Sendee Book Club vol3【ヤノマミ・文明・真理】
課題図書
今回は2016年10月1日に開催されたSendee Book Club 第3回で取り上げた図書の一冊 ヤノマミをご紹介致します。
- 作者: 国分拓
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/10/28
- メディア: 文庫
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著者はノンフィクション作家であり、またNHKのディレクターでもある国分拓。本書は彼がアマゾンに住む原住民「ヤノマミ族」を同居取材した際の見聞をまとめた書籍です。
早速、要旨を見ていきましょう。
要旨
・本書はアマゾンの奥地にあるワトリキと呼ばれるヤノマミ族の保護区に150日間滞在した著者による体験を綴った書籍である。著者はヤノマミの人々との滞在をもとに、「呪術」、「家族」、「狩猟」、「性」、「出産」、「死」、文明社会の価値観を根底から覆す彼らの剥き出し生と死をリアルに映し出している。
・虚構がまかり通る私たちの生きる社会とは対照的に、ヤノマミの世界には「生も死」も、「聖も俗」も、「愛も暴」も全てが同居している、ただ「真理」だけがある社会に彼らは生きている。
どうでしょうか?ヤノマミ族のフィルターを通すと、文明社会にいる我々が普段常識だと考えているものは全て虚構に転化してしまうようです。そこで残った剥き出しの真理。そこには「人とは何か」という問に対する示唆がありそうですね。
参加者の見解
本書籍の内容に対して参加者からはどのような意見が出たのでしょうか?順に見ていきましょう。
人類学の研究によると、旧石器時代の宗教には「真理」しかなかったとされている。その後新石器時代になり「善悪」や「規範」という概念が現れ、規範に従わないものは悪であり排除され、そこに「権力」という概念が生まれた。奇しくもそれが「文明」を生み出す要因となったのだろう。
真理しか無かった世界に、人類は善と悪という概念を生み出した。それが権力、規範、文明を生み出したという論説は大変おもしろいですね。 言わば、善悪とは人類が開けたパンドラの箱なのかもしれません。
ヤノマミの世界では、子供が生まれると母親はその子を人間として迎え入れるか、精霊として自然に返すためにその場で子を殺すかの選択を迫られる。これは私たちの生きる社会においては完全なる「悪」であるが、ヤノマミの世界においては「真理」でしかない。彼らの行為を我々の基準で断ずることは正義なのか。この善悪の溝を埋めることは果たして可能なのか。
善と悪を生み出し文明に生きる我々が、真理のみの中で生きる彼らの行為を断ずることは正義なのか。いやそもそも正義とは何なのか。ヤノマミは私達に答えの無い問いを投げかけているようです。
本書を呼んで皆さんはどのような感想を持たれたでしょうか。
まとめ
今回はアマゾン原住民の生活を映し出したヤノマミについて取り上げました。 次回は第4回で発表された重力波は歌うを取り上げます。
Sendee Book Club第3回:その他の発表図書、関連図書
- 作者: スディール・ヴェンカテッシュ,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2009/01/16
- メディア: 単行本
- 購入: 28人 クリック: 622回
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Sendee Book Club参加者募集
Sendee Book Clubは皆様のご参加をお待ちしております。
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Sendee Book Club vol2【人類と細菌は互いに支え合っている!?】
課題図書
今回は2016/9/24に開催したにSendee Book Club (SBC)第二回にて紹介された図書の中の一冊あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめたをご紹介します。
- 作者: アランナコリン,Alanna Collen,矢野真千子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/08/10
- メディア: 単行本
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筆者はイギリスのサイエンスライターであるコリン・アランナ、 彼女自身がロンドン大学で生物学の博士号を取得している研究者でもあります。*1
早速、要旨を見ていきましょう。
要旨
- 人は生命活動の大部分に、体内の細菌の力を借りている
- 20世紀後半から増えている、肥満、アレルギー、精神病などの所謂20世紀病は人体内の細菌の構成が変わったことが原因。その変化には抗生物質や現代の過度の無菌環境が影響を与えている。
- 細菌も、それを殺す抗生物質も、共に絶対の悪でもなく善でもない。大切なのはバランスなのだ。
どうでしょうか?人類と細菌は共に共生することで繁栄してきたこと、そのバランスの変化が現代に散見される病を引き起こしているという仮説は大変興味深いものですね。
参加者の見解
では本書籍の内容に対して、参加者からはどのような意見が出たのでしょうか?
人類は分業制で繁栄したが、生物自体も分業制で繁栄してきたという事実は大きな気付きであった。やはり人類は、いや生命は、種全体の繁栄を達成するためにも自分がすべきことだけに注力し、その他のことは他者を頼るべきなのである。しかしそこには、他者への信頼・尊敬と共に、適度な競争関係が必要なことも忘れてはならない。
抗生物質の本来不要な症状への投与は細菌の進化を加速させるため避けるべきである。しかし現代ではこのような事態が数多く起こっている。これは医師の無知に依る部分もあるだろうが、過剰なリスク回避を強要する現代社会にも責任はあると思われる。
体重変化は ⊿体重 = 摂取カロリー - 消費カロリーという単純な式では表現できないという知見は貴重な学びであった。しかしそもそも、性質の異なる食物を全て「カロリー」という単位に集約させるモデル化は余りにも短絡的であり、それを信じていた自分も浅はかだったと言う他無い。同様のことは他の分野にも当てはまるだろう。今後推論を行う際にモデルを単純化しすぎていないか注意する必要がある。
いかがでしょうか?本書を呼んで皆さんはどのような感想を持たれたでしょうか?
次回は第3回SBCで発表されたヤノマミを取り上げます。
SBC第2回:その他の発表図書、関連図書
歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
- 作者: マーク・ブキャナン,Mark Buchanan,水谷淳
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/08/25
- メディア: 文庫
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繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マット・リドレー,大田直子,鍛原多惠子,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/07/10
- メディア: 文庫
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Sendee Book Club vol1【国家はなぜ衰退するのか】
弊社では毎週土曜、会社外の方も交えた読書会「Sendee Book Club(以降:SBC)」を開催しています。この会の目的は
「点と線から未来を読み解く」
ことです。
ここで言う点とは現在のこと、そして線とは過去から現在に至る歴史のことを指します。
今後当ブログで、読書会にて披露された要旨と見解をお届けします。要約だけ読んでも役に立つと思うので引き続きお読みいただければ幸いです。
今回は2016月9月17日に開催された第1回で発表された書籍「国家はなぜ衰退するのか」の要旨と交わされた意見についてご紹介していきます。
国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: ダロンアセモグル,ジェイムズ A ロビンソン,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/05/24
- メディア: 文庫
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世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか?
皆さん御存知の通り、世界には豊かな国と貧しい国が存在します。しかしそれはなぜなのでしょうか?「銃・鉄・病原菌」で有名なジャレド・ダイアモンドは著書で、地理が1つの要因であると述べていました。(もちろんそれだけが理由ではありません)
しかしその場合、以下の近接している国々の間での貧富の差を説明できません。
では、貧富の差はなぜ生まれるのでしょうか?
この問いに対し二名の著者、マサチューセッツ工科大学の経済学教授であるダロン・アシモグルとハーバード大学教授ジェイムズ・A・ロビンソン等は
収奪的な制度が国家を衰退させる(貧しくさせる)要因である
と回答します。
この要点にも関わる形で本書の要旨は以下の3点にまとめられます。
- 国家が衰退するのは、小数のエリートが国家を支配し、収奪的な制度を構築するため。
- 国家が繁栄するには多数の人が貯蓄、投資、革新のインセンティブを持てる包括的な制度を作る必要がある。
- 現代の中国の繁栄は収奪的な政治制度の上に包括的な経済制度が載った形での繁栄である。この繁栄が包括的な政治制度の上での繁栄のように持続可能を持つのか、今後10年の動向を注視する必要がある。
収奪的だから衰退すると言い切れるのか?発表者の答えはNO
本書の内容に対し、参加者からは以下のような意見が述べられました。
- 収奪的制度=衰退、包括的制度=繁栄という二元論は安易すぎる。筆者は収奪的制度=中央集権、包括的制度=分権として、中央集権すらも否定しているが、その展開は短絡的にすぎる。人類史において中央集権が繁栄をもたらした例はある。
- 反権力が行き着く先は解放ではなく、新しい権力であるという点には同意する。人間は手に入れたもの権力に固執するものであり、その縛りからは逃れられない。
- 収奪的な制度の発生を防ぐにはどうすれば良いのだろうか?解は2つあるだろう。1つは公を第一に考えられるリーダーが改革を行うこと。もう1つは個人もしくは一部の小数集団に権力が集約しない形で改革を行うこと。前者は偶然に左右されるため、仕組み化するためには後者が良いのが、今のところ後者の形は考えつかない。
- 本書の帰結、「国家は包括的制度であれば繁栄し、収奪的制度であれば衰退する」は企業にも当てはまるだろう。投資・革新を起こすインセンティブを社員に与える仕組みを今後取り入れて行きたい。
本書に対し皆さんはどんな意見を持たれたでしょうか?
意見を交わしたい方はぜひ次回のSBCにご参加ください。
Sendee Book Club参加者募集
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自分では気付けなかった良本に出会いたい方
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読書のアウトプットの場がほしい方
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他者の要約を通して効率的に書籍の情報をインプットしたい方
上記に該当する方は是非とも参加をお待ちしています。
参加申込みはコンパスから行ってください。
ご質問ありましたら、Sendee Book Club事務局 sbc@sendee.jpまでご連絡ください。
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知識欲高いメンバーと一緒に仕事がしてみたいという方は以下のページからご応募ください。
SBC第一回:発表図書、関連図書
- 暗号解読
- 銃・病原菌・鉄
- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/06/28
- メディア: 文庫
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文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/02/02
- メディア: 文庫
- 購入: 27人 クリック: 421回
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