SBC#17 【ヒトがヒトを食べていた痕跡?】~ 眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

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課題図書

今回は2017年1月14日に開催されたSendee Book Club #17の図書の中から 眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎をご紹介致します。

眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎

18世紀、ヴェネチアのある地域に不眠症に苦しむ一族が現れました。この一族の人々は高い確率で不眠症を発生し、その後死に至りました。

当時これは祟りの一種と思われていましたが、後にこの現象には人類史に関わるある事実が関係していることが分かりました。

その事実とは何なのでしょうか?要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 18世紀後半からヴェネチア不眠症に悩む一族が出現する。この一族では、重度の不眠症を発症しやがて死に至る者が数多く発生してきた。この現象の原因は長い間不明であったが、現在これはプリオン病の一種であることがわかっている。

  • プリオン病とは異常タンパク質の増加によって起こる病気であり、同時に感染症でもある。代表的な疾患としてウシの牛海綿状脳症(狂牛病)、ヒツジのスクレイピー、ヒトのヤコブ病が挙げられる。

  • ヒトにプリオン病が起こる原因の一つが食人である。パプアニューギニアの風土病として知られるクールー病は、死体を食すことで発症していたことがわかっている。

  • プリオン病は太古に食人文化が存在していたことを強く裏付けた。プリオン病に罹患しているヒトはプリオン遺伝子がホモ接合型の人が多い、しかしながら現在ほぼ全てのヒトはヘテロ接合型を有する。この事実はヒトがある時点でプリオン遺伝子をヘテロ接合型にする強いインセンティブが働いていたことを意味する。これはプリオン病が感染症として蔓延したことが原因だと考えられており、そのきっかけは食人文化だと考えられている。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

本書のテーマの1つに食人、我々ヒトから見れば共食いがある。本書ではこの共食いによって不治の病が発症することとが述べられている。思いつきの仮説に過ぎないが、これは生物が種の破滅を防ぐために設計した自己保存機能だとは考えられないだろうか。

不治の病が、主としての防衛反応とする意見です。面白い意見ですね。

共食いを防ぐ方法として、ヒトにとってはヒトの肉が美味しく感じられなくする遺伝子上での設計が考えられる。近親相姦を避けるために、娘は父親に近い遺伝子の匂いを不快に感じる設計になっているように。しかし本書を読むと、遺伝子はそのような設計にはなっていないことがわかる。ではなぜ、人体にこのような設計が施されなかったのだろうか? 今は解は無いが、今後の考察の対象としたい。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は食人とプリオン病に関係について論じた眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎を取り上げました。

次回はSBC#18で発表された国際秩序をご紹介します。

Sendee Book Club #17:その他の発表図書、関連図書

道徳の系譜 (岩波文庫)

道徳の系譜 (岩波文庫)

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SBC#16 【生物学の中心にあるブラックホール】~ 生命、エネルギー、進化

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課題図書

今回は2016年12月29日に開催されたSendee Book Club #16の図書の中から 生命、エネルギー、進化をご紹介致します。

生命、エネルギー、進化

生命、エネルギー、進化

生物学の中心には、ブラックホールがある。

本書はこのような示唆に富む言葉で幕をあけます。 この言葉は即ち、生物がなぜこのような形態をしているのかは、未だ分かっていないということを意味します。

この生物学の真ん中にぽっかりと空いた暗闇に対し、本書の著者ニック・レーンは斬新な仮説で光を照らします。

では、その仮説とは一体どのようなものなのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 地球上の生物は大きく3種に分類される。細菌、古細菌(異常2つを原核生物と総称する)、そして真核生物だ。これらは2つの興味深い問題を我々に投げかける。1つはなぜこれら生物の細胞の形は同じ構造をしているのか、そしてもう1つはなぜ真核生物だけ巨大、かつ多様な構造を持つに至ったかである。筆者はこの2つの問題に「エネルギー」の観点から回答する。 ※普段我々が目にする生物は全て真核生物である。

  • 1つ目の問題を筆者は、エネルギー保存の同一性の観点から回答する。生命が生きるには内部にエネルギーを保存する必要がある。これは多種多様であってもよさそうだが、実のところ地球上の生命のエネルギーの保存方法は全て同じ「化学浸透共役」なのだ。筆者はこの事実から、この化学浸透共役が生命の形状に制約を与えている、即ち細胞を決められた一定の構造にしているのだと論ずる。

  • 続いて、2つ目の問題を筆者はエネルギー消費の観点から回答する。原核生物はエネルギー生成を最膜状で行っている。それゆえある大きさで、エネルギー消費(体積、即ち体長の3乗に比例)がエネルギー生成(表面積、即ち体長の2乗に比例)とバランスしてしまい、それ以上大きくなれない。一方、真核生物は細胞内にミトコンドリアを内包しており、これがエネルギー生産機関として働いている。それゆえ先の制約を逃れて、巨大化・多様化できたのである。

  • 真核生物がミトコンドリアを獲得したきっかけは「内部共生」である。細菌が古細菌の中に入り込む内部共生によってミトコンドリアとそれを有する真核生物は誕生したのだ。ちなみにこの内部共生は40億年の歴史上でただ一度しか生じていないほどの稀な現象である。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

本書はシュレディンガーが提示した「生命とは何か」という問いに対し、問われるべきはむしろ「生とは何か」であると断ずる。この「解」ではなく「問い」に対して疑問を呈する姿勢には大きく賛同する。世に大きな成果を残すため深く突き詰めるべきは、実は解ではなく問いなのである。

私達は与えられた問に解を見出すことのみに執着しがちです。しかし本当に目を向けるべきなのは、どの問いを解くべきなのかという、一段階上の視点なのです。

本書では、提示する仮説について常に反証可能性を用意している。仮設に対してその根拠を参考文献などの形で常に示しているのだ。この姿勢には大変尊敬する。この世界はテーゼ(仮説)とアンチテーゼ(反証)によってジンテーゼを生み出すという生産的な議論によって進歩するからだ。それを思うと、常に反証不可能な陰謀論を展開し、世を混乱させるだけの者は著者を見習うべきである。また、私もこの著者のようにあらねばならいなと深く自省する。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は科学革命の定義、並びに発生方法について論じた生命、エネルギー、進化を取り上げました。

次回はSBC#17で発表された眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎をご紹介します。

Sendee Book Club #16:その他の発表図書、関連図書

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

宗教生活の原初形態〈上〉 (岩波文庫)

宗教生活の原初形態〈上〉 (岩波文庫)

宗教生活の原初形態〈下〉 (岩波文庫)

宗教生活の原初形態〈下〉 (岩波文庫)

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SBC#15 【パラダイムシフトとしての革命】~ 科学革命の構造

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課題図書

今回は2016年12月24日に開催されたSendee Book Club #15の図書の中から 科学革命の構造をご紹介致します。

科学革命の構造

科学革命の構造

科学革命とは何か?

この問に対し、本著の著者であり、かつ科学哲学の権威でもあるトーマス・クーンはある解を与えます。すなわちそれは「既存のパラダイムから新規のパラダイムへの変化」であると。

ここでいうパラダイムとは何のことを指すのでしょうか?また、この科学革命はどのようにして起こるのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • パラダイムとは、広く人々に受け入れられている概念で、科学者に一定の期間、自然に対する見方を与えるものである。例えば、ニュートンの「プリンキア」、ラボアジェの「化学」などがそれに当たる。

  • 著者は科学には2つの進歩の形があると唱える。1つは通常科学、もう一つは科学革命である。前者が既存のパラダイムに従って起こる進歩であるのに対し、後者は既存のパラダイムを破壊し、自然に対する新しい見方を獲得することで起こる進歩である。後者の例としてはコペルニクスの地動説、アインシュタイン相対性理論が挙げられる。

  • 科学革命は、既存のパラダイムが自然の研究において上手く機能しなくなったときに、一部の科学者が新しいパラダイムを築きあげることで起きる。しかしそのプロセスは常に混乱を伴う。なぜなら既存のパラダイムの勢力がその遷移を阻もうとするからだ。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

著者は科学革命の2つの特徴、「既存のシステムが時代に合わなくなったことで起こる」「遷移時にパラダイム間での争いが起きる」をして、科学革命は政治革命と似ていると論ずる。その点には大いに同意する。かつ、この考えは「社会」にも拡張できると思う。では現代社会における革命前夜のパラダイムとは何か?1つは「一夫一妻の婚姻制度」であろう。この制度は明治以降に作られたものだ。本制度が作られた理由は、国を発展させる過程で農業に働き手が必要であり、かつ彼らの家庭に跡取りを残す必要があったためである。だとすれば、多くの人間が第三次産業に従事する現代に、本制度は適していないことは明らかであろう。そうなれば、このパラダイムは近いうち革命によって打倒されてもおかしくない。

面白い視点ですね。一夫一妻制以外にも時代に合わなくなったパラダイムは社会に溢れています。それらがなぜまだ残っているのかを考察することにも、大きな学びがありそうです。

バブル 日本迷走の原点の著者は、バブルとは既存のシステムが時代に合わなくなったときに起こる歪であると説いた。本書と科学革命の構造から考察するに、バブルと、それ以降現代まで続く停滞は、革命を起こせなかったパラダイム間での争いであることが分かる。となれば、現在は言わば革命前夜ということになる。それはいつ起こるのか、いや、いつ起こすのか、それを私達は考えるべきなのであろう。

確かに今はパラダイムの間にあるのかもしれません。だとしたら夜明けはいつに成るのか?そのきっかけいは私達の手にあるのかもしれません。

科学、政治、社会で起きたパラダイムと、それらが革命を通して生まれた過程を見れば、なぜ現代はこのような仕組みになっているのかが深く理解できるはずだ。その洞察は、次の革命を起こすための役に立つはずだ。時間があるときに調査してみたい。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は科学革命の定義、並びに発生方法について論じた科学革命の構造を取り上げました。

次回はSBC#16で発表された生命・エネルギー・進化をご紹介します。

Sendee Book Club #15:その他の発表図書、関連図書

バブル:日本迷走の原点

バブル:日本迷走の原点

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”)

市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える”)

誰も教えてくれない聖書の読み方

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SBC#14 【自由闊達にして愉快なる研究機関の建設】~ 「科学者の楽園」をつくった男:大河内正敏と理化学研究所

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課題図書

今回は2016年12月17日に開催されたSendee Book Club #14の図書の中から 「科学者の楽園」をつくった男:大河内正敏理化学研究所をご紹介致します。

理化学研究所。この日本を代表する研究所は名前こそ有名ですが、その設立のきっかけ、辿ってきた軌跡はあまり知られていません。

そこで今回はこの自由闊達にして愉快なる研究機関の足跡をご紹介致します。

要旨

  • 理研渋沢栄一と、米国で科学者として活躍していた高峰譲吉が主導して設立された。彼らが理研を作った背景には、日本が真に欧米と伍す発展を為すには、基礎科学の発展、独創的な科学的成果を生み出す環境作りが不可欠という危機感があった。

  • 理研は第三代所長の大河内正敏の下で大きな発展を遂げた。彼は派閥や官僚性を排除し、自由闊達な研究環境を作るため、主任研究員を独立させ、その者に一切の裁量を委ねる制度を確立した。これが後に多くの優れた研究成果を生む要因となる。

  • 理研は自身で研究費を確保するため、理研発の技術を産業化するための企業を多く設立した。またそれらを束ねる形で財閥を形成した。これが理研コンチェルンである。この理研コンチェルンは日本が敗戦するまで、理研に潤沢な研究費を提供し続けた。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

理研はSBC#13で取り上げたベル研究所と似ている。これは、外部機関に頼らない資金繰りと自由闊達な研究風土に依るのだろう。

似た意見でこんなモノも。

ベル研究所の場合もそうであるが、俊才が集まり革新を起こす組織を作るには、その文化をどう作るかが肝となる。理研では大河内所長主導のもと、研究者への自由裁量の付与、官僚性を配すための部の廃止が行われた。それが多くの自由な研究を志す優秀な研究者を集め、優れた成果を生み出すのに貢献したのだろう。

前回までのピクサーベル研究所と同じように、理研からも組織作りで学ぶところは多いですね。結論は好きにやらせる、ヒエラルキーを作らない、交流させる、という3つに集約されるでしょう。

本書では何の役に立つか最初は分からないが、好奇心の赴くままに研究した結果、大きな成果を生み出した事例が紹介されている。ビジネスの世界にいると、事業を考える際は常に「これが何の役に立つか」「市場規模はどれくらいあるか」という思考をしているが、これによりイノベーションを生み出す機会を逸しているのかもしれない。

昨年ノーベル章を受賞された大隅良典教授も「役に立つということばが社会をダメにしている」という言葉を残しています。行う前から短期的な成果を求める姿勢は、実は何か大きなモノを失っているのではと思いしらされます。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は「科学者の楽園」をつくった男:大河内正敏理化学研究所を取り上げました。

次回はSBC#15で発表された科学革命の構造をご紹介します。

Sendee Book Club #14:その他の発表図書、関連図書

世界の技術を支配する ベル研究所の興亡

世界の技術を支配する ベル研究所の興亡

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SBC#13 【バブルは断層のズレだった?】~ バブル 日本迷走の原点

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課題図書

今回は2016年12月10日に開催されたSendee Book Club #13の図書の中から バブル 日本迷走の原点をご紹介致します。

バブル:日本迷走の原点

バブル:日本迷走の原点

かつて日本では戦争を知らない子供たちという言葉が流行ったそうですが、現代の30代までの若手と呼ばれる世代は言わばバブルを知らない子どもたちとなるのかもしれません。

本書はそんなバブルを知らない子どもたちに向けて書かれた本です。

1980年代末のかの熱狂はなぜ起こったのか?著者はその構造を戦後日本に脈々と息づいていた渋沢資本主義と世界情勢を用いて解き明かします。

要旨

  • バブルとは一言で言えば断層のズレで起こった地震のようなものである。戦後の混乱期、日本の行動経済成長を牽引したのは興銀、大蔵省、新日鉄、この3社が形作る「渋沢資本主義」であった。しかし1970年代、ニクソンショックオイルショックによって世界経済の仕組みは大きく変わった。必然的に日本の経済も構造改革を求められたが、日本のエスタブリッシュメント層は体制の移行に抵抗した。結果、前述の渋沢資本主義らは余った力を土地と株のバブルに振り向けた。日本経済は未だそのときの余震に悩まされているのである。

  • 80年代のバブルは多くのバブル紳士を生み出した。リクルート江副浩正光進の小谷光浩などである。彼らはバブルを立身出生の機会と捉え、既存の経済体制に風穴を空けるよう駆け回った。しかしバブルの宿命か、その中の誰一人して静かな晩年を送ったものはいない。

  • バブル崩壊後の失われた20年のデフレ時代。その期間を抜けて日本は今株高、土地高の局面を迎えている。これは実体経済を反映したものか、それともあの時と同じバブルなのか。事態が判明するのは数年後になるのだろが、一つだけ言えるのは、今の世間の空気、金融機関、ベンチャー経営者の言説が、当時交わされた言葉と驚くほど似通っているということである。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

本書を読むと戦後の日本においては、エスタブリッシュメントに喧嘩を打った新興勢力は常につぶされているのがわかる。この国で上手く生きる唯一の方法は長いものには巻かれるということなのかもしれない。

正面から挑むだけが戦いではない。この国で成り上がるにはしたたかさも必要なのかも知れません。

今がバブルなら私のような立場の人間にとっては千載一遇の好機と言える。バブルとは体制の変化、動乱を示す現象だと考えれるからだ。

名も無い個人が名を上げるには環境が後押ししてくれることも必要です。戦国時代、幕末に英雄が多く生まれたのも動乱という背景があったからです。 その意味では、今は名も無き個人にとってチャンスなのかもしれません。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回はバブル 日本迷走の原点を取り上げました。

次回はSBC#14で発表された「科学者の楽園」をつくった男:大河内正敏と理化学研究所をご紹介します。

Sendee Book Club #13:その他の発表図書、関連図書

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

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住友銀行秘史

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SBC#12 【シリコンバレーはある独占企業が生み出した?】~ 世界の技術を支配する ベル研究所の興亡

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課題図書

今回は2016年12月03日に開催されたSendee Book Club #12の図書の中から 世界の技術を支配する ベル研究所の興亡をご紹介致します。

シリコンバレーの伝説的な起業家であり、かつ著名な投資家でもあるピーター・ティール氏は著書ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるかにて次のような言葉を残しています。

「競争ではなく独占しろ」

この言葉はシリコンバレー、そして全世界の企業に向けたアドバイスであり聞いたことがある人も多いでしょう。

しかしながらこのシリコンバレー誕生の背景にある独占企業の存在があったことはあまり知られていません。

その企業の名前はAT&T

このAT&Tはかつてベル研究所という研究所(注1)を有していました。この研究所はかつて人類の生活に無くてはならない基礎技術を多数生み出しただけでなく、あのシリコンバレー誕生の礎も築いたのです。

そこで今回は人類史上最も革新的だった研究所ベル研究所の歴史を覗いてみましょう。

注1:2015年にベル研究所ノキアに買収された。

要旨

  • ベル研究所は現代生活に必須である基礎技術、トランジスタ情報理論などを生み出した。この実績は公的機関ではない研究所としては稀有のものである。その類まれな業績はノーベル賞受賞者が7組13人に上ることからも見て取れる。

  • ベル研究所がこのように研究分野、特に基礎研究で成果を残せたのはその運営体制による。ベル研究所は米国の独占企業であるAT&Tの企業内研究所として存在した。当時AT&Tは通信業界にて独占を築いていたため潤沢な資金を有していた。ベル研究所はその資金を用いることができたため、研究費、利益を出すことへの圧力、そのどちらにも悩む必要無く基礎研究に臨むことが出来たのである。

  • ベル研究所の偉大な歴史を形作ったのは、ショックレー、シャノン数多の天才たちである。ベル研究所が優れていた点は、そのような天才たちを働かせられる組織作りをしていたからに他ならない。

  • ベル研究所はかの有名なシリコンバレーの産みの親と言っても良い。ベル研究所トランジスタを生み出したショックレーは、当所を退職後8人の研究員(俗に言う8人の反逆者)を連れてサンフランシスコのマウンテンビューに研究所を開設した。本研究所はショックレーの人格欠如により間もなく解散となるが、退所したロバート・ノイスゴードン・ムーアはこの地でインテルを創業する。これが契機となりこの地は後にシリコンバレーと呼ばれるIT企業の一大集積地となる。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

人格無き才覚とどう共存すべきなのか。本書に出てくるショックレーはトランジスタを生み出した言わば天才であるが、人格という点では著しく欠陥があった。そのような存在に対し我々凡人はどう対峙すれば良いのか。その方法として本書に出てくるベル研のトップ、マービン・ケリーの行動は参考になると言えよう。

能力はあるが人格に乏しい、そのような人とは多かれ少なかれ私達も仕事をしていれば出会うことがあるでしょう。その際には是非ともマービン・ケリーの対応を参考にしたいものです。

ベル研究所の建物の設計は人々が必然的に会って話すようになっていた。例えば研究室と事務用のオフィスは長い廊下で隔てられていたように。このような設計は前回紹介したピクサーにおいても行われていたものである。革新的な組織には人の交流が必須であり、かつそれは組織が率先して促さなければならないことを示す良い事例である。今後自社の組織作りでも真似していきたい。

前回のピクサーと同様に、革新的な組織の組織作りには学ぶところが多いですね。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は世界の技術を支配する ベル研究所の興亡を取り上げました。 次回はSBC#13で発表されたバブル 日本迷走の原点をご紹介します。

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SBC#11 【野獣と赤ん坊】~ ピクサー流 創造するちから

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課題図書

今回は2016年11月26日に開催されたSendee Book Club #11の図書の中から ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法をご紹介致します。

ドワンゴ会長の川上量生氏の著書コンテンツの秘密にて、映画監督である宮崎吾朗氏は次のようなことを語っています。「ジブリは1人の天才が創造的な作品を作っているが、ピクサーはそれを組織で作っている」。

ここで言う天才とは言わずもな宮﨑駿監督のことですが、ピクサーは天才に頼らずとも組織の力で素晴らしいコンテンツを生み出し続けているというのです。

ではピクサーはどうやって継続的に創造的な作品を生み出しているのでしょうか?

要旨

  • ピクサーが継続的にヒット作を生み出せる理由はその企業文化にある。それを一言で表すと率直さとなる。ここで言う率直さとは、立場、相手の心情にとらわれず、感じたことをそのまま伝えるということである。この率直さが徹底されているからこそ、ピクサーは素晴らしい作品を継続的に生み出すことが可能なのである。

  • ピクサーでは率直さを体現し作品の品質を上げるためにブレイントラストというイベントを定期的に開いている。これは製作中の作品についてスタッフが忌憚の無い意見を交換する場である。ここで作品の中で伝えたい価値、キャラクターの真理、背景を深掘りすることで、ピクサーの作品は醜いアヒルの子から美しい白鳥へと成長するのである。

  • ピクサーは企業は継続して利益を出すことも大事だが、独創的な作品を作ることも必要だと考えている。著者はこれを野獣と赤ん坊の両立と表現する。企業は成長するに従い利益という野獣に囚われ、独創的な作品、すなわち成功するか分からないが可能性を感じさせる赤ん坊を手放していく。しかしそれではユーザーは時間が経つに連れて離れてしまい企業の持続性は望めない。ピクサーはそのような事態を防ぐため、失敗を奨励しそこから積極的に学ぶ文化を醸成しているのだ。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

ピクサーからは組織構築について多くのことを学べる。ピクサーでは社員全員が率直に意見を述べ、それでいて風通しの良い環境を保つために、数多くの施策を実践している。例えば会議のときには、席次をつくらないために円卓を用い、ネームプレートは置かない。このような無意識に訴える施策によって、ピクサーは文化を養っている。私も自分の組織で、人々の無意識に働きかける方法を用い、文化を養っていこう。

サッカー日本代表監督の岡田武史氏も、選手の無意識に訴える指示を意図的に行っていると述べていました。文化の醸成、部下の育成にはこの無意識の扱い方が鍵を握るのかもしれません。 その他にも本書の中にはこれらの他にもピクサーが文化を養うために行っている施策が書かれています。詳しく知りたい方は本書を手にとってみてください。

ピクサーの驚くべき部分は質の優れた作品を生み出す文化を作ったことではなく、それを今でも維持していることだ。素晴らしいものを作ることはもちろん難しいが、それを維持することは更に難しい。組織とは腐りやすく、それを戻すことは作るより難しいからだ。これについては唐の太宗が記した貞観政要にも、創業に勝る守成の難しさとして書かれているので参考にされたし。

手に入れるより、維持する方が難しい。プロゲーマーの梅原大吾さんも「勝つことは簡単だが、勝ち続けることが難しい」と仰っていますが、根本は同じことを言っているのでしょう。ちなみにここで言及されている貞観政要帝王学として長らく読まれてきた書籍です。かの徳川家康北条政子も読んだと伝えられています。興味のある方はこちらも是非。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回はピクサーが継続して素晴らしい作品を生み出す方法について綴ったピクサー流 創造するちからを取り上げました。 次回はSBC#12で発表された世界の技術を支配する ベル研究所の興亡をご紹介します。

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