疾患1つ無い健康状態こそが自然状態であり、それ以外は全て異常であるという考えを助長すると思う。何か問題がある状態でも、それを自然状態として受け入れる。互いに助けが必要な場合は、周囲の人たちで支え合う。そのような状態こそが、本来あるべき姿ではないだろうか。

まとめ

今回は、病気の歴史について説いたヒトは病気とともに進化したを取り上げました。

次回はZBC#71で発表された政治の起源をご紹介します。

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