SBC#12 【シリコンバレーはある独占企業が生み出した?】~ 世界の技術を支配する ベル研究所の興亡
課題図書
今回は2016年12月03日に開催されたSendee Book Club #12の図書の中から 世界の技術を支配する ベル研究所の興亡をご紹介致します。
シリコンバレーの伝説的な起業家であり、かつ著名な投資家でもあるピーター・ティール氏は著書ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるかにて次のような言葉を残しています。
「競争ではなく独占しろ」
この言葉はシリコンバレー、そして全世界の企業に向けたアドバイスであり聞いたことがある人も多いでしょう。
しかしながらこのシリコンバレー誕生の背景にある独占企業の存在があったことはあまり知られていません。
その企業の名前はAT&T。
このAT&Tはかつてベル研究所という研究所(注1)を有していました。この研究所はかつて人類の生活に無くてはならない基礎技術を多数生み出しただけでなく、あのシリコンバレー誕生の礎も築いたのです。
そこで今回は人類史上最も革新的だった研究所ベル研究所の歴史を覗いてみましょう。
要旨
ベル研究所は現代生活に必須である基礎技術、トランジスタ、情報理論などを生み出した。この実績は公的機関ではない研究所としては稀有のものである。その類まれな業績はノーベル賞受賞者が7組13人に上ることからも見て取れる。
ベル研究所がこのように研究分野、特に基礎研究で成果を残せたのはその運営体制による。ベル研究所は米国の独占企業であるAT&Tの企業内研究所として存在した。当時AT&Tは通信業界にて独占を築いていたため潤沢な資金を有していた。ベル研究所はその資金を用いることができたため、研究費、利益を出すことへの圧力、そのどちらにも悩む必要無く基礎研究に臨むことが出来たのである。
ベル研究所の偉大な歴史を形作ったのは、ショックレー、シャノン数多の天才たちである。ベル研究所が優れていた点は、そのような天才たちを働かせられる組織作りをしていたからに他ならない。
ベル研究所はかの有名なシリコンバレーの産みの親と言っても良い。ベル研究所でトランジスタを生み出したショックレーは、当所を退職後8人の研究員(俗に言う8人の反逆者)を連れてサンフランシスコのマウンテンビューに研究所を開設した。本研究所はショックレーの人格欠如により間もなく解散となるが、退所したロバート・ノイスとゴードン・ムーアはこの地でインテルを創業する。これが契機となりこの地は後にシリコンバレーと呼ばれるIT企業の一大集積地となる。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。
人格無き才覚とどう共存すべきなのか。本書に出てくるショックレーはトランジスタを生み出した言わば天才であるが、人格という点では著しく欠陥があった。そのような存在に対し我々凡人はどう対峙すれば良いのか。その方法として本書に出てくるベル研のトップ、マービン・ケリーの行動は参考になると言えよう。
能力はあるが人格に乏しい、そのような人とは多かれ少なかれ私達も仕事をしていれば出会うことがあるでしょう。その際には是非ともマービン・ケリーの対応を参考にしたいものです。
ベル研究所の建物の設計は人々が必然的に会って話すようになっていた。例えば研究室と事務用のオフィスは長い廊下で隔てられていたように。このような設計は前回紹介したピクサーにおいても行われていたものである。革新的な組織には人の交流が必須であり、かつそれは組織が率先して促さなければならないことを示す良い事例である。今後自社の組織作りでも真似していきたい。
前回のピクサーと同様に、革新的な組織の組織作りには学ぶところが多いですね。
参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?
まとめ
今回は世界の技術を支配する ベル研究所の興亡を取り上げました。 次回はSBC#13で発表されたバブル 日本迷走の原点をご紹介します。
Sendee Book Club #12:その他の発表図書、関連図書
Sendee Book Club参加者募集
Sendee Book Clubは皆様のご参加をお待ちしております。
自分では気付けなかった良本に出会いたい方
読書のアウトプットの場がほしい方
他者の要約を通して効率的に書籍の情報をインプットしたい方
上記に該当する方は是非とも一度足を運んでみてください。
参加申込みはコンパスから行ってください。
Sendee採用情報
株式会社Sendeeでは、知的好奇心が旺盛な人を探しています。 弊社に興味がある方は以下のページからご応募ください。
SBC#11 【野獣と赤ん坊】~ ピクサー流 創造するちから
課題図書
今回は2016年11月26日に開催されたSendee Book Club #11の図書の中から ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法をご紹介致します。
ドワンゴ会長の川上量生氏の著書コンテンツの秘密にて、映画監督である宮崎吾朗氏は次のようなことを語っています。「ジブリは1人の天才が創造的な作品を作っているが、ピクサーはそれを組織で作っている」。
ここで言う天才とは言わずもな宮﨑駿監督のことですが、ピクサーは天才に頼らずとも組織の力で素晴らしいコンテンツを生み出し続けているというのです。
ではピクサーはどうやって継続的に創造的な作品を生み出しているのでしょうか?
要旨
ピクサーが継続的にヒット作を生み出せる理由はその企業文化にある。それを一言で表すと率直さとなる。ここで言う率直さとは、立場、相手の心情にとらわれず、感じたことをそのまま伝えるということである。この率直さが徹底されているからこそ、ピクサーは素晴らしい作品を継続的に生み出すことが可能なのである。
ピクサーでは率直さを体現し作品の品質を上げるためにブレイントラストというイベントを定期的に開いている。これは製作中の作品についてスタッフが忌憚の無い意見を交換する場である。ここで作品の中で伝えたい価値、キャラクターの真理、背景を深掘りすることで、ピクサーの作品は醜いアヒルの子から美しい白鳥へと成長するのである。
ピクサーは企業は継続して利益を出すことも大事だが、独創的な作品を作ることも必要だと考えている。著者はこれを野獣と赤ん坊の両立と表現する。企業は成長するに従い利益という野獣に囚われ、独創的な作品、すなわち成功するか分からないが可能性を感じさせる赤ん坊を手放していく。しかしそれではユーザーは時間が経つに連れて離れてしまい企業の持続性は望めない。ピクサーはそのような事態を防ぐため、失敗を奨励しそこから積極的に学ぶ文化を醸成しているのだ。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。
ピクサーからは組織構築について多くのことを学べる。ピクサーでは社員全員が率直に意見を述べ、それでいて風通しの良い環境を保つために、数多くの施策を実践している。例えば会議のときには、席次をつくらないために円卓を用い、ネームプレートは置かない。このような無意識に訴える施策によって、ピクサーは文化を養っている。私も自分の組織で、人々の無意識に働きかける方法を用い、文化を養っていこう。
元サッカー日本代表監督の岡田武史氏も、選手の無意識に訴える指示を意図的に行っていると述べていました。文化の醸成、部下の育成にはこの無意識の扱い方が鍵を握るのかもしれません。 その他にも本書の中にはこれらの他にもピクサーが文化を養うために行っている施策が書かれています。詳しく知りたい方は本書を手にとってみてください。
ピクサーの驚くべき部分は質の優れた作品を生み出す文化を作ったことではなく、それを今でも維持していることだ。素晴らしいものを作ることはもちろん難しいが、それを維持することは更に難しい。組織とは腐りやすく、それを戻すことは作るより難しいからだ。これについては唐の太宗が記した貞観政要にも、創業に勝る守成の難しさとして書かれているので参考にされたし。
手に入れるより、維持する方が難しい。プロゲーマーの梅原大吾さんも「勝つことは簡単だが、勝ち続けることが難しい」と仰っていますが、根本は同じことを言っているのでしょう。ちなみにここで言及されている貞観政要は帝王学として長らく読まれてきた書籍です。かの徳川家康、北条政子も読んだと伝えられています。興味のある方はこちらも是非。
参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?
まとめ
今回はピクサーが継続して素晴らしい作品を生み出す方法について綴ったピクサー流 創造するちからを取り上げました。 次回はSBC#12で発表された世界の技術を支配する ベル研究所の興亡をご紹介します。
Sendee Book Club #11:その他の発表図書、関連図書
Sendee Book Club参加者募集
Sendee Book Clubは皆様のご参加をお待ちしております。
自分では気付けなかった良本に出会いたい方
読書のアウトプットの場がほしい方
他者の要約を通して効率的に書籍の情報をインプットしたい方
上記に該当する方は是非とも一度足を運んでみてください。
参加申込みはコンパスから行ってください。
Sendee採用情報
株式会社Sendeeでは、知的好奇心が旺盛な人を探しています。 弊社に興味がある方は以下のページからご応募ください。
SBC#10 【人類史上 最も力なき権力者】~ 権力の終焉
課題図書
今回は2016年11月19日に開催されたSendee Book Club #10の図書の中から 権力の終焉をご紹介致します。
力なき権力者。この矛盾をはらんだ言葉は誰に向けられた言葉なのでしょうか? その答は、この時代の全ての為政者です。
書棚の歴史書を開かずとも分かる通り、かつて権力者とは絶大な力を有するものでした。アレクサンダー大王に始まり、近年のスターリン、毛沢東に至るまで、歴史上の権力者と呼ばれる人たちは凄まじい権力を誇ってました。 それこそ、そのときの気分で権力下にある者の生死を左右できる程の。
しかし現代に生きる権力者の権力は、歴史上の彼らのそれと比較すると著しく頼りないものです。それはなぜなのでしょうか?
要旨
近年、支配的な地位にある者が行使できる権力は衰退している。それはマイクロパワーの台頭による。ここで言うマイクロパワーとは、支配者に成り変わる力は持たないが、支配されることも無い者たちの総称である。
マイクロパワーの台頭を促したのは3つのMの革命である。1つはmore革命、1つはmobility革命、最後の1つはmentality革命である。近年世界は以前より豊かになり(more革命)、人々は世界のどこにでも容易に移動出来るようになった(mobility革命)。それにより、人々の意識に大きな変化が生じた(mentality革命)。多種多様な考えをもつようになっただけでなく、権力に隷属しなくても生きていけるようになったため、権力者は彼らを統治するのが難しくなったのである。
この権力の分散化のトレンドは今後も変わらない。今後世界はG0時代を迎えるだろう。即ちどの国にも支配されない世界がやってくる。歴史上初めて世界は相互に依存する、かつ重心が存在しない世界が到来するのだ。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。
権力は本当に弱まっているのだろうか。私は権力者になったことが無いため分からないが、この仮説には少々疑問を覚える。現在、権力に起こっている実証は「遷移」と「透明化」では無いかと思う。言わずもがな、現在権力は大国からグローバル企業に移っている、これが遷移である。かつ彼らは見えない所で人々を支配するに至っている(例えば個人情報の取得などによって)。これが透明化である。権力の変化の実態はこうなのではなかろうか。
本書の主張に異議を唱える意見ですね。確かに昨今のトランプ現象や、未開発国の独裁者の権勢を見ると、本書の主張に完全には同意できないですね。
マイクロパワーを率いる者としては本書の仮説は勉強になる。戦い方の参考として、本書内で語られているゲリラ組織、信仰宗教団体の戦略は研究してみたい所だ。
本書ではマイクロパワーの例としてゲリラ組織や宗教団体の例が取り上げられます。興味がある方は、是非本書を手にとってみてください。
参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?
まとめ
今回は権力の衰退について綴った権力の終焉を取り上げました。 次回はSBC#11で発表されたピクサー創造する力をご紹介します。
Sendee Book Club #10:その他の発表図書、関連図書
Sendee Book Club参加者募集
Sendee Book Clubは皆様のご参加をお待ちしております。
自分では気付けなかった良本に出会いたい方
読書のアウトプットの場がほしい方
他者の要約を通して効率的に書籍の情報をインプットしたい方
上記に該当する方は是非とも一度足を運んでみてください。
参加申込みはコンパスから行ってください。
Sendee採用情報
株式会社Sendeeでは、知的好奇心が旺盛な人を探しています。 弊社に興味がある方は以下のページからご応募ください。
SBC#9 【戦争が世界の物流を一変させた?】~ コンテナ物語
課題図書
今回は2016年11月12日に開催されたSendee Book Club #9の図書の中から コンテナ物語をご紹介致します。
あるモノの出現が世界の物流を大きく変えた。そのモノの名前は「コンテナ」。20世紀最大のイノベーションと言っても過言でもないこの箱はどのように生まれ、どのように世界を変えていったのか。
その足跡を辿ってみましょう。
~~~
要旨
アメリカの陸送業者であったマルコム・マクリーンは、コスト削減のためにトラックの「箱」だけを分離して船に載せるアイデアを思いついた。これがコンテナ誕生の瞬間であった。
コンテナの出現が国際貿易のコストを従来の1/50にした。輸送費が主要なコストではなくなった結果、製造業ではどこで作るかを考える際に輸送コストを考える必要がなくなった。結果現地の労働力単価などが主要な指標となり今の国際分業体制が確立された。
しかしながらコンテナの導入は当初は既得権益の抵抗により進まなかった。これを打破するきっかけとなったのはベトナム戦争であった。戦場の兵士に安全に物資を届けるにはコンテナの利用が不可欠であったため軍がその導入を後押ししたのだ。それが契機となり、コンテナの利用は民間にも広がった。
コンテナの導入は港の覇権も大きく変化させた。コンテナ導入前に世界有数の港だったニューヨークやサンフランシスコは、コンテナへの対応に遅れ、コンテナ後の世界にあっては存在感を失った。一方コンテナへの対応を行ったシンガポール、上海、釜山などの諸都市は、世界有数の港にのし上がった。技術の変遷に目をつけ半歩先の対応をとることが栄枯盛衰の世を生き残る手段だと言うことをコンテナは語っているのだ。
参加者の見解
本書に対し参加者からは次のような意見が出されました。
コンテナ輸送の確立、普及はマルコム・マクリーンという経営者の頑張りに拠る。彼が手段を選ばず実現を目指したことがコンテナ輸送の実現につながった。技術は、たとえそれが革新的であったとしても、その魅力だけで世界に普及するわけではない。それを普及させようとうする個人の不断の努力によってこそなされるのだ。
イノベーションというものは革新的なアイデアだけで為せると誤解されがちですが、その実現の裏には政治力・忍耐といった極めて泥臭く人間くさいものが求められます。コンテナの物語もそれを裏付けているようです。
壊れやすく盗難に会いやすい電子製品にとってコンテナ輸送は最適であり、コンテナの普及が日本の電子製品の輸出を後押しし、その結果北米、欧州市場を制覇するに至ったという論説は目からウロコであった。経済における勝敗はこのような多種の要因により導かれる。
経済に関わらず勝負の成否は得てして思いがけない要因に左右されるものです。言ってみれば運に委ねられていると言ってもいいでしょう。
抽象化、規格化はコスト削減の有用手段でありビジネスの大きなチャンスである。これらが生じてる分野が他にないか探してみたい。そこにビジネスの種は眠っているはずだ。
抽象化、規格化が起きる世界ではオーダーが一桁以上変わりえます。事業家の方ははこの視点から市場を探すと効果的かもしれません。
参加者から上がった意見は以上です。皆さんはどのような意見を持たれましたか?
まとめ
今回はコンテナの歴史について綴ったコンテナ物語を取り上げました。 次回はSBC#10で発表された権力の終焉をご紹介します。
Sendee Book Club #9:その他の発表図書、関連図書
Sendee Book Club参加者募集
Sendee Book Clubは皆様のご参加をお待ちしております。
自分では気付けなかった良本に出会いたい方
読書のアウトプットの場がほしい方
他者の要約を通して効率的に書籍の情報をインプットしたい方
上記に該当する方は是非とも一度足を運んでみてください。
参加申込みはコンパスから行ってください。
Sendee採用情報
株式会社Sendeeでは、知的好奇心が旺盛な人を探しています。 弊社に興味がある方は以下のページからご応募ください。
#8 【本当に適切な豊かさの指標?】~ GDP<小さくて大きな数字の歴史>
課題図書
今回は2016年11月5日に開催されたSendee Book Club #8の図書の中から GDP<小さくて大きな数字の歴史>をご紹介致します。
- 作者: ダイアン・コイル,高橋璃子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2015/08/26
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (4件) を見る
GDPは経済規模の指標として最もよく使われている指標ですが、この数字は何を測ったものなのでしょうか? そしてこの数字にはどういう意味があるのでしょうか? 大きければ大きいほど良いのでしょうか?
数式なしに経済学でよく使われるGDPの歴史を紐解いていきます。では要旨を見ていきましょう。
要旨
GDPはWW2時の戦争調達費用の統計資料として開発された。GDPは、WW2後の大量生産社会においては、経済規模を測る指標として大変有効に機能した。
しかし、GDPは現在の経済を測る指標としては3つの課題を抱えている。
- イノーベーションの価値を算出できない
- 質を計算できないため、サービスや無形資産の算出が困難。
- 持続可能性を測れない。
現在GDPに変わる指標も提唱されているが、それらは未だGDPを代替するに至っていない。ゆえに今後も当分は、我々はGDPを使いつづける他ない。しかしそれが我々の経済の豊かさを完全に繁栄する指標でないことは重々承知しておくべきだ
参加者の見解
参加者からは次のような意見が出されました。
統計資料の結果とは、計算方法でどうにでもなる。一方GDPの計算方法は多くの国では開示されていない。日本然り、中国然り。すなわち恣意的に修正しようと思えば出来るということ。常にその心配があることを理解すべき。
サブプライムショックなどの大きな金融危機が発生すればGDPの数%が失われることになります。しかし、私達の生活が直接貧しくなるということはないでしょう。計算によって算出された数値はあくまで参考値であって、本当の豊かさはGDPのみでは測れないのかもしれません。
経済が複雑さを。その国の実態を知りたければ、数字を見るでなく、実際に足を運んで目耳肌で感じるべき。
その国の経済環境を知るには統計的データに加えて実地調査が欠かせません。例えば中国の不動産バブルも実際にマンションに足を運んで見ればわかることです。机上の数値に惑わされることなく一次情報で判断することがビジネスでは必要不可欠です。
まとめ
今回はGDPという指標の歴史について論じたGDP<小さくて大きな数字の歴史>を取り上げました。 次回はSBC#9で発表されたコンテナ物語をご紹介します。
Sendee Book Club #8:その他の発表図書、関連図書
- 作者: 武野秀樹
- 出版社/メーカー: 中央経済社
- 発売日: 2004/03
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 1,124回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
Sendee Book Club参加者募集
Sendee Book Clubは皆様のご参加をお待ちしております。
自分では気付けなかった良本に出会いたい方
読書のアウトプットの場がほしい方
他者の要約を通して効率的に書籍の情報をインプットしたい方
上記に該当する方は是非とも一度足を運んでみてください。
参加申込みはコンパスから行ってください。
Sendee採用情報
株式会社Sendeeでは、知的好奇心が旺盛な人を探しています。 弊社に興味がある方は以下のページからご応募ください。
#7【サピエンス×虚構=支配】~ サピエンス全史
課題図書
今回は2016年10月29日に開催されたSendee Book Club #7の図書の中から サピエンス全史をご紹介致します。
- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/09/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (22件) を見る
- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/09/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (12件) を見る
2016年で一番の傑作を決めろと言われれば、多くの方が間違いなくこの書籍を挙げるでしょう。
本書の著者はユヴァル・ノア・ハラリ教授。歴史、特に軍事史の専門家であるヘブライ大学の教授です。
本書で彼は、アフリカの隅に佇む力なきものであった我々ホモ・サピエンスが、なぜ地球を支配するに至ったかを、大胆な仮説を用いて解き明かします。
そのキーワードとなるのは「虚構」。
この虚構によって、我々ホモ・サピエンスは何を手に入れたのでしょうか?
そして我々ホモ・サピエンスはどこに向かおうとしているのでしょうか?
要旨を見ていきましょう。
要旨
人間(ホモ・サピエンス、以降サピエンス)は、三つの革命によって現在の繁栄を手に入れた。第一の革命は認知革命である。これによりサピエンスは、集団で共有可能な、国家、宗教、貨幣のような、虚構を作れるようになった。
認知革命でサピエンスが発展できた理由、それは多数の(150人以上)の見知らぬ者同士が、協力しあえる集団を作れたからである。サピエンス以外の生物は、150個体以上の集団を作れない、なぜなら、サピエンス以外の生物は虚構を共有できないため、顔を合わせる個体としか協力出来ないからである。
※顔を合わせられる集団の数は150程度が限界。これをダンバー数と言う続いて、第二の革命である農業革命によって、サピエンスは定住する術を手に入れた。またサピエンスは、食料を定期的に得る術も手に入れたため、食料採集以外に扱える自由な時間も手に入れた。この農業革命と、先程述べた認知革命によって、サピエンスは国家、宗教、貨幣という虚構を作りあげていった。これがサピエンスの進化を更に加速させることとなった。
およそ500年前、サピエンスは第三の革命である科学革命を起こした。これを可能にしたのは2つの要因、無知の知、そして政治と経済という虚構である。無知の知によって、サピエンスは全能の神と言う虚構から解き放たれ、真理を自身の手で追い求めるようになった。また政治と経済という虚構は、将来には富が増えるという期待をエンジンにして、科学への投資を助長し続けた。これによりサピエンスは科学革命を実現した。結果、サピエンスは今我々が目にする繁栄を手にする。
サピエンスの進化、それは得てして他の種の絶命を招いた。サピエンスは他の全てのホモ属をの息を止めた張本人であり、またそれ以上の生物種を絶滅に追いやってきた。サピエンスの進化は、地球という物語から見れば悲劇なのである。
3つの革命によって、サピエンスは他の生物とは一線を画する繁栄を手に入れた。そしてサピエンスは今、生物の束縛から逸脱した進化を遂げようとしている。それは、AI、ゲノム編集、ロボットなどの力によるものだ。これにより、サピエンスはあらたなホモ属を生み出す可能性がある。そのとき、サピエンスは種の孤独から解放されるのだ。
参加者の見解
本書籍の内容に対して参加者からはどのような意見が出たのでしょうか?順に見ていきましょう。
認知革命の仮説が正しいとして、ではなぜサピエンスだけが認知革命を達成できたのか?なぜ他の種では起きなかったのか?認知革命が起きた要因は想像力の獲得にあり、それにはサピエンス特有の脳の進化が関係していると考えられる。しかし、だとすれば何故サピエンスだけそのような進化を経たのか?その進化の要因と、脳の進化の内実(想像力とはすなわちどんな物理現象なのか)を詳しく掘り下げたいところだ。
興味深い意見ですね。他にはこんな意見も。
サピエンスの力は集団で行動できることにある。ならば我々がすべきことは、集団が行動できる虚構をいかに作るか、または集団の一員として何を為すかであろう。時代遅れの(数万年単位の)個人プレーに拘泥するのは愚かという他無い。
確かにサピエンスの最大の能力である「虚構の共有」を活かさない手は無いですね。そう考えると、歴史に名を残す偉人には虚構を上手く扱えた方が多いのがわかります。ナポレオン、田中角栄、スティーブ・ジョブズなど。
本書で書かれている、「火の使用が消化に使うエネルギーを減少させ、それによってサピエンスは余ったエネルギーを脳に使えるようになった。それがサピエンスの脳の進化を促した」という仮説は大変興味深い。これにとどまらず、サピエンスの身体は何故こうなったのかについて、更に知見を積み重ねたい。例えば親指の進化や、尻尾の消失など。
我々サピエンスの身体が何故こうなっているかは、飽きることのない考察テーマですね。なぜ二足歩行なのか、なぜ体毛が薄くなったのかなども、時間をとって考察してみたいテーマです。
参加者から上がった意見は以上です。皆さんは本書を呼んでどんな感想を持たれたでしょうか?
まとめ
今回は、ホモ・サピエンスが地球を支配するに至った過程を描き出した、サピエンス全史を取り上げました。
次回はSBC#8で発表されたGDP〈小さくて大きな数字〉の歴史をご紹介します。
Sendee Book Club#7:その他の発表図書、関連図書
- 作者: クリストフ・コッホ,土谷尚嗣,小畑史哉
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2014/08/07
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (8件) を見る
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/02/02
- メディア: 文庫
- 購入: 27人 クリック: 421回
- この商品を含むブログ (189件) を見る
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,倉骨彰
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2012/02/02
- メディア: 文庫
- 購入: 24人 クリック: 73回
- この商品を含むブログ (106件) を見る
Sendee Book Club参加者募集
Sendee Book Clubは皆様のご参加をお待ちしております。
自分では気付けなかった良本に出会いたい方
読書のアウトプットの場がほしい方
他者の要約を通して効率的に書籍の情報をインプットしたい方
上記に該当する方は是非とも一度足を運んでみてください。
参加申込みはコンパスから行ってください。
Sendee採用情報
株式会社Sendeeでは、知的好奇心が旺盛な人を探しています。 弊社に興味がある方は以下のページからご応募ください。
#6【資源の呪い】~ 喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日
課題図書
今回は2016年10月22日に開催されたSendee Book Club #6で取り上げた図書から 喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日をご紹介致します。
喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日
- 作者: トム・バージェス,山田美明
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/07/26
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
本書はフィナンシャル・タイムズの調査報道特派員であるトム・バージェス氏が2006年からアフリカに滞在しを取材した際の知見をまとめた書籍です。
最後のフロンティアと呼ばれるアフリカ。一見限りない可能性があるように思われるこの地で彼が見たものは、終わりの見えない貧困の螺旋と、資源がかけた呪いでした。
早速要旨を見ていきましょう。
要旨
・アフリカでは天然資源の富を、一部の権力者が独占している。そのシステムの構築に、中国のクイーンズウェイグループを率いる徐京華氏が手を貸している。そのシステムは以下のようなものである。
- アフリカの天然資源国の支配階級と合弁会社(実態はペーパーカンパニー)を作る
- 合弁会社が中国の国有銀行から融資を受け、天然資源国のインフラ建設にその資金を充てる。
- 合弁会社は天然資源国が中国に売却する石油等で得た利益で、中国の国有銀行に借金の返済をする
- 結果、融資と返済を仲介するだけで合弁会社は利益を上げる。この利益がアフリカの支配階級とクイーンズウェイグループに還元される。
・資源産業は国内に富を還流させない。その理由は次による
- 天然資源の収入は、税金とは違い国民の同意を必要としない。それゆえ、統治者は国民との間に社会契約を結ぶ必要がない。結果、国民を無視した政治運営がなされる。
- 天然資源産業は雇用を産まない。それゆえ国民に雇用を提供できない。結果、国民にお金が回らない。
・植民地から独立した今でも、アフリカは何も変わっていない。天然資源の略奪システムの受領者が変わるだけで、大多数の国民には富が回らないでいる。アフリカを資源の呪いから解き放つ術は、未だ見いだせていないのが実情だ。
いかがでしょうか?未だアフリカは変わっておらず、資源は時として国を不幸にすることが強く印象付けられる内容でしたね。
補足
・オランダ病:資源が売れることでドルが流入する。それにより自国通貨が高くなり、輸出競争力が下がる。結果、製造業が衰退し、そこで働いていた人たちは失業するという現象。資源の呪いとほぼ同義。
参加者の見解
本書籍の内容に対して参加者からはどのような意見が出たのでしょうか?順に見ていきましょう。
資源産業は国内に雇用を産まない。これが国民の所得の底上げを阻害する。それを思うと資源が無かった日本は幸せだったと言える。
確かに持たざるものとして戦えられた日本は幸せだったのかもしれません。
他にはこんな意見も。
世界で戦うには清濁を併せのむ必要がある。綺麗事だけやってはいられないことを肝に銘じる必要がある。
確かに限りある資源を求めて争う以上、綺麗事だけでは行きていけない場面は出てくるでしょう。
参加者から上がった意見は以上です。皆さんは本書を呼んでどんな感想を持たれたでしょうか?
まとめ
今回はアフリカに地で暗躍する中国の姿について取り上げました。 次回はSBC#7で発表されたサピエンス全史をご紹介します。
Sendee Book Club#6:その他の発表図書、関連図書
- 作者: 伊東光晴
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2016/03/19
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (5件) を見る
- 作者: ヘンリー・キッシンジャー,伏見威蕃
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/06/25
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
Sendee Book Club参加者募集
Sendee Book Clubは皆様のご参加をお待ちしております。
自分では気付けなかった良本に出会いたい方
読書のアウトプットの場がほしい方
他者の要約を通して効率的に書籍の情報をインプットしたい方
上記に該当する方は是非とも一度足を運んでみてください。
参加申込みはコンパスから行ってください。
Sendee採用情報
株式会社Sendeeでは、知的好奇心が旺盛な人を探しています。 弊社に興味がある方は以下のページからご応募ください。