ZBC#60 [フランス革命のきっかけ] - 帳簿の世界史

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課題図書

今回は2017年9月6日に開催されたZenport Book Club #60の図書の中から帳簿の世界史をご紹介致します。

帳簿の世界史

帳簿の世界史

帳簿

古くから商業で使われていたこの手法は、14世紀のイタリアにおいて非連続的な変化を起こします。

すなわち、複式簿記の誕生です。

かの有名なブルボン朝も、この複式簿記によって隆盛を極めた一方、その杜撰な扱いによって、フランス革命によって打倒されたと言われています。

帳簿、そして複式簿記が作りだした人類史。その一端を覗いてみましょう。

要旨

  • 帳簿の歴史は、そのまま人類の文明の歴史である。メソポタミア文明の遺産には、既に帳簿の記録を垣間見ることが出来る。その後、古代ギリシャ古代ローマでも帳簿は広く用いられた。しかしそれらは往々にして不正に満ちていた。しかし、この状況を打破するあるイノベーションが、中世イタリアで生まれた。それは複式簿記である。これは当時、イタリア商人が共同出資方式を用いて貿易を行っていたことに端を発する。

  • フィレンツェのコジモ・デ・メディチは、会計技術を駆使し自身の銀行の支店を欧州の主要都市へ発展させることで、欧州一の富豪となった。しかしメディチ家ルネサンス期に没落する。その原因は思想と商業の対立であった。当時流行していたプラトン思想は、芸術や文化を重視し、商業を忌避した。彼の後継者も同様に芸術に傾倒し監査を疎かにした。その結果、メディチ家は没落することになった。

  • 帳簿は王国の発展と衰退を招いた原因である。ルイ14世統治下のフランスはコルベールという宰相のもと、会計技術を国家運営に取り入れ、国家を発展させた。しかしコルベールの死後以降、会計技術を不正を明らかにするものと気づいたルイ14世は、それを遠ざけることになる。これが後のフランス革命の要因となる。

  • 帳簿は商業国家の栄枯盛衰を招いた。オランダ、イギリス、アメリカなどのヘゲモニー国家が覇権を握れたのは、会計技術を政権運営に上手く取り入れたからである。一方で皮肉なことに、彼らの衰退を招いた原因は、不適切に会計を行ったことであった。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

紙が生まれ、アラビア数字が生まれ、数学が生まれ、複式簿記が生まれ、銀行が生まれ、株式会社が生まれた。後に、ビットコインが生まれた。人の渇望と技術の進歩。それが推し進める時代の流れと文明の発展。私達が今立つこの場所は、点では無く線であることがよく分かる。人・技術・地政学が織りなす時代。人類史という線の有り様が、朧気ながら浮かび上がってきた気がする。


帳簿の裏に潜む栄枯盛衰の歴史は、テクノロジーを活かすも殺すも扱うもの次第であることを表している。火、ダイナマイト、核分裂と同じだ。人の性は巡るが、技術は進歩する。結果的に、変わっていないように見えて、実は人類史は前に進んでいる。

まとめ

今回は、帳簿の歴史について説いた帳簿の世界史を取り上げました。

次回はZBC#61で発表されたTEAM OF TEAMSをご紹介します。

Zenport Book Club #60:その他の発表図書、関連図書

紙の世界史: PAPER 歴史に突き動かされた技術

紙の世界史: PAPER 歴史に突き動かされた技術

ルネサンスの歴史(上) - 黄金世紀のイタリア (中公文庫)

ルネサンスの歴史(上) - 黄金世紀のイタリア (中公文庫)

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ZBC#59 [世界は廻る] - グローバル経済の誕生

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課題図書

今回は2017年9月2日に開催されたZenport Book Club #59の図書の中からグローバル経済の誕生をご紹介致します。

グローバル経済の誕生: 貿易が作り変えたこの世界 (単行本)

グローバル経済の誕生: 貿易が作り変えたこの世界 (単行本)

グローバル経済

この言葉は現代特有のモノと思われがちですが、実は600年以上もの歴史を有する言葉です。

その歴史を精緻に紐解いた、本書の著者であるケネス・ポメランツ教授は、グローバル経済をある1つの言葉で表します。

それは暴力

彼は、グローバル経済の進展においては、常に暴力を振るう者が富を手に入れてきたと断じます。

では、暴力はどのようにしてグローバル経済の中で影響力を誇ってきたのでしょうか?

その一端を覗いてみましょう。

要旨

  • 経済のグローバル化とは、現代特有の非連続的変化ではない。それは1400年代以来、脈々と続く漸次的変化である。

  • グローバル経済において大きな役割を担ってきたもの、それは暴力である。西欧がグローバル経済において覇権を握れたのは、疫病を用いて新大陸の原住民を死に至らしめたからだ。また、アフリカ大陸出身の大量の奴隷を、新大陸において労働力として酷使したからでもある。グローバル経済においては、モラルの有無は関係なく、暴力を振るうものが果実を手にしてきた。

  • グローバル経済を進展させたのはドラッグ的商品であった。薬として用いられたチョコレート、老若男女を虜にする砂糖、またアヘンなどのドラッグそのものが、グローバル経済を大きく発展させた。

  • 日本の開国の歴史も、世界史の文脈から見ると大変興味深く浮かび上がる。そのキッカケはアメリカでのゴールドラッシュだった。西海岸に金が出るという噂が、いまだ未開の場所であったこの地への資本の集積を実現させた。その資本力はそのまま、太平洋諸国への進出を促す。その動きはハワイ併合へとつながり、後の黒船来日、日米和親条約へと連なっていく。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

グローバル経済の歴史においては、暴力が富を手にする最良の手段だったという事実は残酷なものだ。ただこれは法の概念、人権の概念が不十分だったからだろう。現在においては、アングラな世界を除き、暴力が占める割合は些末なものになっていると考えられる。人類の残酷さと、少しばかりの希望を垣間見れる事象である。


情報、カネ、モノ。IT化によって、グローバル経済は最初の2つを場所の縛りから開放した。しかし未だにモノの移動のみは、場所の縛りを免れていない。私はここにグローバル経済の完成の糸口があるように思える。

まとめ

今回は、グローバル経済の誕生について説いたグローバル経済の誕生を取り上げました。

次回はZBC#60で発表された帳簿の世界史をご紹介します。

Zenport Book Club #59:その他の発表図書、関連図書

暴力の人類史 上

暴力の人類史 上

新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)

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ZBC#58 [記録の誕生] - 紙の世界史

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課題図書

今回は2017年8月26日に開催されたZenport Book Club #58の図書の中から紙の世界史をご紹介致します。

紙の世界史: PAPER 歴史に突き動かされた技術

紙の世界史: PAPER 歴史に突き動かされた技術

人類を他の生物と分かつ性質の1つ、それは記録

私たちはこの記録を通して、文字通り時空を超えて、意思疎通を行うことが出来ます。

しかし、この記録という行為を、なぜ可能になったのでしょうか?

それは他ならぬのおかげです。

この紙は、どのようにして生まれ、どうやって世界に広まっていったのでしょうか?

その歴史を紐解いてみましょう。

要旨

  • 紙は105年、中国出身の蔡倫によって初めて発明されたと言われてている。しかし実は、歴史上で紙を発明したのは彼だけではない。時期は異なれど、紙は世界各地で別々に発明されてきた。これは人類の、記録したいという普遍的な要望によるものだと考えられる。

  • 紙が生まれる以前、人類は書写媒体として、石、羊皮紙、パピルス、タパ等を用いてきた。しかしこれらはセルロースで出来た紙と比較し、ある1点において大きく劣っていた。それは印刷の容易さである。紙は印刷を大変簡単に行うことが出来た。これが、紙が主要な記録媒体としての地位を確立した1つの理由である。

  • 紙と印刷は複数の要請によって、世界に広まった。その1つが宗教である。例えば仏教は、それを書き写すこと自体が功徳を積むための行為であると考えられていたため、書写が広く行われた。またイスラム教では、コーランの教えを口承を超えて世界に広めるため、積極的に写本が行われた。

  • 紙は経済をも大きく進歩させた。紙幣の発明は言うまでもなく、紙は会計(帳簿)という概念も生み出した。それだけでなく、紙は数学自体を普及、発展させた要因でもある。アラビア数字は、紙によってアラブからヨーロッパに持ちこまれた。これがヨーロッパの地における数学の発展に大きく寄与した。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

本書では、「テクノロジーは促進策にすぎない。変わるのは社会であり、社会の変化が新たな需要を生む。それが、テクノロジーが導入される理由である」という立場を取る。私はこの意見には賛成である。世界を変えるのはテクノロジーではない。それはいつも、こうありたいという人々、その集合体である社会の、声なき願いだ。しかしだからといって、需要が顕在化していないテクノロジーを生み出すことは無駄ではない。需要が顕在化したときに、既存のテクノロジーを組合せて、その需要を満たすことはままあるからである。


紙は、国民国家誕生の遠因にもなったと言える。紙によって人類は記録する術を手にいれ、時空を超えて言葉を共有出来るようになった。これが「同じ言語を共有する集団」としての国民国家を生み出したと考えられるからだ。その意味において、ナショナリズム、それに起因する戦争が、この一枚の紙によるというのは、少々奇怪であると共に面白くもある。

まとめ

今回は、紙の歴史を綴った紙の世界史を取り上げました。

次回はZBC#59で発表されたグローバル経済の誕生をご紹介します。

Zenport Book Club #58:その他の発表図書、関連図書

紙と人との歴史:世界を動かしたメディアの物語

紙と人との歴史:世界を動かしたメディアの物語

ルネサンスの歴史 (上) 黄金世紀のイタリア (中公文庫)

ルネサンスの歴史 (上) 黄金世紀のイタリア (中公文庫)

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

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ZBC#57 [終わりなき闘いの歴史] - がん 4000年の歴史

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課題図書

今回は2017年8月19日に開催されたZenport Book Club #57の図書の中からがん 4000年の歴史をご紹介致します。

がん‐4000年の歴史‐ 上 (ハヤカワ文庫NF)

がん‐4000年の歴史‐ 上 (ハヤカワ文庫NF)

数千年に及ぶ人類の文明の歴史。その過程で、私達は多くの病気を克服してきました。

ペスト、コレラ結核

かつて多くの人々を死に至らしめたこれらの病も、ついぞ医学の前に白旗を挙げたのです。

しかし今尚、人類を苦しめ続けるある怪物が、私達の前に鎮座しています。

その名はがん

古代エジプトの時代から存在が確認されていたこの病は、未だに解決の糸口を見せていません。

このがんに対して、人類はどう対峙してきたのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • がんは古代エジプトの時代からその存在は知られていたが、初めてそれに名前が与えられたのは古代ギリシャ時代、医聖ヒポクラテスによってであった。

  • がんは長らく体液の異常により起こるものだと考えられていた。がんの正体が明らかになったのは20世紀という実に最近のことである。その正体は、遺伝子の突然変異の蓄積であった。

  • 医学の歴史の中で、がんに対する多くの治療法が開発された。ウィリアム・ハルステッドはメスを用いた施術を生み出した。また、シドニー・ファーバーは化学療法を生み出した。

  • がんに対する予防方法も考えられた。その第一が禁煙であった。喫煙とガン発生の間に有意な相関が見られていたからだ。しかし、禁煙の動きを広めるには、タバコ業界という既得権益との戦いが待ち受けていた。

  • がんの歴史とは、それに立ち向かった医師の歴史だけではない。この叙事詩の本当の主役は、がんとの戦いの最前線に望んだ患者たちだった。彼らの勇気によって、人類はがんに対する武器を手に入れることができた。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

がんに挑む人類の歴史は、科学革命の構造で説かれた進化の形そのものだ。進歩派と守旧派の間で起こる混乱、それを経たパラダイム変換。がんの歴史とは、科学の歴史、ひいては人類の歴史の写し絵であることがよく分かる。


なぜがんというモノは生まれたのか。生命というものは、互いに系内では対立しながらも、系としては平衡を保ってきた。しかしがんの存在はその原則から逸脱する。そのような存在を、なぜ生命は生み出したのか。数の暴走をとめるための自己保存機構なのだろうか。この辺については折を見て研究してみたい

まとめ

今回は、がんの歴史を描いたがん 4000年の歴史を取り上げました。

次回はZBC#58で発表された紙の世界史をご紹介します。

Zenport Book Club #57:その他の発表図書、関連図書

The Gene: An Intimate History

The Gene: An Intimate History

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

ゲノムが語る23の物語

ゲノムが語る23の物語

科学革命の構造

科学革命の構造

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ZBC#56 [康熙帝以来の名君] - 現代中国の父 鄧小平

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課題図書

今回は2017年8月12日に開催されたZenport Book Club #56の図書の中から現代中国の父 鄧小平をご紹介致します。

現代中国の父 トウ小平(上)

現代中国の父 トウ小平(上)

文革以降、中国の最高指導者として国を率いた鄧小平は次の言葉を残しています。

不管黑猫白猫,捉到老鼠就是好猫 (白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である)

この言葉は、イデオロギーではなく、経済発展を優先した彼の考えを端的に表しています。

現代中国、その急激な経済成長は、彼がいなければ無かったと言っても過言ではありません。

その点において、彼は現代中国の父と言っても良いでしょう。

そんな彼の人生とはどのようなものだったのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 鄧小平は清の時代であった1904年、四川省に生まれた。彼は16歳のときフランス留学に出て、その地で中国共産党に入党する。その後モスクワを経て帰国し、毛沢東の下でゲリラ活動を開始する。彼はその後、中華人民共和国設立、大躍進政策に至るまで、毛沢東の忠臣として活躍する。

  • 大躍進政策後、毛沢東との対立が深まった鄧小平は、文革時に苦杯をなめる。劉少奇と共に走資派の重要人物として毛沢東サイドから批判された彼は、江西省南昌に追放される。またこの時、鄧とその家族は、紅衛兵から執拗な自己批判を迫られる。その結果、息子である鄧樸方は下半身不随となる。その点において、文革は彼にとって、決して心穏やかとは言えない経験だった。しかし文革後、周恩来の手助けもあり、彼は党内での名誉回復に成功する

  • 文革の終焉、更に毛沢東が没した中国において、彼は華国鋒を退け最高指導者の地位に就く。名実共に中国のトップに立った彼は、中国国民を豊かにさせることが国家の最重要事項であるとの考えに至る。そのため、共産主義というイデオロギーを建前上は維持しつつ、改革開放、市場経済の導入を進めた。この指針が功を奏し、中国は1980年代以降、急激な経済成長を達成することになる。

  • 一方、彼の実績として後世の評価が定まらないのが、六四天安門事件に対する対応である。彼は民主化を求め天安門広場に集まった群衆に対し、武力弾圧に踏み切った。彼は、今の中国には中央で権力を行使し成長を牽引する共産党の存在が必要であり、民主化に踏み切れば、中国はまた混乱に陥ると考えていた。自由と繁栄を天秤にかけた際、彼は迷わず国民の繁栄を選択したのだ。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

鄧小平は、中国の歴史上、国家への貢献という点で言えば、名君と誉れ高い唐の太宗、清の康熙帝に匹敵する。しかも彼らと同じように、王朝の始祖では無いという部分も共通する。国家という枠組みでは、組織の繁栄を担うのは始祖とは限らないということは面白い事象である。


鄧小平のリーダーの資質の一つとして、解くべき本質的な問題を見定める能力が挙げられる。リーダーとは常に様々な環境の変化にさらされる。また同時に、多くの重要らしき問題の誘惑を受ける。しかしリーダーが為すべきことは、解くべき問題を精査し、その解決のみに組織のリソースを使うことである。鄧小平にとっての問題とは、いかに国民を豊かにさせるかであった。彼の行動の一つ一つには、リーダーの要諦が詰まっている。


革命と創業というのは、似て非なるものである。革命の先の、創業のビジョンが無いばかりに、その後に混乱だけが残ることは多々ある。アラブの春などはその典型だ。その点において、鄧小平を指導者として抱けたことは、中国の幸いと言っていい。またこれは、日本にとっても同じことが言える。直近で起こった日本での革命といえば、明治維新、さらに遡ると徳川家康による封建制の確立が挙げられる。そのどちらも、大久保利通等の元勲、徳川家康という、創業のビジョンある指導者を抱けたからこそ、後の発展があった。創業のビジョンある革命家の抱き方、これは引き続き1つの考察テーマとしたい。 余談だが、戦国時代において天下統一後のビジョンがあった大名は織田信長徳川家康だけだったと言われている。その点で言うと、偶然か必然かは分からないが、徳川家康に統一された日本は幸せだったと言える。


本書では鄧小平以外にも、毛沢東を筆頭に数々の現代中国の権力者等の姿が描かれている。その中でも、私に一番の魅力を感じさせたのは周恩来だ。彼の誠実さ、知性、包容力には尊敬を禁じ得ない。彼の姿は、太宗が貞観政要に著した君主の姿に忠実に沿う。リーダーとしてかくあらねばと思わされる次第である。 余談だが、現在中国の総理を務める李克強の姿も、周恩来のそれに重なる。また共に最高指導者ではなくNo2であることも似ている。太宗的リーダーをトップではなく、No2に置くというのが現代中国の組織体制の潮流なのかもしれない。

まとめ

今回は、鄧小平の半生を描いた現代中国の父 鄧小平を取り上げました。

次回はZBC#57で発表されたがん 4000年の歴史をご紹介します。

Zenport Book Club #56:その他の発表図書、関連図書

毛沢東の大飢饉  史上最も悲惨で破壊的な人災 1958?1962

毛沢東の大飢饉 史上最も悲惨で破壊的な人災 1958?1962

周恩来秘録〈上〉―党機密文書は語る (文春文庫)

周恩来秘録〈上〉―党機密文書は語る (文春文庫)

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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ZBC#55 [ビリオンダラー・スパイ] - 最高機密エージェント

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課題図書

今回は2017年8月5日に開催されたZenport Book Club #55の図書の中から最高機密エージェントをご紹介致します。

最高機密エージェント: CIAモスクワ諜報戦

最高機密エージェント: CIAモスクワ諜報戦

策謀、密告、裏切り。

東西で情報戦が繰り広げられた1980年代のモスクワの地で、自分の信念に従い、スパイの道を歩んだ者がいました。

その名はトルカチェフ、通称「ビリオンダラー・スパイ」と呼ばれたCIAのスパイです。

CIAに情報を提供し続けた彼の素顔とはどんなものだったのでしょうか?

そして彼を突き動かした信念とは何だったのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 1980年代の冷戦時、ソ連の最高機密をアメリカCIAに提供し続けた男がいた。その名はアドルフ・トルカチェフ、通称「ビリオンダラー・スパイ」と呼ばれた人物である。

  • トルカチェフはソ連の軍用レーダーに関わる研究所のエンジニアであり、内部の情報にアクセスする権利を得ていた。彼はこれらの情報を、KGBに見つからないように細心の注意を払って、米国のCIAに提供し続けた。

  • トルカチェフがスパイになった理由、それは体制への反発だった。1974年のソルジェニーツィンの国外追放などが、彼の祖国に対する忠誠を損なわせた。これが契機となり、彼は自らスパイとなり、CIAと接触した。

  • アメリカに最高機密を提供し続けた彼であったが、1985年に終わりの時を迎える。CIAの担当者との会合をKGBに逮捕されてしまう。この逮捕を裏で導いた者もまた、CIA内部に潜り込んでいたスパイであった。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

パンに満ちた世界における、人の行動原理とは何なのか。CIA職員が愛国心のもとに身の危険をおかす一方、トルカチェフは愛国心の枷を外し、自らの信念のために危険を冒した。行動原理についてはマズロー欲求5段階説が有名だが、私にはこの枠にとらわれない別の行動原理が、人間にはあるように思える。


誰のことも100%信用できない状況で情報戦を行うには、組織設計が重要になる。スパイが入り込んでもあぶり出す組織設計、スパイが入り込んでも崩壊を防ぐ組織設計。工業設計でのフェイルセーフの考えが、組織設計にも必要になるのだろう。スパイの有無という文脈ではないが、このフェイルセーフの考えは、一般的な組織設計にも当てはまる。その観点で言うと私は、アメリカ合衆国の統治組織は大変すぐれたものだと思う。素早い意思決定と、権力暴走の抑制の両者を、これほど高い水準で備えた統治組織は、歴史上他に存在しない。これを実現したワシントン等の足跡は、機を見て深く研究したい。

まとめ

今回は、CIAに貢献したソ連のスパイ、トルカチェフを描いた最高機密エージェントを取り上げました。

次回はZBC#56で発表された鄧小平をご紹介します。

Zenport Book Club #55:その他の発表図書、関連図書

キム・フィルビー - かくも親密な裏切り

キム・フィルビー - かくも親密な裏切り

死神の報復(上):レーガンとゴルバチョフの軍拡競争

死神の報復(上):レーガンとゴルバチョフの軍拡競争

裏切られた革命 (岩波文庫)

裏切られた革命 (岩波文庫)

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ZBC#54 [まだ夜が、暗闇だった頃] - 失われた夜の歴史

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課題図書

今回は2017年7月29日に開催されたZenport Book Club #54の図書の中から失われた夜の歴史をご紹介致します。

失われた夜の歴史

失われた夜の歴史

かつて産業革命が起こるまで、夜は暗闇が支配する世界でした。

そして夜は、光が支配する昼とは異なる文化を持つ場所でもありました。

同じ人間たちが形成する社会であるにもかかわらず、夜は、昼とは全く違う顔をもつ世界だったのです。

その夜とはどんな世界だったのでしょうか?

要旨を見ていきましょう。

要旨

  • 産業革命到来以前の西洋社会、その時代の夜は、独自の文化を持つ昼とは別の世界だった。社交性、労働、道徳的習慣などが、昼のそれとは大きく異なっていたのだ。

  • 夜は危険な場所であった。盗賊、追剥が跋扈し、外出や労働はほとんど困難であった。また夜は魔女や妖精が現れる時間だとも考えられていた。

  • 一方で、夜は解放の時でもあった。昼には出来ない秘密の会合や、放縦や陶酔が許される時間だった。

  • 当時、権力者にとって夜は自身の権威を高めるために必要なものだった。夜の闇が深く危険であるほど、昼を支配する神官や王族の権威は、より増すと考えられたからだ。

  • 夜が暗闇だった頃、睡眠の形式も現在と異なっていた。当時は、夜に一度起きてはまた寝る分割睡眠が常態だった。第1の眠りと第2の眠りの間に、彼らは祈り、朝ご飯の支度、また愛の情事などを行っていた。

参加者の見解

本書に対し参加者からは次のような意見が出されました

技術の発達が、人の時間の使い方を変えたという観点から見ると、夜の消失も一種の分業、革命と言って良いだろう。


夜の心理状態の関係性には大変興味がある。夜になると心理状態が危機回避の方に触れるのは自身の経験からも明らかだと思う。なぜ人間はそのように進化したのかについて、深く掘り下げたい。


夜という存在は、人間を含む生物全体の進化にも大きな影響を与えたことは、想像に難くない。夜がなければ、繁栄する種は異なったはずだ。そもそも、夜という存在がなければ、睡眠という行為もなかったかもしれない。この、生物と夜と睡眠の関係については、時間があればもう少し調べてみたい。

まとめ

今回は、暗闇だった頃の夜について綴った失われた夜の歴史を取り上げました。

次回はZBC#55で発表された最高機密エージェントをご紹介します。

Zenport Book Club #54:その他の発表図書、関連図書

暴力の人類史 上

暴力の人類史 上

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