ZBC#48 [自由あればこそ] - 隷従への道
課題図書
今回は2017年7月4日に開催されたZenport Book Club #48の図書の中から隷従への道をご紹介致します。
- 作者: フリードリヒ・A.ハイエク,Friedrich A. Hayek,一谷藤一郎,一谷映理子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1992/07/01
- メディア: 単行本
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ファシズムの台頭と崩壊を目撃したハイエクは、国家のあり方について一つの洞察を示します。
すなわち、計画より自由であると。
その真意とは、何なのでしょうか?
要旨を見ていきましょう。
要旨
ファシズムと共産主義は対立しない。両者は市場の代わりに中央計画経済を信奉している点で、同一のものである。なおのこと言えば、ファシズムとは共産主義の延長線上にあるものである。
計画経済が失敗する理由、それは完全な価値基準が個人には存在していないからだ。そのため、一部の人間が意図的に計画する経済は失敗することになる。
このような危険から国家を救うには、自由主義、個人主義を推し進めることが必要である。市場における個人の自由な活動こそが、国家、文明の発展には必要なのである
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
社会主義、計画経済というものは、耳障りの良いものだ。そこで語られる未来は、誰も否定が出来ないものだろう。しかしこの問題点は、人間の能力を過大評価しすぎていることだ。自分たちは全て管理して良い世界を作れる、その誤解が破滅を招く。それは第二次世界大戦後の共産主義国家の帰結を見れば明らかである。地獄への道は善意で舗装されている。組織運営に必要なことは、自分立ちの可能性を過大評価せず、その前提で組織を設計するということなのだろう。
本書は自由の必要性を解くが、フロムが「自由からの逃走」で問いたように、自由とは重たいものだ。人はどこかで誰かに管理されたいと思っている。私はその理由は、選択の重さにあると思っている。過剰に存在する選択肢、予測しきれない選択後の結果、この2つが脳を圧迫し、結果、個人に選択を放棄させているのだと思う。
まとめ
今回は、個人の自由の必要性を説いた隷従への道を取り上げました。
次回はZBC#49で発表されたリデルハート戦略論をご紹介します。
Zenport Book Club #48:その他の発表図書、関連図書
- 作者: エーリッヒ・フロム,日高六郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1965/12/01
- メディア: 単行本
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- 作者: ジョン・スチュアート・ミル,John Stuart Mill,山岡 洋一
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2011/09/01
- メディア: 単行本
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- 作者: ヨーゼフ・シュンペーター,大野一
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2016/07/13
- メディア: 単行本
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ZBC#47 [胡椒と植民地主義] - 胡椒 暴虐の世界史
課題図書
今回は2017年7月1日に開催されたZenport Book Club #47の図書の中から胡椒 暴虐の世界史をご紹介致します。
- 作者: マージョリーシェファー,Marjorie Shaffer,栗原泉
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2014/12/25
- メディア: 単行本
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胡椒
この芳醇な香りを抱いたスパイスは、15世紀当時、最高級の嗜好品として富裕層に消費されていました。
それゆえ、その富を手にするべく、当時、多くの荒くれ者がヨーロッパ人が船を出し、アジアへと向かいました。
この動きは、大航海時代の幕開けとなり、後の植民地主義の契機ともなりました。
要旨
胡椒は、15世紀の大航海時代の象徴とも呼べる存在だ。これはインドや、インドネシア等のアジアの熱帯地方にしか育たない植物だったので、流通が発生していない当時は、高級品として取引されていた。これを一攫千金のチャンスと捉え、ヨーロッパから多くの荒くれ者が、アジアに向けて船を出した。その中には、かのバスコ・ダ・ガマも含まれている。
胡椒の覇権は、それ自体、アジアでの覇権を意味していた。最初にこの地位を手にしたのはポルトガルである。その後、その地位はオランダ、イギリスと遷移していく。この競争は植民地主義のキッカケともなった。
胡椒は会社という組織の発展も後押しした。かの有名な東インド会社は、胡椒を含むスパイス貿易を取り締まる機関として設立された。胡椒の存在は、商業活動の歴史にも大きな影響を与えているのである。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
胡椒が富の象徴となり、結果、原産国に負の遺産を残したという帰結は、砂糖のそれと大きく重なる。またその姿は、現代の石油と産油国の関係にも重なる。土地が豊かであるということは、非対称性の多い世界においては、むしろ負の影響を持つのだろう。
メインディッシュとはなりえない胡椒が、これだけの価値を持てたことは、B2Bビジネスの可能性を示唆している。肉、魚、野菜などの食物がB2C食物だとするならば、胡椒はB2B食物と呼べるだろう。しかし、全てのB2C食物の価値を高められるという使いやすさ故に、胡椒はB2C食物を凌ぐほどの価値を有するに至った。B2Bビジネスの本質が胡椒から透けて見えるようだ。
まとめ
今回は、胡椒が世界史に及ぼした影響について説いた胡椒 暴虐の世界史を取り上げました。
次回はZBC#48で発表された隷従への道をご紹介します。
Zenport Book Club #47:その他の発表図書、関連図書
トウガラシの世界史 - 辛くて熱い「食卓革命」 (中公新書)
- 作者: 山本紀夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/02/24
- メディア: 新書
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- 作者: 川北稔
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1996/07/22
- メディア: 新書
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- 作者: マークカーランスキー,Mark Kurlansky,川副智子
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2016/11/24
- メディア: 単行本
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ZBC#46 [戦に勝つのは兵の強さ] - ルワンダ中央銀行総裁日記
課題図書
今回は2017年6月24日に開催されたZenport Book Club #46の図書の中からルワンダ中央銀行総裁日記をご紹介致します。
- 作者: 服部正也
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/11/01
- メディア: 新書
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要旨
服部正也氏は、IMFの途上国支援の一環として、1965年からの6年間、ルワンダ中央銀行総裁を勤めた人物である。彼がルワンダで行った様々な政策は、その後10年程度の間、ルワンダ経済の順調な発展を後押しした。
彼の在任時の業績は主に二つある。一つは通貨改革だ。氏は先ず、二重為替相場制度を廃止し、ルワンダ・フランの対外価値を自由相場並みに切り下げて一本化した。また並行して、外国人優遇税制を廃止し、財政再建を行った。
彼のもう一つの業績は、農業をルワンダ経済の持続的発展の基礎におき、ルワンダ人商人の育成を重視したことだ。彼はその一環として、貯蓄金庫を通じたコーヒー集荷資金への融資、市中銀行からのルワンダ商人向けの運転資金融資など、中央銀行総裁の枠を超えた試みを多数行った。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
服部氏のマネジメントは、現場を知り、彼らが自発的に行動する環境を作るということに終始している。これは後藤新平の台湾統治にも通じるものだ。先人の業績にはマネジメントの要諦が詰まっている。
服部氏は組織の盛衰について次のような見解を述べている。すなわち「戦に勝つのは兵の強さであり、戦に負けるのは将の弱さである」と。これはつまり、トップが無能でも、現場の人間が一生懸命働けば、組織は発展できるということだ。この言葉を真として捉えるならば、トップが最も時間を割くべきは、自らの能力向上ではなく、現場の人間が一生懸命働くための環境作りなのかもしれない。
まとめ
今回は、服部正也氏のルワンダでの活躍について説いたルワンダ中央銀行総裁日記を取り上げました。
次回はZBC#47で発表された胡椒 暴虐の世界史をご紹介します。
Zenport Book Club #46:その他の発表図書、関連図書
- 作者: ロメオダレール,Rom´eo Dallaire,金田耕一
- 出版社/メーカー: 風行社
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: 単行本
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- 作者: 岩田規久男
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/07/22
- メディア: 新書
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- 作者: 北岡伸一
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1988/06/25
- メディア: 新書
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ZBC#45 [180万年前の火遊び] - 火の賜物
課題図書
今回は2017年6月21日に開催されたZenport Book Club #45の図書の中から火の賜物をご紹介致します。
- 作者: リチャード・ランガム,依田卓巳
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2010/03/26
- メディア: 単行本
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火
180万年前に始めて火を利用したヒトは、その恩恵により大いなる進化を遂げていくことになります。
身体の変化、社会性の獲得。
火の習得によって、ヒトは知恵ある者になっていったのです。
しかしなぜ、火が進化を促せたのか?
その鍵を握るのが料理。
料理?
要旨を見ていきましょう。
要旨
火の利用はヒト属の進化のきっかけとなった。180万年前に起きたホモ・ハビリスからホモ・エレクトスへの進化は、火の利用が契機だと考えられている。
火の利用、それに付随する料理は、食物に2つの変化を引き起こした。一つは食物から摂取できるエネルギーの増加、もう一つは消化に必要とするエネルギーの減少である。これはヒトの身体に2つの影響を与えた。一つは歯、顎、腸などの消化に必要な部位の小型化、もう一つは余剰エネルギーを脳に回せたことによる脳の肥大化である。
火を用いた料理は、ヒトの社会性にも影響を与えた。食物の準備が、採集と料理という2つの工程を踏まえることになった結果、男性は採集、女性は料理という男女間での分業制を生んだのだ。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
火の利用とは即ち、処理のアウトソースである。人体でやらなくて良い処理を外部に託す。企業が業務を他社にアウトソースするのと本質は同じだ。これは、個や集団が進化するためには、如何に外部のリソースを効率よく利用できるかが鍵となることを示している
火が男女間の分業制を生んだという仮説は大変興味深い。これは即ち、新しい技術の出現が、集団内における分業制を生むということだ。コンテナやITの出現が地域間での分業制を生んだのと構造は似ている。
まとめ
今回は、火がヒトの進化に及ぼした影響について説いた火の賜物を取り上げました。
次回はZBC#46で発表されたルワンダ中央銀行総裁日記をご紹介します。
Zenport Book Club #45:その他の発表図書、関連図書
- 作者: ダニエル・E・リーバーマン,塩原通緒
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/09/18
- メディア: 単行本
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- 作者: 島泰三
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2003/08/01
- メディア: 新書
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繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マット・リドレー,大田直子,鍛原多惠子,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/07/10
- メディア: 文庫
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ZBC#44 [夢無きアメリカ] - ヒルビリーエレジー
課題図書
今回は2017年6月17日に開催されたZenport Book Club #44の図書の中からヒルビリーエレジーをご紹介致します。
ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち
- 作者: J.D.ヴァンス,関根光宏,山田文
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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貧困
現在アメリカをこの二文字が覆っています。
これは一般的に、黒人やヒスパニックの問題と考えられていますが、実は多くの忘れ去られた白人の問題でもあります。
彼らは未来に希望を持てないまま、貧困の中で喘いでいます。
その姿はアメリカンドリームという言葉とは似ても似つかないものです。
彼らはなぜ、希望無き世界に佇むのでしょうか?
また彼らをそこから救い出す方法は無いのでしょうか?
要旨を見ていきましょう。
要旨
本書の著者であるJ.D.ヴァンスは、ラストベルト(錆びついた工業地帯)の一角であるオハイオ州の出身である。この地域には、多くの貧困に喘ぐ白人、通称ヒルビリー(田舎者)が住んでいる。彼らの生活には、精神的/物質的なセーフティネットが著しく欠けており、その事実が彼らから未来への希望を奪っている。
この本が描き出す白人の姿は、2016年の選挙でトランプ現大統領を支持した人物像と重なる。ニューヨークやシリコンバレーからは見えない、貧しい白人達の声なき声が、アメリカの国民国家への揺り戻しを起こしたのだ。しかしこの選択が彼らのような貧しい白人を救うかは分からない。
貧困に喘ぐ白人の生活環境を変えるには、行政で出来ることには限界がある。この点については彼らの自助努力に頼るしかない。しかしそれを促すことは出来る。一つは彼らの親類が心理的/物質的なサポートを行うことによって。もう一つは彼らに目指すべきロールモデルを与えることによって。目指すべき目標と、そのために頑張れる環境があれば、人は上を向いて行きていけるのだ。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
貧困はルサンチマンを産み、国家主義、民族主義を産みだす。その行き着く先はファシズムであり、テロリズムだ。この帰結は負の遺産しか産まないことは歴史が証明している。今我々は共に貧困に立ち向かい、断絶しかけている世界を繋ぎ止めねばならないだろう。
個の自立を促すには、周りの支えと目指すべきロールモデルが必要だという示唆は凄く腹落ちする。私自身も結局のところ、周りの支えと、多くのロールモデルの方々のおかげで、これまで道を踏み外さずやってこれている。今度は私が誰かを支え、誰かのロールモデルにならねばと強く思う。
まとめ
今回は、繁栄から取り残された白人について説いたヒルビリーエレジーを取り上げました。
次回はZBC#45で発表された火の賜物をご紹介します。
Zenport Book Club #44:その他の発表図書、関連図書
ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)
- 作者: 金成隆一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2017/02/04
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繁栄からこぼれ落ちたもうひとつのアメリカ―――果てしない貧困と闘う「ふつう」の人たちの30年の記録
- 作者: デ-ル・マハリッジ,マイケル・ウィリアムソン,ラッセル秀子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2013/09/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: ダニエル・シュルマン,古村治彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/12/09
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ZBC#43 [砂漠の空中庭園] - イラク建国
課題図書
今回は2017年6月10日に開催されたZenport Book Club #43の図書の中からイラク建国をご紹介致します。
- 作者: 阿部重夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2004/04/25
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かつて人類最古の文明を誇ったこの地も、現在は終わりの見えない混乱の中にあります。
これらの混乱の種はいつ蒔かれたのでしょうか?
この問いに対し著者は、イラク建国時の歪みが原因であると説きます。
その歪みとはどんなものだったのでしょうか?
要旨を見ていきましょう。
要旨
イラクは第一次世界大戦後のオスマン・トルコ解体時に出来た人口国家である。イラク建国は、英国などの戦勝国の身勝手な思惑によって行われた。この際に生じた歪みは、現代まで続くイラク混乱の原因となっている。
歪みの原因の一つは統治体制だ。英国は、統治者として多数派のシーア派ではなくスンニ派を選んだ。またスンニ派出身の国王として、元シリア国王であるハーシム家出身のファイサルを頂いた。この少数派であり、かつ国外から連れてきた者を統治者とした体制は、国内に大きな軋轢を生んだ。
歪みのもう一つの原因は国境線の引き方だ。前述の通り、イラクは多数派のシーア派が被支配民となっている。英国は彼らシーア派の影響力を削ぐため、第三勢力となる北方のクルド人も囲う形で国境線を引いた。これは現代まで続く中東混乱の1つ、クルド人問題の遠因となっている。
イラク混乱は、部族性の強いこのメソポタミアの地に、国民国家の仕組みを無理やり導入したことにも起因する。この歪みは後に、王政崩壊、サダム・フセインによる軍事独裁政権の誕生、イラク戦争、ISの登場という度重なる混乱を引き起こすことと成る。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
メソポタミア文明という人類最古の文明が栄えた、かつて肥沃な三日月地帯であったこの地が、今や混乱の地と化しているのは大変嘆かわしい。
国造りは大変難しいものだと思い知らされる。国には、地縁、部族、宗教の三点を考慮した国境線、それと腐敗しない統治体制が必要だ。しかしこれは言うは易く行うは難しである。その点、島国、単一民族、天皇という3つの特徴を有していた日本は、前者の問題に気を揉む必要がなく、後者の問題だけに集中できた。それが、明治期の迅速な近代国家構築に繋がったのだと思う。
少数民族が多数派を支配するという国家体制は、悲劇的な結末を迎えることが多い。イラク、ルワンダがその例だ。グローバル化する世界で多くの民族が交わる国家においては、統治体制とはどうあるべきかを考える際の思考材料にしたい。
まとめ
今回は、人口国家イラクの成り立ちについて説いたイラク建国を取り上げました。
次回はZBC#44で発表されたヒルビリーエレジーをご紹介します。
Zenport Book Club #43:その他の発表図書、関連図書
- 作者: スコット・アンダーソン,山村宜子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2016/09/29
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- 作者: ジャネットウォラック,Janet Wallach,内田優香
- 出版社/メーカー: ソニーマガジンズ
- 発売日: 2006/03
- メディア: 単行本
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- 作者: 宮田律
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/06
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ZBC#42 [シーパワーと国家] - マハン海上権力史論
課題図書
今回は2017年6月3日に開催されたZenport Book Club #42の図書の中からマハン海上権力史論をご紹介致します。
- 作者: アルフレッド・T・マハン,北村謙一
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2008/06/16
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シーパワー
19世紀末期、アメリカ海軍の父「マハン」が提唱したこの概念は、世界各国に大きな影響を与えました。
日露戦争の英雄である秋山真之もマハンに師事し、この考えを日本海軍の戦略に大いに活かしたと言われています。
このシーパワーは、マッキンダーが唱えたランドパワーと対をなし、今でも地政学の核を為す教えてとして広く学ばれています。
ではこのシーパワーとは具体的にどういう概念なのでしょうか?
要旨を見ていきましょう。
要旨
シーパワーとは武力、経済力によって海洋を支配する能力である。18世紀以降、多大なるシーパワーを持つ海洋国家は大きく繁栄した。イギリス、オランダ、フランス、スペインなどがその例である。
シーパワーの具体的な因子として、a)海軍、b)商船隊、c)根拠地が挙げられる。これらは、1)生産、2)海運、3)植民地という、海洋国を形作る3つの循環する要素を支える役割を持つ。※根拠地とは、戦略的要地、軍事的な優越地点を指す。
シーパワーに影響を及ぼす一般条件として、1)地理的位置、2)自然的形態、3)領土の範囲、4)人口、5)国民性、6)政府の性格の6点が挙げられる。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
シーパワー理論は現在のサプライチェーン構築にも大きく活用できるだろう。海軍、商船隊はそのままとして、根拠地はロジスティクスにおけるFCと言ったところだろうか。
まだインターネットが無かった時代に、ハンニバルの時勢にまで遡り、戦略論を紐解いたマハンの調査力、洞察力には尊敬の念を禁じ得ない。
冷戦時のソ連海軍、現代の中国海軍は、このマハンの教えに忠実に従っているなと感じる。特に中国海軍は「米中もし戦わば」にて、孫氏の教えも積極的に取り入れる姿が描かれていた。行動の是非はともかく、その先人の教えを忠実に実行する能力は流石である。
まとめ
今回は、国家が戦争を始めるきっかけについて説いたマハン海上権力史論を取り上げました。
次回はZBC#43で発表されたイラク建国をご紹介します。
Zenport Book Club #42:その他の発表図書、関連図書
- 作者: B・H・リデルハート,市川良一
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2010/04/23
- メディア: 単行本
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- 作者: ハルフォード・ジョンマッキンダー,Halford John Mackinder,曽村保信
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2008/09/27
- メディア: 単行本
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- 作者: ニコラス・スパイクマン,渡邉公太
- 出版社/メーカー: 芙蓉書房出版
- 発売日: 2017/01/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: ピーターナヴァロ,赤根洋子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/11/29
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Zenport Book Club 参加者募集
Zenport Book Clubは皆様のご参加をお待ちしております。
- 自分では気付けなかった良本に出会いたい方
- 読書のアウトプットの場がほしい方
- 他者の要約を通して効率的に書籍の情報をインプットしたい方
上記に該当する方は是非とも一度足を運んでみてください。
参加申込みはコンパスから。
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