ZBC#55 [ビリオンダラー・スパイ] - 最高機密エージェント
課題図書
今回は2017年8月5日に開催されたZenport Book Club #55の図書の中から最高機密エージェントをご紹介致します。
- 作者: デイヴィッド・E.ホフマン,David E. Hoffman,花田知恵
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2016/07/25
- メディア: 単行本
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策謀、密告、裏切り。
東西で情報戦が繰り広げられた1980年代のモスクワの地で、自分の信念に従い、スパイの道を歩んだ者がいました。
その名はトルカチェフ、通称「ビリオンダラー・スパイ」と呼ばれたCIAのスパイです。
CIAに情報を提供し続けた彼の素顔とはどんなものだったのでしょうか?
そして彼を突き動かした信念とは何だったのでしょうか?
要旨を見ていきましょう。
要旨
1980年代の冷戦時、ソ連の最高機密をアメリカCIAに提供し続けた男がいた。その名はアドルフ・トルカチェフ、通称「ビリオンダラー・スパイ」と呼ばれた人物である。
トルカチェフはソ連の軍用レーダーに関わる研究所のエンジニアであり、内部の情報にアクセスする権利を得ていた。彼はこれらの情報を、KGBに見つからないように細心の注意を払って、米国のCIAに提供し続けた。
トルカチェフがスパイになった理由、それは体制への反発だった。1974年のソルジェニーツィンの国外追放などが、彼の祖国に対する忠誠を損なわせた。これが契機となり、彼は自らスパイとなり、CIAと接触した。
アメリカに最高機密を提供し続けた彼であったが、1985年に終わりの時を迎える。CIAの担当者との会合をKGBに逮捕されてしまう。この逮捕を裏で導いた者もまた、CIA内部に潜り込んでいたスパイであった。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
パンに満ちた世界における、人の行動原理とは何なのか。CIA職員が愛国心のもとに身の危険をおかす一方、トルカチェフは愛国心の枷を外し、自らの信念のために危険を冒した。行動原理についてはマズローの欲求5段階説が有名だが、私にはこの枠にとらわれない別の行動原理が、人間にはあるように思える。
誰のことも100%信用できない状況で情報戦を行うには、組織設計が重要になる。スパイが入り込んでもあぶり出す組織設計、スパイが入り込んでも崩壊を防ぐ組織設計。工業設計でのフェイルセーフの考えが、組織設計にも必要になるのだろう。スパイの有無という文脈ではないが、このフェイルセーフの考えは、一般的な組織設計にも当てはまる。その観点で言うと私は、アメリカ合衆国の統治組織は大変すぐれたものだと思う。素早い意思決定と、権力暴走の抑制の両者を、これほど高い水準で備えた統治組織は、歴史上他に存在しない。これを実現したワシントン等の足跡は、機を見て深く研究したい。
まとめ
今回は、CIAに貢献したソ連のスパイ、トルカチェフを描いた最高機密エージェントを取り上げました。
次回はZBC#56で発表された鄧小平をご紹介します。
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