ZBC#80 [リムランド] - 平和の地政学
課題図書
今回は2017年12月16日に開催されたZenport Book Club #80の図書の中から平和の地政学をご紹介致します。
- 作者: ニコラス・J.スパイクマン,Nicholas John Spykman,奥山真司
- 出版社/メーカー: 芙蓉書房出版
- 発売日: 2008/05
- メディア: 単行本
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リムランドを制するものはユーラシアを制し、ユーラシアを制するものは世界の運命を制する
地政学の権威スパイクマンは第二次世界大戦中の1941年、リムランド理論を提唱しました。
この理論は、地政学の祖であるマッキンダーのハートランド理論を昇華させた概念であり、その考え方は今も地政学の基本として息づいています。
スパイクマンがリムランド理論を通して示したかったこと、それは国際平和の実現方法でした。
その方法とは?
要旨を見ていきましょう。
要旨
スパイクマンは、マッキンダーのランドパワー理論とマハンのシーパワー理論にエアパワーの概念を加えた、リムランド理論を提唱した。このリムランドとは北西ヨーロッパから中東、インドシナ半島を通り中国東部まで至るユーラシアの沿岸地帯を指す。
スパイクマンはリムランドこそが地政学上最も重要な地域であると考えていた。なぜなら、この地域は資源が多く、産業が大きく発展しており、また人口も多いからである。これはハートランドを重要視したマッキンダーと大きく異なる。
世界平和を実現するためには、リムランドにおけるバランス・オブ・パワーの維持が必要だ。ここを征服する1つの国家が現れた場合、ハートランド、また沖合は両側から包囲される事態になるからだ。その事態を避けるためにも、アメリカは従来のモンロー主義(孤立主義)を脱皮し、介入主義に転じ、リムランドの平和維持に尽力する必要がある。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
バランス・オブ・パワーの維持こそが国際秩序の手段だという見解には私も賛成だ。これは物理現象に似て分かりやすい。たとえ意志というファクターはあったとしても、同じ素粒子から出来た人間である以上、物理現象の縛りを受けるということだろうか。ちなみにバランス・オブ・パワーの考えは、かのキッシンジャーも提唱していた。彼もスパイクマンの影響を受けていたと考えられる。
スパイクマンが重視した包囲という概念は、元は軍から来た考えであり、その期限はハンニバルのカンナエの戦いにまで遡る。戦略、戦術の基礎は普遍であり、それは人類の歴史を通して今も息づいている。大変興味深い。
まとめ
今回は、リムランドを軸にした平和の実現について説いた平和の地政学を取り上げました。
次回はZBC#81で発表された南シナ海をご紹介します。
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- 出版社/メーカー: 芙蓉書房出版
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