ZBC#74 [貧者と金融] - 最底辺のポートフォリオ

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課題図書

今回は2017年11月11日に開催されたZenport Book Club #74の図書の中から最底辺のポートフォリオをご紹介致します。

最底辺のポートフォリオ

最底辺のポートフォリオ

  • 作者: ジョナサン・モーダック,スチュアート・ラザフォード,ダリル・コリンズ,オーランダ・ラトフェン,野上裕生,大川修二
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2011/12/23
  • メディア: 単行本
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金融とは富裕層だけのものなのか?

このような問いに対するアンチテーゼとして書かれたのが本著です。

ニューヨーク大学低所得者への質の高い金融サービスの拡大について研究するジョナサン・モーダック教授等は、一日2ドル以下でクラス貧困層に焦点を当て、彼らの資金調達や貯蓄に目を向けることで、生存戦略を明らかにします。

そこから明らかになった、彼らの日々の資金繰りの実態、また然るべき貧者への金融サービスとはどんなものなのでしょうか。

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • バングラデシュ・インド・南アフリカの約300世帯を対象に、資金調達や貯蓄を中心にして1年間行った調査の結果から、貧困層の問題は単に所得が低いだけではないことが分かった。所得が不規則であること、所得の予測が不可能であること、また資金調達の手段がないことが、貧困層の資金繰りをより深刻にしている。

  • この状況に対して貧困層は様々な手法で対応している。1つは友人、親族でネットワークを構築し、だれかがリスクに直面した際は周りの人間が助け合うというものだ。これは、利子のかからない共済保険をイメージすればわかりやすい。

  • 貧困層へのファイナンス機関として、昨今グラミン銀行に代表されるマイクロファイナンス機関が台頭してきた。しかしこれらは、硬直的であり即応性が無いため、貧困層のニーズを満たしてはいなかった。

  • 今後の貧困層向けの金融サービスには、「信頼性」「利便性」「柔軟性」「構造」の4点が求められる。これらをきっかけとして金融サービスは、貧困層が日々の金銭管理を厳格に行い、長期的な貯蓄を行い、また投資のためにお金を借りられる環境を得られるようサポートすべきである。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

貧困層への金融サービスには、もう1点「教育」が必要だろう。投資という概念の教育だ。ミクロ経済というのは、消費と投資のバランスをとり、持続可能な系を作ることだとみなせる。しかし、投資の概念の習得は簡単ではなく、またそれが貧困国が貧困から抜け出せない理由でもある。よって、金融サービス付与の際に、教育も同時に施すことが必要となろう。ただ恥ずかしながら、どのような教育が必要かについての考察までは考えが及んでいない。これは今後のissueの1つだ。

まとめ

今回は、貧困層の資本政策について説いた最底辺のポートフォリオを取り上げました。

次回はZBC#75で発表されたCRISPRをご紹介します。

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