ZBC#79 [国家の前の交易] - 異文化間交易の世界史

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課題図書

今回は2017年12月09日に開催されたZenport Book Club #79の図書の中から異文化間交易の世界史をご紹介致します。

異文化間交易の世界史

異文化間交易の世界史

交易離散共同体

国家が生まれる以前から、更に言えば文明が生まれる以前から、人々は交易を行っていました。

その媒介となっていたのが、本書のテーマである交易離散共同体です。

所謂、華僑、印僑ユダヤ人ネットワークなどがそれにあたります。

この交易離散共同体はどのようにして生まれ、そして歴史のなかでどのように役目を変節していったのか。

その軌跡を見ていきましょう。

要旨

  • 文明の興りと同調する形で人類は交易を始めた。これらは世界中の異なる文化間でに行われた。そのネットワークの役割を担っていたのが交易離散共同体である。これは、ある母国の商人達が外国に住み着き、そこで同国人の共同体として形成した交易拠点である。この交易離散共同体を介する形で、人々は異国文化の集団と交易を行っていた。

  • 交易離散共同体は、世界の各地で出現した。アフリカの隊商、アルメニア人、イスラームなどがそれに当たる。

  • 交易離散共同体の面白い点は、それが自己破壊的機能を有していることだ。同質性が高まるほど、彼らの存在価値は薄まるからだ。これにより人類史において、数多くの交易離散共同体が生まれ、そして消失してきた。

  • 交易離散共同体の存在意義自体も失くなりつつある。その理由は、産業革命とそれに伴う技術革新、国民国家、並びに西洋初の商業文化な普及である。そこでは、銀行、保険会社、鉄道、電信などが仲介者となった。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

本書では交易離散共同体の存在感は薄れたと述べているが、私はその主張には疑問を覚える。華僑ネットワーク、ユダヤ人ネットワークは未だに世界で大きな影響力を有しているからだ。


交易離散共同体は、持たない者の強さを示すいい例である。日本の中古車市場では、パキスタン人が大きな影響力を持つ。パキスタン人は国内に産業が発展しなかったため、多くの家族が親戚を、日本を含む世界中に派遣し、家族間で中古車の流通を媒介するネットワークを構築したためらしい。例えば同じことを現代の日本の家族がやろうと思っても難しいだろう。これは持たない者の強さを表している。

まとめ

今回は、交易離散共同体について説いた異文化間交易の世界史を取り上げました。

次回はZBC#80で発表された平和の地政学をご紹介します。

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