ZBC#67 [心理と真理の交差点] - マネーの進化史

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課題図書

今回は2017年10月7日に開催されたZenport Book Club #67の図書の中からマネーの進化史をご紹介致します。

著者

ニーアル・ファーガソンハーヴァード大学歴史学教授

マネー

この捉え所のない概念は、人類史を通じて、多くの変化を遂げてきました。

信用創造、債権、株式、保険、不動産。

またマネーの変化に呼応する形で、社会も大きく変化してきました。

人類とマネーが紡いだ歴史、その一部を覗いてみましょう。

要旨

  • 当所、マネーとは貴金属を意味していた。大航海時代、南米を植民地化し大量の銀を手に入れたスペインは隆盛を極める。しかしその後、銀の価格は暴落し、スペイン自体も没落することになる。その原因は、スペイン政府が、価値とは相対的なものだと理解できなかったからである。

  • マネーは銀行と信用創造の誕生によって大きく発展した。14世紀、フィレンチェのメディチ家によって銀行という概念が生まれる。その後、ストックホルム銀行が信用創造という仕組みを作りだした。その結果、実際に存在する貴金属以上のマネーが市場に循環するようになった。

  • マネーは債権の誕生によって更に強化された。また、債権は権力や戦争とも結びついた。債権により多大な権力を手に入れたのがロスチャイルド家である。彼らはヨーロッパ中に張り巡らしたネットワークを用いて債権市場を長きに渡り支配した。また債権の力を使い、ナポレオン戦争南北戦争の趨勢を決めた。

  • 次にマネーは株式という概念を手に入れた。イギリス出身のジョン・ローはフランス王家と協力して、ミシシッピ会社の株式と、関連して中央銀行と紙幣を作った。フランス王家はこのスキームを用いて財政危機を回避しようとした。しかしその運営は、市場操作、粉飾決算を孕んだものだった。後にこの試みは失敗し株式は暴落。王家の財政は更に逼迫した。これが後のフランス革命に遠因となった。

  • 不動産もマネーの一部として重要な役割果たしてきた。歴史上、不動産とは主に貴族、権力者の所有であった。アメリカにおいては、ニューディール政策におけるS&Lによって始めて、個人が住宅を取れる仕組みが整えられた。これは後にサブプライムローンという形で進化する。しかしこれが後の金融危機を引き起こす要因となった。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

マネーはエネルギーに似ている。エネルギーには有効エネルギー(仕事として取り出せるエネルギー)という概念がある。マネーにも同様に有効マネーという概念があるように思う。エネルギーにおいては、有効エネルギー率の低いものはヒートポンプを使って再利用されるが、マネーにおいても同じことが行われている。そのポンプの役割を担うのが企業である(行政も)。企業は主要事業によって市場に薄く広がったマネーを引き上げ、他の必要としている場所、例えば基礎研究、新規事業開発、寄付などにマネーを流す。その文脈で言うと、一見すると社会的意義を感じられないような事業も、マネーを回すポンプとしての重要な役割を担っていることが分かる。


マネーとは心理と真理の交差点である。信用という心理的なモノが、揺らぎを許さない真理(数学)によって表現される。マネーとはそれ自体が、アートとサイエンスを内包した存在なのだろう。

まとめ

今回は、マネーの進化について説いたマネーの進化史を取り上げました。

次回はZBC#68で発表された資本主義と自由をご紹介します。

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