SBC#22 【パクス・アメリカーナの終焉?】~ 米中もし戦わば

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課題図書

今回は2017年2月18日に開催されたSendee Book Club #22の図書の中から 米中もし戦わばをご紹介致します。

米中もし戦わば

米中もし戦わば

「中国との間に戦争は起きるのか?」

昨今勢いを増す中国の軍事力を目の当たりにすると、これは否が応でも考えなければいけないテーマです。

70年以上戦争から遠ざかった我々は、戦争など起こるはずないと思いこんでいますが、そんな楽観的な思考に対して、著者は米中が戦争に至る可能性は70%だという驚くべき見解を提示します。

その根拠とは何なのでしょうか?そしてそれを防ぐ手立ては無いのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 本書は二つの問いに焦点を当てる。一つは米中戦争はありうるか、もう一つはそれはどのように防げるのかである。本書の両者に対する答えは、戦争は70%以上の可能性でありうる、それを防ぐには総合国力による均衡を作るしかないとなる。

  • 著者は米中戦争の可能性は70%以上という結論を、世界史と、現在の中国の軍備拡張の実態から説明する。歴史上既存の超大国に、新興の大国は高い確率で覇権を奪取するために挑んで来たという事実と、現在の中国の動きはそれに類似しているという事実から、著者は今後米中が戦争に至る可能性は高いと断ずる。

  • 著者が戦争を防ぐものとして挙げた総合国力とは、国家が有するハードパワーとソフトパワーの総計である。ハードパワーが軍事力、核を意味するのに対し、ソフトパワーは経済力、政治体制の安定度、教育制度の質などを意味する。両者がどちらとも多国を抑止するに十分なだけ発達していることが、戦争を防ぐために必要なのである。

  • この状況に対し日本はどうすれば良いか。それに対する解は、中国にソフトパワー(特に経済)で依存し過ぎず、独立を保つことである。また、ハードパワーの観点でも、同盟国と協力する形で中国とパワーバランスを保つことが必要となる。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。

本書を読むと、平和とは力と力の均衡によって成り立っていることがわかる。この点はキッシンジャーの国際秩序においても語られていたことだ。平和を享受している私たちは、話し合い、武力の放棄といった気持ちの良い方法で平和を実現しようと望む。しかし歴史上、そのような形で達成された平和はなく、平和はいつも軍事力を含む力の均衡に寄って実現していることを忘れてはならない。

平和の大いなる矛盾ですが、平和は常に武力の均衡で保たれていることを私たちは肝に命じておくべきでしょう。

トランプ政権は本書に多大な影響を受けている。トランプ政権が工場を中国から米国に戻すよう動いているのも、雇用創出、技術流出によって中国の経済力を挙げないようにしているためだと考えられる。軍事、地政学という視点から読むと、今の政治情勢がまた異なる形で浮かび上がってくる。

昨今のトランプ政権の動きも、軍事・地政学というフィルターを通すと、その意図が見えてきます。国際情勢を読む際は、この視点も準備しておくとより深い洞察が得られるでしょう。

中国の戦略には、「戦わずして勝つ」という孫子の考えが随所に垣間見られる。メディア、エンタメ会社にロビー活動をすることで、自国に有利な国際世論を作り出したり、相手国に気づかれぬ間に既成事実を作り、勝利を得るなどと言ったことを中国は行っているのだ。これらの行動の是非はともかく、このしたたかさは尊敬に値する。

中国政府の動きには、随所に孫子の思想が垣間見えます。歴史に現れた先人の智慧を実際に行動に移す部分は、素直に尊敬してしまいます。

参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?

まとめ

今回は米中戦争が起きる可能性、それを防ぐ対応策を説いた米中もし戦わば 戦争の地政学を取り上げました。

次回はSBC#23で発表された1493をご紹介します。

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