SBC#33 [近代世界は1つの巨大な生き物?] - 世界システム論講義
課題図書
今回は2017年4月26日に開催されたSendee Book Club #33の図書の中から世界システム論講義をご紹介致します。
世界システム論講義: ヨーロッパと近代世界 (ちくま学芸文庫)
- 作者: 川北稔
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2016/01/07
- メディア: 文庫
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なぜ世界は今日のようにあるのか?
この問いはいつも、私達の関心を惹きつけて離しません。
本書はこの問いを、世界システムという概念を用いて解き明かします
そこから導き出された答えとは?
要旨を見ていきましょう。
要旨
近代世界を1つの巨大な生き物のように考え、近代の世界史をその展開過程としてとらえる見方、それが世界システム論である。
近代の世界システムは、大航海時代の後半に、西ヨーロッパ諸国を中核とし、ラテンアメリカや東ヨーロッパを周辺として広まった。中核とは、世界規模での分業体制から余剰を吸収できる地域を指し、周辺とは、食料は原材料の生産に特化させられる地域を指す。今日、地球上のほぼ全ての地域はこのシステムに取り込まれている。
世界システムが西欧を中心として起こった理由は、この地域が政治的統合を欠いていたからだ。国民国家の集合でしかなかったため、競争が生まれ、軍事力、経済力の発展が進んだのだ。
世界システムは常に、中核が周辺を作り出す形で膨張した。植民地の拡がりも、その1つである。この周辺は、原材料、労働力を生み出す役割を担っただけではなく、中核における邪魔者を処分する役割も担った。
世界システムの歴史では、他の中核を圧倒する超大国、ヘゲモニー国家も存在した。17世紀中盤のオランダ、19世紀中盤のイギリス、第二次世界大戦後のアメリカの三カ国がそれに当たる。ヘゲモニー国家は全て、最初は工業、後に金融を中心産業とするという特徴がある。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました
西欧が政治的統合を欠いていたから軍事力、経済力の発展が進んだという仮説は、それだけでは、根拠に乏しい。これには、宗教改革からのプロテンスタティズムの起こり、その思想による資本主義の萌芽も説明されるべきだろう。
現代は世界システムにおいて1つの帰路にたっている。中国がヘゲモニーにならんと台頭しているからだ。非西欧国家のヘゲモニー化が、世界をどう変えるのか。いずれにしても、これまでの世界システムの延長線上に無い可能性は高いだろう。
まとめ
今回は、近代世界を1つのシステムとして考察した世界システム論講義を取り上げました。
次回はSBC#34で発表された自由からの逃走をご紹介します。
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近代世界システムI―農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立―
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- メディア: 文庫
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